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【Bリーグ/佐賀バルーナーズ】SAGAアリーナ発の“施設先行型”モデルでB1に定着するまで:歴史・成績・ロスター・戦略を徹底解説

ニュース概要

佐賀バルーナーズは、佐賀県佐賀市を拠点とするB.LEAGUEのクラブで、2018年創設という新興勢力ながら、B3優勝(2019-20)、B2西地区優勝・B2制覇(2022-23)を経てB1へ昇格した。新アリーナ「SAGAアリーナ」をハブとする“施設先行型”の取り組みで地域スポーツと都市開発を接続し、B1初年度の2023-24は29勝31敗(西地区5位/全体15位)と昇格組として上々の成績を残した。2024-25は主力の長期離脱もあり22勝38敗(西7位)と踏みとどまるシーズンだったが、2025-26に向けては宮永雄太HC(GM兼務)の下、ロスターの再編とゲームモデルの再整備を進めている。本稿では、クラブの来歴から組織構造、ロスターの役割分担、ゲーム戦略、そしてSAGAアリーナがもたらす波及効果までを多角的にレビューする。

背景と経緯

佐賀バルーナーズの成長ストーリーは、日本のプロスポーツでも稀少な「アリーナ建設を前提としたクラブ創設」に象徴される。県都・佐賀市に整備されたSAGAサンライズパークの中核施設であるSAGAアリーナ(B1基準の5,000席超)は、クラブが構想段階から活用を見据えており、創設当初から“アリーナ→チーム強化→街の賑わい”という循環設計を志向。2018年のチーム結成後、B3準加盟・参入をクリアし、2019-20にB3で勝率.750の首位(リーグ途中中止の特殊事情下)を確保、理事会承認をもってB2へ昇格した。B2では序盤から競争力を発揮し、宮永体制2年目の2022-23に45勝15敗(勝率.750)で西地区1位—プレーオフも2連続スイープでB1昇格とB2優勝を同時達成。B1初年度の2023-24は29勝31敗、アウェー16勝14敗とロードで勝ち越し、昇格組としては歴代最高勝率を更新した。

経営面では、2023年にヒューベストホールディングスの資本参加・業務提携が公表され、デジタル/アナログ両面の強化を推進。運営会社も2023年7月に現行の「株式会社佐賀バルーナーズ」へ社名変更し、地域密着と事業拡大を両立する体制へと舵を切った。クラブ名の由来は“バルーン”で知られる佐賀インターナショナルバルーンフェスタ。地域の象徴をアイデンティティの核に据え、マスコット「バルたん」やチア「BAL-VENUS」も含めた総合的な観戦価値づくりに取り組んでいる。

選手・チームのプロフィール

2025-26の指揮は引き続き宮永雄太HC(GM兼務)。ゲームモデルは堅実なハーフコートをベースに、シューター陣のオフボール活用と、サイズのあるビッグマンを軸としたリバウンド・スクリーンの質で土台を作るスタイルが特徴だ。ロスターには、経験と実績を備えたシューターやストレッチ系ビッグ、ベテランガードら多様なタイプが並ぶ。

  • ベテランの核:金丸晃輔(G/F)、橋本晃佑(PF)、ジョシュ・ハレルソン(帰化/F-C)。いずれもB1での勝ち方を知る存在で、ハーフコートの効率性を押し上げる駒となる。
  • 機動力と育成:内尾聡理(G)、角田太輝(SG)、富山仁貴(特別指定/F)。トランジションとオフボールムーブの両面で伸びしろが大きく、強度とスキルの積み上げに直結する。
  • インサイドの厚み:タナー・グローヴス(F/C)、デイビッド・ダジンスキー(F/C)。スペーシングやショートロールでの意思決定に強みを持ち、PnRの“受け手”だけでなくハブとしての役割も期待される。
  • ゲームメイク:レイナルド・ガルシア(PG)、岸田篤生(PG)、山下泰弘(PG)。リードガードの組み合わせでテンポとチームバランスを最適化する。

チームカラーはブルー/ピンク/グリーン。ホームはSAGAアリーナ、練習拠点は旧市立富士小学校体育館(改修)。クラブの象徴である“色と気球”のビジュアル・メタファーは、ファミリー層の集客導線とも親和性が高く、ゲームデーの演出価値に直結している。

試合・出来事の詳細

直近2季の推移を俯瞰すると、2023-24はB1初年度で29勝31敗と合格点。一方、2024-25は主力ビッグマンの長期離脱やけが人の相次ぐアクシデントが響き22勝38敗に後退した。指標面では、接戦の終盤管理(タイムアウト後のセットプレー、ATOの効率化、勝負所でのターンオーバー抑制)と、40分間の守備強度維持(ファウルトラブル回避と2ndチャンス抑止)が課題として浮かぶ。2025-26に向けては以下の3点が打ち手となる。

