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T1リーグ解散の真相|台湾バスケ界の再編とTPBL誕生の背景

T1リーグとは

T1リーグ(T1 League)は2021年に創設された台湾の男子プロバスケットボールリーグで、台湾バスケの新たな時代を切り拓く存在として注目を集めた。P. League+(PLG)と並び、国内トップクラスの選手が集うリーグとして3シーズンにわたって開催されたが、2024年夏に事実上の解散を迎えた。

創設から解散までの経緯

  • 2021年5月:T1リーグ設立。初年度は6チームでスタート。
  • 2023-24シーズン:リーグ3年目に突入するも、チーム数・財務面での課題が表面化。
  • 2024年7月9日:新たなプロリーグ「TPBL(Taiwan Professional Basketball League)」発足。T1加盟チームの多くが移行し、T1は実質的に活動停止。

解散の主な理由

① 財務・運営基盤の脆弱化

T1リーグは創設からわずか3年で財務的困難に直面した。加盟クラブの中には運営資金を確保できず、リーグ基準を満たせないチームも出てきた。2023年9月には「台中サンズ(Taichung Suns)」が財務基準未達を理由に除名処分を受け、以後リーグの存続自体が不安視されていた。

② 不祥事・ガバナンス問題

2023年から2024年にかけて、選手による賭博関与事件が発生。台南TSGゴーストホークス(Tainan TSG GhostHawks)の選手が試合関連の賭博行為を認め退団するなど、リーグの信頼性を揺るがす出来事となった。リーグ全体としてもガバナンス体制の甘さが批判され、スポンサー離れを招いた。

③ 台湾バスケ界の再編・統合

当時、台湾にはP. League+(PLG)、T1 League、Super Basketball League(SBL)と複数リーグが並立しており、観客・選手・スポンサーが分散していた。統一リーグ創設への動きが進む中で、T1加盟チームの多くが新リーグTPBLに移籍。これによりT1は自然消滅的に吸収再編された。

加盟チームのその後

T1に参加していた主要クラブの多くは、新リーグTPBLへ移行した。

  • 台北タイシン・マーズ(Taipei Taishin Mars) → TPBLへ加盟
  • 高雄アクアス(Kaohsiung Aquas) → TPBLへ加盟
  • 新北CTBC DEA → TPBLへ加盟
  • 桃園ビア・レオパーズ(Taoyuan Leopards) → TPBLへ加盟

一部チームは活動休止または再編中だが、リーグ全体としてはTPBLへの移行によって「国内統一リーグ化」へと舵が切られた形だ。

TPBL誕生とその意義

TPBLは2024年7月に設立され、台湾初の完全プロフェッショナルリーグを標榜している。7チーム体制でスタートし、ドラフト制度、外国籍選手枠、放映権収益分配など、近代的なプロスポーツ運営を取り入れた。T1からの移行組が多数を占めるため、実質的には「T1の後継リーグ」として機能している。

リーグ統合の背景にある課題

  • 観客動員・スポンサー収入の限界(市場規模が小さい)
  • クラブ間の資金格差と選手流動性の不足
  • リーグ運営会社間の競争によるブランド混乱

こうした問題を解消するため、台湾では「リーグ再編」「共通基準の導入」「放映権の一本化」などが議論され、TPBLがその実験台として期待されている。

まとめ

T1リーグの解散は、単なる経営失敗ではなく、台湾バスケットボール界が「分裂」から「統合」へと向かう過程における必然的なステップでもあった。新リーグTPBLの誕生は、その教訓を踏まえた再出発を意味している。今後はPLGとTPBLという二大リーグ体制のもとで、台湾バスケがどのように成長し、国際的競争力を高めていくかが注目される。

Bリーグ初のドラフト制度とは?|2026年から始まる新たな選手獲得システムを徹底解説

なぜドラフト制度を導入するのか

Bリーグが2026年から導入を予定しているドラフト制度は、クラブ間の戦力不均衡を是正し、リーグ全体の盛り上げと若手育成の土台を強化する目的がある。強豪クラブに有望選手が偏る傾向を抑え、どのクラブにも優秀な選手獲得のチャンスを与えることで「どのチームにも優勝の可能性がある」リーグを目指している。

制度の概要(対象選手・方式・スケジュール)

