ジャリル・オカフォーとは|レバンガ北海道に加入した“元NBAドラフト3位”センター
ジャリル・オビカ・オカフォー(Jahlil Obika Okafor, 1995年12月15日生まれ)は、アメリカ・イリノイ州シカゴ出身のプロバスケットボール選手であり、ポジションはセンター。身長211cm、体重122kg、ウィングスパン228cmという規格外のサイズを誇るインサイドプレーヤーである。
国籍はアメリカ合衆国とナイジェリアの二重国籍で、NBAではフィラデルフィア・76ersなど複数チームを渡り歩き、2025-26シーズンからはB.LEAGUEのレバンガ北海道に背番号22として加入している。
2015年のNBAドラフトでは、1巡目全体3位で76ersに指名されたエリートビッグマンであり、1年目から平均17.5得点・7.0リバウンドを記録してNBAオールルーキーファーストチームに選出された実績を持つ。
その一方で、リーグ全体が「スモールラインナップ」「ストレッチビッグ」へとシフトしていく中で役割が変化し、NBA内での立ち位置に苦しんだ選手でもある。以降はペリカンズ、ピストンズ、さらには中国・スペイン・メキシコ・プエルトリコなど世界各国のクラブを転々とし、2025年にはインディアナ・マッドアンツ、インディアナ・ペイサーズと10日間契約を経て、Bリーグ挑戦へと踏み出した。
ここでは、オカフォーのルーツ、高校・大学・NBA・海外リーグでのキャリア、スタッツから見える特徴、そしてレバンガ北海道で期待される役割までを総合的に整理していく。
ルーツと若齢期|ナイジェリア系アメリカ人としてのバックグラウンド
オカフォーは、ナイジェリア出身の父と、アフリカ系アメリカ人と白人の血を引く母の間に生まれた。出生地はアーカンソー州フォートスミスであり、その後はアーカンソー州とオクラホマ州の州境に位置するオクラホマ州モフェットで母と共に育った。
9歳の頃、母が気管支炎から肺炎を併発して急逝し、その後はイリノイ州シカゴに住む父のもとで暮らすようになる。この幼少期の喪失体験と移住は、のちに彼が「強さ」や「責任感」を語る際にしばしば触れられる重要な背景となっている。
シカゴは全米でも屈指のバスケットボールタレントを輩出してきた都市であり、ストリートバスケットから高校バスケットまで、常に競争の激しい環境が存在する。オカフォーもまたこの都市文化の中で腕を磨き、サイズだけでなく、フィニッシュの柔らかさやフットワーク、ポストムーブの多彩さを身につけていった。
10代になる頃には全米レベルのビッグマンとして注目され、U16・U17・U19とアメリカ代表の年代別代表に選出。2012年のFIBA U17ワールドカップでは優勝に大きく貢献し、自身も大会MVPを受賞した。さらにFIBA U16ワールドカップ、FIBA U19ワールドカップでも金メダルを獲得しており、若くして「勝つことを知るセンター」として評価を高めていった。
高校〜デューク大学時代|全米ナンバーワンビッグマンへの道
高校最終学年のオカフォーは、パレード誌、USAトゥデイ、マクドナルド・オール・アメリカンなど、アメリカ高校バスケット界の主要アワードを総なめにし、2014年にはパレード誌オールアメリカン・ファーストチーム、イリノイ州ミスター・バスケットボールなどに選出された。
身長・体重だけでなく、ゴール下でのフィニッシュ力、ボールを持ってからの落ち着き、そしてポストからパスを捌ける視野の広さが高く評価され、「次世代の支配的センター候補」として位置づけられていた。
大学進学先としては、ベイラー大学、デューク大学、カンザス大学、ケンタッキー大学という強豪4校が候補となり、全米レベルでのリクルート合戦が展開された。最終的に彼が選んだのは、マイク・シャシェフスキーHC率いるデューク大学である。
2014-15シーズンのデュークで、オカフォーは1年目からチームの絶対的なインサイドオプションとなり、タイアス・ジョーンズ、ジャスティス・ウィンスロー、グレイソン・アレンらとともにNCAAトーナメント制覇を達成した。
このシーズンのオカフォーは、1試合平均17.3得点、8.5リバウンド、FG成功率66.4%という圧倒的な効率でゴール下を支配し、アトランティック・コースト・カンファレンス(ACC)の最優秀選手賞、ACC新人王、全米オールアメリカン・ファーストチームなど多数の賞を受賞。ウェイマン・ティスデイル賞(全米最優秀新人賞)も獲得しており、NBAドラフト上位指名は既定路線となっていった。