  1. ビッグラインアップとスペーシングの両立:ハレルソンやダジンスキー、グローヴスの併用時に、ペリメーターのシューティング脅威を保ちつつ、ローポストの渋滞を避ける。ハイローやショートロール→ドリフトのレーン整理が鍵。
  2. シューターの“走らせ方”の明確化:金丸をはじめとするシューターのピンダウン、フレア、スタガーの頻度・角度・スクリーナーの接触質を設計し、ミッドゲームの停滞を防ぐ。
  3. トランジションDの整流化:外角主体のラインナップ時に生じやすいロングリバウンド→被速攻の連鎖を断つため、ショットセレクションとクラッシュ人数、セーフティバランスの基準を共有する。

ユニフォームはアンダーアーマー供給。2025-26はフロント/バック/パンツに地元有力企業が並び、スポンサーの質量がSAGAアリーナの商圏力とクラブの事業規模拡大を物語る。ホームゲーム会場の配分はSAGAアリーナが中心で、年間30試合の安定開催により、観戦体験の標準化とリピーター醸成が進む構造だ。

他事例との比較・分析

“施設先行型”でB1に到達した例は国内でも限られる。アリーナが先に存在し、クラブが後から成長するモデルは、以下の利点をもたらす。

  • 収益構造の安定:座席数・VIP席・飲食/物販の設計自由度が高く、1試合あたりのマネタイズ上限が高い。
  • スポーツ×まちづくりの接点:周辺動線や再開発と接続しやすく、自治体・企業との協働の選択肢が広がる。
  • ブランドの“初期完成度”が高い:ビジュアル/サウンド/演出の標準を早期に確立でき、ファンの認知形成が速い。

一方で、プレッシャーもある。器に見合う競技力(ホーム勝率、接戦対応力)を短期に引き上げる必要があり、ロスターの再構築やアカデミー連携を含む人材パイプラインの整備が欠かせない。佐賀は2022-23のB2での圧勝を起点にB1へ参入したが、B1定着には「オフェンス・ディフェンス双方の効率の底上げ」「シーズンを通したヘルス管理」「終盤の決定力」が要諦となる。これは昇格組や中位層クラブに共通する壁であり、佐賀も例外ではない。

競技的な文脈では、ハーフコートの精度(eFG%とTOV%の最適化)と、リバウンドの取捨(ORB%にどれだけリソースを割き、トランジションDとのトレードオフをどう制御するか)が勝率に直結する。シューターの活用と2メンゲームの緻密化に、セカンドユニットの役割明確化(特にラインアップ別の得失点差管理)を重ねられるかどうかが、2025-26の分水嶺となる。

今後の展望とまとめ

2025-26は「B1定着からポストシーズン射程へ」のリスタート。鍵は3点に集約できる。

  1. 健康とローテの安定:主力のコンディション維持と、役割が重ならない交代設計。故障発生時にゲームモデルを崩さず、ラインアップABテストを迅速に回す。
  2. シュートクリエイションの多様化:PnR主体から、ハンドオフ(DHO)、ズームアクション、ベースラインドリブンのセットを織り交ぜ、プレーオフ型の準備を平時から蓄積する。
  3. ホームアドバンテージの強化:SAGAアリーナの演出・ファン参加を競技優位へ転化し、拮抗戦の勝ち目を1~2勝上積みする。

佐賀バルーナーズは、地域の象徴たる“バルーン”の名の通り、上昇気流に乗る準備を整えている。B3からB1へ、短期間で階段を駆け上がった推進力は、アリーナを核とした経営設計と、現場の再現性あるゲームモデルづくりの両輪に支えられてきた。2025-26は、その総合力をもう一段引き上げ、チャンピオンシップ争いへ存在感を示せるかが焦点だ。この記事が観戦前の予習や、戦術・ロスター把握のガイドになれば幸いだ。気づきや意見があればぜひ共有してほしい。地域に根ざしたクラブの未来は、ファンの声とともに大きく、遠くへ舞い上がる。

【Bリーグ/京都ハンナリーズ】2025-26:B1西地区での再構築—ロスター刷新、伊佐勉新体制、アリーナ戦略から読む勝ち筋

ニュース概要

京都ハンナリーズ 2025-26は、B1西地区での再構築フェーズに入った。2024-25に勝率.550(33勝27敗)で反発し、新B1(B.LEAGUE PREMIER)初年度参入の切符を掴んだ流れを土台に、今季は伊佐勉HCが就任。エースの移籍や負傷者の発生といった逆風がある一方で、経験値の高いウィング/ビッグの補強とゲームマネジメントの明確化によって、「守備の再現性 × クラッチの最適化」という現実的な勝ち筋を探るシーズンとなる。本稿では、背景・編成・プレースタイル・他事例比較までを立体的に整理し、京都ハンナリーズ 2025-26の競争力を検証する。