対象選手

対象は高校3年生から大学4年生、プロ2年目までの日本人選手(見做し日本人を含む)。海外大学(NCAAなど)在学中の日本人選手も制度上の対象に含まれる。既にプロ契約済みの選手は対象外となる場合もある。

指名方式と順位

指名方式は「ウェーバー方式(前シーズン下位クラブが先に指名)」を基本とし、初年度は抽選形式、2年目以降は成績に応じた順位配分制に移行する予定。

スケジュール

志望届受付は9〜12月、ユース優先交渉期間は12月1日まで。第1回ドラフト会議は2026年1月29日(木)、TOKYO DOME CITY HALLで開催予定。

クラブ・選手への影響と課題

選手への影響

プロ入りのロードマップが明確になり、若手が将来を見据えて準備しやすくなる。海外大学在籍者も含まれるため、グローバルなキャリア選択肢が広がる。

クラブへの影響

戦力均衡化が進むことでリーグ全体の競争力が上がり、観客やスポンサーの関心も高まる。また、ユース部門の整備がより重要視される。

課題

指名先が希望と異なる可能性、大学バスケやNCAAとの兼ね合い、契約条件やサポート体制の整備などが懸念点として挙げられる。

今後の展望と注目ポイント

  • 初回ドラフトが制度の信頼性を左右する。
  • ユース優先交渉権の活用がクラブの差別化戦略となる。
  • 大学・高校・海外の育成パスがドラフトを前提とした構造に変化。
  • 戦力均衡によってより多くのチームが優勝争いに絡む可能性。

まとめ

Bリーグのドラフト制度は、日本のプロバスケットボール界における新たな一歩である。若手選手の登竜門として明確な仕組みを設けることで、選手・クラブ・リーグ全体が恩恵を受ける。ただし初期運用では課題も多く、今後の改善と適応が鍵となる。

2026年1月29日、誰がどのクラブに指名されるのか――その瞬間、日本バスケの未来が動き出す。

【Bリーグ/湘南ユナイテッドBC】B3参入からの成長と地域密着型クラブの全貌

湘南からB3へ、志高きクラブの誕生


湘南ユナイテッドBCは、2020年に神奈川県藤沢市、茅ヶ崎市、寒川町を拠点に誕生したプロバスケットボールチームだ。地域密着型クラブとして発足し、2022-23シーズンからB3リーグに正式参入。地元企業や自治体と密接に連携しながら、バスケットボールを通じた地域活性化を掲げて活動している。

運営を担うのは株式会社湘南ユナイテッド藤沢。藤沢商工会議所メンバーと地元クラブチーム「湘南STATE」が母体となり、クラブ運営に乗り出した。創設からわずか2年でB3入りを果たすスピード感は、他の新興クラブと比較しても特筆すべき点だ。

本拠地とアリーナ:神奈川全体をホームとする多拠点戦略


ホームアリーナは藤沢市の秋葉台文化体育館を中心としつつ、秩父宮記念体育館(藤沢市)、茅ヶ崎市総合体育館、シンコースポーツ寒川アリーナ、平塚・海老名・綾瀬・厚木・大和の各市体育館でも試合を開催。2024-25シーズンは26試合のホーム戦を6つの異なる会場で実施予定で、広範囲な地域展開を実現している。

このマルチアリーナ戦略は、県内のファン層拡大を意識したものであり、特に「湘南エリア」を越えて「神奈川全域のクラブ」としての認知を高める布石となっている。

成績の軌跡:参入当初から成長続けるクラブ

湘南ユナイテッドBCは、参入初年度の2022-23シーズンでは15勝37敗と苦戦し、勝率.288でリーグ13位に終わった。しかし翌シーズンの2023-24では27勝25敗(勝率.519)まで成績を改善し、2024-25シーズンも勝率こそ.442に下がったが、リーグ11位と着実にステップアップを続けている。

特筆すべきは、チームの「ホーム戦」における安定感である。2024-25シーズンではアウェイ成績が9勝17敗に対し、ホームでは14勝12敗と勝ち越しており、地元ファンの声援が確かな支えになっていることがわかる。

組織体制と人物像:堀田HC体制の継続と変化


ヘッドコーチは創設当初から堀田剛司が務めており、B3参入から一貫したリーダーシップを発揮。2023-24シーズンには球団代表やGMが交代するも、現場のコーチング体制は継続され、チームの方向性にブレはなかった。