NBAドラフト3位指名と76ers時代|華々しいデビューと役割変化の始まり
2015年のNBAドラフトで、オカフォーはフィラデルフィア・76ersから1巡目全体3位指名を受ける。ウィングスパン228cmの長さと高い得点力を誇るビッグマンとして、フランチャイズの未来を担う存在として期待された。
サマーリーグではデビュー戦で20得点を挙げて存在感を示し、すぐに本契約を結ぶと、2015-16シーズン開幕戦となった10月28日のボストン・セルティックス戦でいきなり26得点・7リバウンド・2ブロックを記録。
ルーキーながら平均30.0分の出場で17.5得点、7.0リバウンド、FG成功率50.8%を残し、NBAオールルーキーファーストチームに選出されるなど、個人成績としては申し分ないスタートを切った。
しかし、チーム事情は複雑だった。76ersは長期的な再建期にあり、ドラフトを通じて複数のビッグマンを指名していた。ジョエル・エンビードの台頭やダリオ・サリッチの加入などにより、フロントコートのローテーションは飽和し、ディフェンスやストレッチ能力がより高い選手が求められるようになる。
2016-17シーズンのオカフォーは、出場時間が22.7分に減少し、平均11.8得点・4.8リバウンドと数字を落とした。2017年にはチームから2018-19シーズンの契約オプションを行使しないことを通達され、オカフォー側はバイアウトを求めるところまで関係が悪化した。
同年12月、トレードによりブルックリン・ネッツへ移籍するが、ネッツでもローテーション争いは激しく、2017-18シーズンのネッツでの出場は26試合、平均12.6分・6.4得点にとどまった。
「ポストを主戦場とする伝統的センター」と、スモールボール化・ペース&スペース化が進むNBAとのミスマッチが、彼のキャリアを難しくしていったと言える。
ペリカンズ、ピストンズでの再挑戦|限定された役割の中で見せた効率の高さ
2018年オフ、オカフォーはニューオーリンズ・ペリカンズと契約し、新天地で再起を図る。ここで彼に与えられたのは「ベンチから出場し、限られた時間で確実に得点とリバウンドを提供するインサイドスコアラー」という役割であった。
2018-19シーズンは59試合に出場して平均15.8分のプレータイムながら、8.2得点・4.7リバウンド、FG成功率58.6%を記録。翌2019-20シーズンも30試合出場で、平均8.1得点・4.2リバウンド、FG成功率62.3%と、高い効率を維持している。
ポストアップだけでなく、スクリーン後のロールやオフェンスリバウンドからのプットバックなど、少ないタッチで確実に得点を積み上げるスタイルへとシフトしていったことが、数字からも読み取れる。
2020年12月にはデトロイト・ピストンズと契約。2020-21シーズンは27試合に出場し、平均12.9分で5.4得点・2.4リバウンド、FG成功率61.8%をマークした。
一方で、NBA全体では5アウト気味のスペーシングを重視するオフェンスが主流となり、3ポイントシュートやスイッチディフェンスへの対応がセンターにも求められる時代になっていた。オカフォーもスリーポイントをわずかながら試投しているが(キャリア3P成功率22.2%)、本質的な武器とはなっておらず、ローテーション内での競争は年々厳しさを増していく。
2021年9月にはトレードで再びネッツへ移籍するも、数日後にウェイブされてしまい、NBAでの長期契約を得ることは叶わなかった。
国外リーグとGリーグでのキャリア|スペイン、中国、メキシコ、プエルトリコ、インディアナ
NBAでのポジションを失いつつあったオカフォーは、視野を世界へ広げる。中国CBA、メキシコ、スペイン、プエルトリコ、そしてGリーグと、多様なリーグでプレーすることで自身のキャリアを再構築していった。
2022年には中国の浙江ライオンズに所属し、その後メキシコのカピタネス・デ・シウダー・デ・メヒコ、スペインのバスケット・サラゴサ2002などでプレー。
2023年7月に加入したサラゴサでは、リーガACBのレギュラーシーズンで11試合に出場し、平均23.0分で11.7得点・5.1リバウンド・1.8アシストというオールラウンドなスタッツを残している。これは、出場時間が伸びれば依然として高い得点力とリバウンド力を発揮できることを示すデータと言える。
同年11月には再び中国リーグの浙江ライオンズからオファーを受ける形で移籍し、その後2024年にはプエルトリコのキャピタネス・デ・アレシボでもプレー。