背景と経緯

クラブは2008年創設。bjリーグ期には2011-12〜2015-16で上位常連となり、B.LEAGUE発足後は波を伴いながらも地域密着で事業と成績の両輪を回してきた。B1移行後は2017-18に地区2位でCS進出を果たしたが、以降はコーチ交代や主力入れ替えが続き、2021-22は14勝43敗と苦戦。2022-23のロイ・ラナ体制で運営・動員を持ち直し、2023-24は入場者記録を複数回更新しながらも17勝43敗。再編期の2024-25は一転して33勝27敗(西3位)と明確に反発し、新B1参入決定で中長期の足場を固めた。

2025-26は現行レギュレーション最終年。フロントは役割再編を行い、伊佐勉HCの下で「守備と意思決定」を軸に再スタート。開幕戦は白星で入ったものの、その後4連敗、さらに主力の負傷や契約変更が重なり、序盤はリズムを崩した。ここからの巻き返しには、ラインナップ最適化終盤の意思決定の標準化が不可欠となる。

選手・チームのプロフィール

ホームタウンは京都市。運営はスポーツコミュニケーションKYOTO株式会社。クラブカラーは浅葱からアップデートされたハンナリーズブルー(花浅葱)。ホーム会場は京都市体育館(通称の変遷あり)を中心に運営し、将来的には向日町エリアの新アリーナ計画(収容8,000人規模想定)がクラブ価値を押し上げる見込みだ。

スタッフ体制(2025-26)

  • ヘッドコーチ:伊佐勉(バスケットIQの高いセット運用と守備の整流化に定評)
  • AC:福田将吾上杉翔内木主道/ディベロップメント:遠藤将洋
  • GM:組織再編の下で実務と現場の連携ラインを短縮。補強は即戦力と適合性を重視。

ロスター主要構成

  • インサイド中核:チャールズ・ジャクソン(#10 C)、ジョーダン・ヒース(#35 F/C)――ペイント決定力とリム守備で土台を形成。
  • 万能フォワード:アンジェロ・カロイアロ(#32)――戦術リテラシーが高く、ショートロール〜ハイポストで潤滑油。
  • スコアラー/フィニッシャー:チェハーレス・タプスコット(#11)――ハーフコートの停滞を個で破砕可能。
  • ウィング&3&D:古川孝敏(#51)、前田悟(#13)、ラシード・ファラーズ(#24)、ホール百音アレックス(#39)――サイズと射程で幅を作る。
  • ハンドラー:川嶋勇人(#15)、小川麻斗(#12)、澁田怜音(#3)、渡辺竜之佑(#16)――ゲームコントロールとペース創出を分担。
  • ベテランの知見:小野龍猛(#0)――ラインナップの秩序とロッカールームリード。

キーワードは、京都ハンナリーズ 2025-26の「守備の基準化」と「クラッチの省略化」。最小のパス数で良いショットを得る0.5 decision、守備はno-middle徹底とtag→x-outの自動化で被ミスマッチの連鎖を断つ。

試合・出来事の詳細

開幕〜序盤:ホームで好発進後に連敗。要因は主に(1)ローテ未確定によるベンチ時間帯の失点増(2)クラッチでのターンオーバー(TOV%上振れ)(3)相手のドロップ/ディープドロップに対し、ミドル止まりでeFG%が伸びなかったこと。対策として、ダブルドラッグ→ショーティックヒースorカロイアロのショートロール→弱サイドスタック解放を増やし、最終5分は2メンの固定化(PG×C)で判断のレイヤーを削ぐ方針が有効。

セットプレーの基調

  • Horns DHO split:ハイポスト2枚からのハンドオフ→スプリット。ウィング背後のshakeでコーナーの射角を確保。
  • Spain PnR:背中スクリーンの活用で5番のロール経路を解放。古川/前田のポップ脅威で守備を引き伸ばす。
  • Elbow get:カロイアロ起点。ショートロール後に角(コーナー)→45度→トップの順で読み、最初のイージーを取り切る。

守備の骨格

  • no-middleの徹底でベースライン誘導。タグ位置はnail優先、Xアウトの最短距離化。
  • 相手のghost screen対策に、ハンドラーの主導権をtop lockで削ぐ。スイッチ後のミスマッチはearly digで時間を食わせる。
  • ディープドロップ相手には、PnRハンドラーのフローターとショーティック成功率を指標化し、基準未満なら即empty cornerに切替。