アシスタントコーチには鈴木友貴、分析担当として蔵楽建斗(アナライジングコーチ)がサポートに入り、戦術・データ両面での強化が図られている。

選手構成:経験豊富な外国籍選手と若手の融合

2024-25シーズンのロスターには、元B1・B2経験者を含む実力派が並ぶ。注目の外国籍選手としては、マイケル・ヒューズ(2.03m/デュケイン大出身)、ジャスティン・キーナン(36歳/フェリス州立大)などが在籍し、インサイドの支柱となっている。

さらに、キャプテンを務める内田旦人(東海大出身)や、地元出身のPG佐々木拓哉など、日本人選手の顔ぶれも充実。U22世代やアジア特別枠選手(ジョン・ヒヒョン)など多様性ある構成も、B3クラブとしては先進的な編成だ。

スポンサーとユニフォーム戦略:地域との結びつき強化

2024-25シーズンのユニフォームスポンサーは、前面中央に木下グループ、背面には日産工機・元旦ビューティ工業、パンツ部分に藤沢市・茅ヶ崎市・寒川町のロゴを配している。

また、ユニフォームサプライヤーはスポルディングが担当。地元企業・自治体とクラブとの密接な関係性が視覚的にも強調されており、バスケットボールを「まちづくり」に活かすビジョンが表れている。

クラブとしての未来:B2昇格と地域戦略の行方

現在B3に所属する湘南ユナイテッドBCだが、今後の展望としてはB2昇格が大きな目標である。2023-24シーズンに勝率5割を突破したことは、その土台づくりが着実に進んでいる証拠でもある。

Bリーグ全体でも、「地域密着型クラブによる持続可能な運営モデル」が重視される中、湘南ユナイテッドのような事例は非常に注目される存在だ。特に、湘南というブランドイメージと融合させた「Local Pride」の継続は、地域に愛されるクラブづくりに不可欠な要素となるだろう。

ファンとメディアの反応:ポジティブな評価と期待

湘南ユナイテッドBCに対するファンの声は「若手が多くて成長が楽しみ」「アリーナでの演出がB3とは思えない」など、好意的な意見が目立つ。特に、Bリーグで話題となる“熱狂的ホームゲーム演出”は湘南でも実践されており、イベント要素も充実している。

また、公式SNSやYouTubeでの発信力も強く、X(旧Twitter)やInstagramではローカルファンとの双方向コミュニケーションが活発。これもクラブの成長戦略において欠かせない要素となっている。

GL3x3との親和性:地域とバスケの融合による可能性

湘南ユナイテッドBCの「地域密着×若手育成×バスケ普及」というコンセプトは、GL3x3が掲げる価値観とも通じる。今後、湘南ユナイテッド出身選手が3×3にも参戦する可能性もあり、ストリートとプロ、地域と全国をつなぐ架け橋となる存在が期待される。

湘南という“海とカルチャー”の街を背負ったクラブが、Bリーグのみならず3×3シーンでも存在感を発揮する日が来るかもしれない。

まとめ:湘南ユナイテッドBCが描く未来のバスケ像

湘南ユナイテッドBCは、ただの新興クラブではない。湘南という地域の情熱と文化、そして未来への挑戦を背負った、真の「ユナイテッド=結束」クラブである。

これからのB3リーグ、そして日本のバスケットボール界において、同クラブが果たす役割はますます大きくなるだろう。

未来へつなぐ湘南Local Pride――その合言葉とともに、次なるステージを目指す湘南ユナイテッドBCに注目が集まる。

【Bリーグ/富山グラウジーズ】歴史と挑戦|B2降格からの復活劇と未来への展望

富山グラウジーズとは何者か?地域に根ざすクラブの軌跡

富山グラウジーズは、北陸地方・富山県富山市を本拠地とするプロバスケットボールクラブであり、B.LEAGUE(Bリーグ)に属する日本有数の伝統的チームの一つです。2005年の創設以来、bjリーグ時代から着実に歩みを続け、北陸3県で初めてのプロスポーツクラブとして注目を集めてきました。その名は、県鳥である「ライチョウ(grouse)」に由来しており、地域密着と自然との調和を象徴する存在でもあります。

運営法人は株式会社富山グラウジーズであり、本社は富山市金泉寺に位置。ホームアリーナは「富山市総合体育館」で、最大4,650人の観客を収容可能です。

bjリーグ時代の苦難と躍進(2006〜2016)