2024-25シーズンはアメリカのGリーグ、インディアナ・マッドアンツに所属し、2025年にはインディアナ・ペイサーズとの10日間契約も経験した。NBAとGリーグ、中国・ヨーロッパ・中南米を股にかけるキャリアは、「元ドラフト3位」という肩書きを持ちながらも、バスケットボールへの情熱を失わずに居場所を探し続けるプロフェッショナリズムの表れとも言える。
そして2025年7月7日、彼は日本のB.LEAGUE・レバンガ北海道への加入を発表する。
211cm・122kgの元NBAビッグマンが、北の地でどのようなインパクトを残すのか――Bリーグファンにとっても大きな関心事となった。
代表歴|アメリカ年代別代表のエースからナイジェリア代表として東京五輪出場へ
オカフォーの国際舞台でのキャリアは、アメリカ合衆国の年代別代表から始まる。
FIBA U16ワールドカップ、U17ワールドカップ、U19ワールドカップで金メダルを獲得し、とりわけ2012年のU17世界選手権では大会MVPを受賞。インサイドの絶対的エースとして、世界トップレベルの同世代相手に支配的なプレーを見せた。
その後、シニアレベルではナイジェリア代表を選択し、2020年東京オリンピック(実際の開催は2021年)ではナイジェリア代表として出場している。
二重国籍を持つ選手がどの代表チームを選ぶかは、近年の国際バスケットボールにおける大きなテーマであり、オカフォーもその流れの中にいる一人である。アメリカで育ち、世界大会で金メダルを獲得してきた選手が、ルーツを持つナイジェリアの代表として五輪の舞台に立つ――この選択は、単なる競技的判断を超えた意味合いを持つ。
代表レベルの経験は、Bリーグにおいても大きな価値を持つ。
国際大会特有のフィジカルな戦い方や、ヨーロッパ系コーチの戦術、FIBAルールでのゲーム運びを熟知していることは、アジアでしのぎを削るクラブにとって大きな武器となる。
スタッツで見るジャリル・オカフォー|効率の高いポストスコアラー
数字の面からオカフォーを俯瞰すると、その特徴がより鮮明に浮かび上がってくる。
まずNBAレギュラーシーズン通算では、248試合出場(先発116試合)、平均19.5分のプレータイムで10.3得点・4.7リバウンド・0.9アシスト、FG成功率54.2%、3ポイント成功率22.2%、フリースロー成功率67.6%というスタッツを残している。
ルーキーイヤーの2015-16シーズンは、53試合出場(先発48試合)で平均30.0分、FG成功率50.8%、17.5得点・7.0リバウンド・1.2アシスト・1.2ブロック。
2年目は出場時間が22.7分に減ったものの、FG成功率51.4%、平均11.8得点と、持ち前の得点効率は維持していた。
ニューオーリンズ時代の2018-19シーズンには FG成功率58.6%、2019-20シーズンには62.3%と、限られた役割の中で非常に高いシュート効率を残している点も見逃せない。ペリカンズやピストンズでの起用法を踏まえると、
・ポストアップからの高確率なフィニッシュ
・ピック&ロール後のインサイドロール
・オフェンスリバウンド後のセカンドチャンスポイント
といった「制限されたタッチ数で確実に得点する」タイプのスコアラーとして成熟していったことがうかがえる。
大学時代に目を向けると、デューク大学での2014-15シーズンは32試合出場・全試合先発で、平均30.1分出場。FG成功率は驚異の66.4%、平均17.3得点・8.5リバウンド・1.3アシスト・1.4ブロックというオールラウンドな数字を記録している。
NCAAレベルでは、彼のポストプレーがいかに支配的だったかを示すスタッツと言えるだろう。
一方、3ポイントシュート試投はキャリアを通じて限定的であり、現代バスケットボールにおける「フロアストレッチ」という観点では強みとは言い難い。
そのため、Bリーグや国際バスケットボールにおいても、
・ハイポストからのハンドオフやドリブルハンドオフ(DHO)
・エルボー付近からのショートロール
・ショートレンジでのフェイスアップ
など、3ポイントラインの少し内側を起点とするプレーでどこまで対応していけるかが鍵となる。
レバンガ北海道で期待される役割|ゴール下の軸とチーム文化へのインパクト
レバンガ北海道にとって、211cmの元NBAドラフト3位センターの加入は、単なる戦力補強以上の意味を持つ。
チームはこれまで、サイズとフィジカルの部分でB1上位クラブに対して劣勢を強いられる場面も少なくなかった。オカフォーの存在は、