特殊状況(ATO/クラッチ)

  • ATOは3本柱:①Spain PnR(古川ポップ/ジャクソンロール)②ベースラインアウトはstackからのrip③サイドラインはIverson cut → elbow
  • クラッチの省略化:first good shot is best shotの原則で、レイヤーを重ねない。PG×Cの2メンに3枚のspacing wingを合わせる。

他事例との比較・分析

西地区上位は「守備効率の再現性」と「ベンチ時間帯の微差管理」で勝率を積む。京都の強みは、(A)サイズの二段構え(ジャクソン+ヒース)によるペイント制圧、(B)シューター/ファシリテーターが同時に2枚以上立つ時間帯を作れる編成幅、(C)ベテランの試合運びだ。一方、弱点は(a)ハンドラーデプスのムラ(TOが得点直結しやすい)と、(b)foul trouble時のサイズ維持、(c)drop相手に中間距離へ誘導される時間が長い点。

KPIの目安(内部指標として設計したいライン):

  1. Half-court D Rating:リーグ上位1/3(失点PPPで昨季比1〜2%改善)。
  2. ClutchのTOV%:昨季比-1.5pt。ATO後初手の成功率55%ラインを目安。
  3. Bench Net Rating:-1.0以内。タプスコット+ヒースの同時稼働で+に転じたい。
  4. OR%(攻撃リバウンド):状況限定で20%台前半を確保(トランジションリスクとトレード)。

これらは公開スタッツとクラブ内トラッキング(ラインナップ別on/off、プレータイプ別PPP)でモニタ。特にSpain PnR採用時のPPPempty corner PnRのTO率は週次レビューの必須指標だ。

今季の要所(年表的整理)

  • オフ〜開幕:主軸の移籍でスコア配分を再編。伊佐新体制でセット群を再設計。
  • 序盤:負傷・契約変更でローテ揺れ。ハンドラーローテ(川嶋/小川/澁田)を固定化しリズム回復を図る。
  • 中盤:ヒース合流とタプスコット起用最適化で、five-out4-out-1-inを相手スキームで使い分け。
  • 終盤:クラッチの省略化と守備のテンプレ自動化で勝ち切り数を上積み、上位直対の白星を狙う。

データ・ロスター可視化

カテゴリ 主担当 補助 狙い
リム守備/リバウンド ジャクソン/ヒース ファラーズ/小野 被二次加点の抑制、セカンドチャンス創出
スペーシング創出 古川/前田 カロイアロ ドロップへの外圧、Spainのポップ脅威
クラッチ運用 川嶋/小川 澁田 2メン固定で判断省略化、ATOセットの標準化
停滞打開 タプスコット 百音アレックス 個の創造性で0→1を生む

他事例との比較・分析

西の強豪は、PnRのファーストリードで利得を出し切る意思決定が早い。京都はここを「ルール化」で補うべきだ。例:empty corner PnR弱サイドのタグ禁止を徹底し、ロールマンへの1stリードを明確化。もしnailが早く閉じたら、逆サイドのshakeまでがプリセット。こうしたif-thenの明文化は、若手や新加入が多いロッカールームほど効きやすい。

また、特定相手のスキーム別ゲームプランを週単位で用意する。たとえば、ハードヘッジの相手にはショートロール→2対1の即時形成、スイッチ徹底の相手にはミスマッチ早期確定→角で時間を止めない。この「相手別の簡易辞書」を共有するほど、クラッチの迷いは減る。

今後の展望とまとめ

事業面では、新アリーナ計画新B1参入で長期的なアセットが明確化。ホームコート・アドバンテージの強化、スポンサーとの統合施策(テーマナイター/学生・ファミリー導線の最適化/動線内体験価値)が、選手獲得力と勝率の双方に波及する。編成面では、インサイドの二段構えとベテランの試合運びで土台は堅い。課題はハンドラーデプスの安定クラッチの省略化で、ここを詰められれば、上位直対でも勝ち切りが増える。

総括すると、京都ハンナリーズ 2025-26の鍵は「守備の再現性」「クラッチの最小手数」「ベンチ時間帯の微差黒字化」。Spain / empty corner / Hornsの3本柱を相手別に出し入れし、ジャクソン&ヒースの縦圧と古川・前田の外圧でスコアプロファイルを安定させれば、成績の目標ライン(勝率.500超〜.550台)に再接近できるはずだ。最後に――この記事が役立ったと感じたら、ブックマークやSNSで共有してほしい。小さな拡散が、京都のホームの熱量を確実に底上げし、B1西地区での存在感をさらに強くする。