富山グラウジーズは、bjリーグ参戦初年度から困難の連続でした。経営母体の撤退、連敗続き、主力スポンサーの降板など、幾度となく経営・戦績ともに危機的状況に陥りました。しかし、選手たち自らがスポンサー活動に取り組むなど、地元とともに苦境を乗り越えていきました。

2013-14シーズンには東地区1位を記録し、ファイナルズ3位という成績を収め、悲願のプレーオフ進出を果たしました。さらに、2015-16シーズンにはbjリーグ準優勝を成し遂げ、B.LEAGUE創設元年への参加を決定づけました。

Bリーグ参入後の戦績と浮き沈み(2016〜2024)

Bリーグにおいても、富山グラウジーズの挑戦は続きます。初年度の2016-17シーズンは残留プレーオフに回るなど、再び厳しい戦いを強いられましたが、宇都直輝やジュリアン・マブンガらを中心とした改革により、2020-21シーズンにはチャンピオンシップ進出を達成。リーグ平均得点で1位(89.2点)を記録し、攻撃型バスケの象徴として名を馳せました。

しかし、翌シーズン以降は主力の退団や外国籍選手の不祥事、長期離脱、そしてチーム成績の低迷が続き、2023-24シーズンには32連敗というリーグワースト記録を更新。最終的にはB1最下位に沈み、クラブ史上初のB2降格となりました。

2024-25:B2優勝とB1昇格の奇跡

しかし、グラウジーズはそこからわずか1シーズンで復活を果たします。新たなヘッドコーチとして前滋賀HCのダビー・ゴメスを迎え、ロスターも大幅刷新。元代表経験を持つトーマス・ケネディ、経験豊富なミッチェル・ワット、若きエース藤永佳昭らが攻守にわたって活躍。

結果、38勝22敗という安定した戦績を残し、B2東地区2位、全体3位という成績でB2優勝を成し遂げ、2025-26シーズンからのB1復帰を決定させました。

注目のキープレイヤーたち

  • 宇都直輝:専修大出身。B1通算300試合出場を達成した司令塔。
  • 水戸健史:クラブの象徴的存在であり、長年にわたり富山の得点源として活躍。
  • 藤永佳昭:東海大学出身のPG。高い視野とディフェンス力で頭角を現す。
  • トーマス・ケネディ:帰化選手として攻守に万能なパフォーマンスを見せる。
  • ユージーン・フェルプス:インサイドでのフィジカルと得点力が武器。

3×3への接続点と将来の展望

近年では、富山グラウジーズも3×3バスケットボールとの親和性を高めています。スピードとフィジカルを重視したスタイルは3×3との相性も良く、若手選手を中心に3×3への参画や連携の可能性も広がっています。

将来的には、地域ユースチームとの連携強化、アリーナのスマート化、ブランディング戦略の刷新によって、Bリーグのプレミアステージ入りも視野に入れています。

ユース育成と地域連携の強化

富山グラウジーズは、トップチームの活動にとどまらず、ユース育成にも積極的です。U-12、U-15、U-18といった下部組織が整備され、地元小中高生への指導やバスケットボール教室を定期的に開催しています。これにより、地域の子どもたちにとって憧れの存在となり、地元愛とバスケット文化の醸成に大きく貢献しています。

また、グラウジーズが主催する「グラウジーズリーグ」では、小学生同士の交流試合も実施されており、未来のスター選手がこの場から羽ばたく日も近いかもしれません。

地域密着とメディアの反応

2024年の降格劇は、北日本新聞やバスケットカウントなど主要メディアにも大きく取り上げられ、ファンの間にも危機感が広がりました。しかし、B2優勝を決めた2025年春には、SNSで「#グラウジーズ復活」などのタグがトレンド入り。チーム公式YouTubeではマスコット「グラッキー」がMVP級の人気を誇るなど、PR戦略の成果も見え始めています。

まとめ:再起のチームが魅せる未来

富山グラウジーズは、単なる勝敗の記録を超えた、ドラマティックなクラブです。B1昇格という成果は、チーム、地域、そしてファンが一丸となって掴み取った「勝利の象徴」。今後も北陸から全国へ、そして世界へ。新たな物語が始まろうとしています。

次なる注目は、3×3への本格参戦とB.LEAGUE PREMIERへの道。グラウジーズの進化に、今後も目が離せません。