・ハーフコートオフェンスでの「確実なミスマッチの起点」
・リバウンドでの制空権確保
・ペイントエリアでの存在感による相手ディフェンスの収縮
を生み出し、外角シューターやスラッシャーのスペースを広げる効果が期待できる。
また、若手ビッグマンにとっては「教科書となるポストフットワーク」を間近で学べる貴重な機会でもある。ターンアラウンドフック、アップ&アンダー、ピボットを駆使したフィニッシュなど、オカフォーがNBAと世界各地で培ってきたスキルセットは、日本人ビッグマンの育成にも好影響を与えるだろう。
守備面では、ペリメーターディフェンスやスイッチ対応など課題も想定されるが、BリーグはNBAに比べてトランジションのスピードやフィジカルの質が異なるため、チーム全体でのカバレッジ設計次第で十分に補える余地がある。
ゾーンディフェンスやドロップカバレッジを組み合わせながら、オカフォーのリムプロテクトとリバウンド力を最大限に引き出すことが、レバンガ北海道の戦術的テーマの一つになるはずだ。
3×3バスケへの示唆|“ポストの技術”はフォーマットを超えて生きる
オカフォー自身は5人制バスケットボールの選手だが、そのプレースタイルは3×3バスケにおいても示唆に富んでいる。
3×3ではスペースが限られているため、ゴール下でのポジショニング、わずかなコンタクトを活かしたフィニッシュ技術、そしてオフェンスリバウンドへの執着心が、そのまま得点期待値の差となって表れる。これはオカフォーが得意としてきた領域と重なる部分が多い。
また、3×3はセットオフェンスの時間が短く、ポストアップもシンプルな形で行われるが、
・早いタイミングでのポジション確保
・ボールをもらう前のシール
・ディフェンスを背負いながらアウトサイドへパスをさばく判断力
といった要素は、オカフォーのキャリアを通じて磨かれてきたスキルセットそのものだ。
Bリーグで彼のプレーを観察することは、3×3プレーヤーにとってもインサイド技術やフィジカルコンタクトの使い方を学ぶ良い教材となるだろう。
人物像と評価|エメカ・オカフォーとの縁と“キャリアのアップダウン”を乗り越える力
オカフォーは、かつてシャーロット・ボブキャッツなどでプレーしたNBA選手エメカ・オカフォーの遠い親戚にあたる。
「Okafor」という名字自体がナイジェリアにルーツを持つものであり、二人の存在は、ナイジェリア系アメリカ人がNBAや世界のプロバスケットボールで重要な役割を担ってきたことを象徴する例の一つでもある。
キャリアの歩みを振り返ると、ドラフト3位指名からオールルーキーファーストチーム選出という華々しいスタートと、ローテーションから外れトレードやウェイブを繰り返す厳しい現実の両方を経験してきた選手だ。
その中で、アメリカ・ヨーロッパ・中国・中南米とさまざまなバスケット文化に身を置き、なおプレーヤーとして挑戦を続けている点は、単純な「成功/失敗」の物語では語り尽くせない味わいを持つ。
Bリーグにやってくるインポート選手の中には、「NBAの舞台を経たベテラン」としてチームの柱となるだけでなく、若手へのメンタリングやクラブのブランド力向上にも貢献するケースが多い。オカフォーもまた、レバンガ北海道というクラブの歴史に新たなページを加える存在になる可能性が高い。
まとめ|ジャリル・オカフォーとレバンガ北海道の物語を共有しよう
ジャリル・オカフォーは、
・デューク大学でNCAAチャンピオンを経験し、
・NBAドラフト1巡目全体3位で指名され、
・NBAでは通算248試合で平均10.3得点・4.7リバウンド、
・アメリカとナイジェリア双方の代表歴を持ち、東京五輪にも出場した、
世界的にも稀有なキャリアを歩んできたビッグマンである。
その彼が2025年、B.LEAGUEのレバンガ北海道に加入し、日本のファンにとって身近な存在となった。
北の大地で見せるポストプレー、リム周りでの柔らかなタッチ、リバウンドへの強さは、チームの勝敗だけでなく、リーグ全体のインサイドバスケットの質を押し上げる可能性を秘めている。
キャリアのアップダウンを経験しながらも、「まだ戦い続ける」ことを選んだジャリル・オカフォー。
その物語は、単なるスター選手の履歴書ではなく、「プロとして生き続けること」のリアルを映し出している。
この記事をきっかけに、ぜひオカフォーのプレーやレバンガ北海道の試合を周囲と共有し、彼の挑戦やチームの変化について、一緒に応援しながら語り合ってほしい。





