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大阪エヴェッサの闘将・青木保憲――「ポジティブなエネルギー」を軸に再起を誓う|敗戦から学ぶ逆襲のマインドセットと実装

敗戦の中で浮かび上がった「アイデンティティ」――青木保憲が示した反撃の種

アウェーで迎えた名古屋ダイヤモンドドルフィンズ2連戦。大阪エヴェッサはゲーム1を66–85、ゲーム2を70–87で落とし、スコア上は完敗に見える。しかし第2戦の後半、大阪は18点のビハインドから10点差まで詰め寄る粘りを見せ、ベンチとコートの温度を一気に引き上げた中心人物が司令塔の青木保憲だ。フルコートでのプレッシャーディフェンス、力強いドライブ、局面を切り開く3本のアシスト――数字以上に伝播するエナジーが、チームのトーンを変えた。
彼は言う。「どんな時でもポジティブにエネルギーを出し続ける。バスケットボール選手として、これこそが僕の一番のアイデンティティ」。敗戦を糧に変える 拠りどころ を、自らの言動とプレーで証明した時間だった。

ゲーム2の読み解き:フローを断たれたオフェンス、取り戻したのは「守備の温度」

名古屋は大阪のフローオフェンス(連動するバス移動とスペーシングでテンポよく加点する概念)を分断。第一にミドルレーンの渋滞化、第二にハンドオフ起点への物理的圧力、第三に2ndサイドのショートクロースアウトを減らすローテーションで、エヴェッサの意図を外してきた。大阪は前半で18点差を背負う展開となるが、第3Q終盤にかけて青木の前線プレッシャーがスティール未遂を誘い、トランジションの導火線に。
オフェンスでは「1stアクションが潰された後」の再整列に時間を要した点が課題。青木自身も「オフェンスの停滞を引きずってディフェンスに入ってしまった」と自己批評を隠さない。だが、後半の巻き返しは 何を積み上げるべきか の輪郭を明確にした。温度は守備で上げる、攻撃はボールを止めずに2nd・3rdアクションへ――この原則がチームで共有されたのは確かな前進だ。

青木保憲プロフィール:下積みの延長線上にある「今」

筑波大学を経てプロ入り。川崎ブレイブサンダースでは出場機会に恵まれない時期も経験した。その後、広島ドラゴンフライズ、仙台89ERSへ。仙台での3季は主力として攻守の意思決定を担い、ゲームマネジメント能力を磨いた。大阪に加入した今季は、藤田弘輝HCと再タッグ。
青木は言う。「試合に出なければ分からないことがある。仙台で積み重ねた実戦の厚みが、今の自分の視野を広げてくれた」。味方の 表情 を読む――ボールが欲しいのか、気持ちが落ちているのか。そうした細部への感受性が、リーダーの資質にリアリティを与えている。

指揮官・藤田弘輝が求めるスタンダード:「行動の質を上げる」ことの具体

藤田HCは「連敗を受け止め、チームとしてのマインド

Bリーグ10周年を愛知から盛り上げる!大村知事が県内4クラブを激励、新アリーナとともに迎える節目のシーズン

Bリーグ10周年を迎える節目の年に、愛知4クラブが合同で知事を表敬訪問


2025年9月1日、Bリーグに所属する愛知県内の4クラブが大村秀章愛知県知事を表敬訪問しました。出席したのは、シーホース三河、三遠ネオフェニックス、名古屋ダイヤモンドドルフィンズ、ファイティングイーグルス名古屋の4チーム。さらにBリーグの島田慎二チェアマンも同席し、10周年シーズンを前にした合同訪問は大きな注目を集めました。

愛知県は古くから「バスケ王国」と呼ばれる土地柄であり、複数のクラブが同一地域に存在する珍しいエリアです。今回の訪問は、Bリーグが10周年を迎える節目にあたり、地域とクラブが一体となってバスケットボール文化をさらに広げる決意を共有する機会となりました。

シーホース三河:代表取締役社長と日本代表ビッグマンが出席

シーホース三河からは寺部康弘取締役社長と、日本代表経験を持つビッグマン、シェーファーアヴィ幸樹が出席しました。シェーファーは「愛知の4クラブが一丸となって知事を訪問できたことをうれしく思う。10周年という節目に、全力を尽くして戦いたい」とコメント。中心選手としての責任感と、地域に根差した活動への覚悟を強調しました。

クラブとしても、Bリーグ黎明期からの強豪であり、名古屋を中心とするバスケ文化をリードしてきた存在です。今季もプレーオフ進出と優勝争いが期待されています。

三遠ネオフェニックス:豊橋に根差すクラブの誇り

三遠ネオフェニックスからは岡村秀一郎代表取締役社長と、豊橋出身のガード津屋一球が参加しました。津屋は「地元である豊橋に根差して活動しているチームとして、こうした場に参加できることは誇りであり責任でもある」と語り、地元ファンの声援を力に変える決意を示しました。

津屋はU18から世代別代表経験を積んだ注目株であり、地域の子どもたちにとっても憧れの存在。クラブとしても若手育成や地域交流イベントに力を入れており、愛知から日本のバスケを発信する拠点の一つとなっています。

名古屋ダイヤモンドドルフィンズ:タイトル獲得を誓う今村佳太

名古屋ダイヤモンドドルフィンズは、東野智弥代表取締役社長兼ゼネラルマネージャーと、主力の今村佳太が同席しました。今村は「愛知から日本のバスケットボールをさらに盛り上げたい。優勝を目指して戦う」と力強く語り、クラブにタイトルをもたらす決意を明言しました。

ドルフィンズは昨季もリーグ上位で安定した戦いを見せ、今村をはじめとする日本代表クラスの選手を擁しています。愛知から全国区の強豪へと躍進する姿に、ファンの期待も高まっています。

ファイティングイーグルス名古屋:地域密着を掲げる保岡龍斗

ファイティングイーグルス名古屋からは、成瀬日出夫代表取締役社長と保岡龍斗が出席。保岡は「バスケ王国愛知を盛り上げるために全力を尽くす」と述べ、地域に根差したクラブづくりを進める姿勢を示しました。

FE名古屋はB1昇格を果たした新鋭クラブであり、地域とのつながりを第一に掲げるチームです。愛知における 第4のクラブ としての存在感を強めるシーズンになることが期待されています。

島田慎二チェアマンと大村知事のエール

島田チェアマンは「Bリーグ10周年という大きな節目を迎える今、愛知というバスケ文化の厚い地域で4クラブが共存し、それぞれの個性を活かして発展していくことを期待している」とコメント。大村知事も「愛知の4クラブが一丸となって盛り上げてほしい」と激励しました。

知事の言葉には、愛知からBリーグ初のチャンピオン誕生への期待が込められており、地元スポーツの盛り上がりは県政としても大きなテーマになっています。

愛知4クラブとBリーグ10周年の意義

今回の表敬訪問は、単なるイベントではなく、愛知県全体でバスケットボール文化を高めるためのシンボル的な取り組みです。複数クラブが同一地域に存在することで競争と協力が生まれ、地域のスポーツ振興やファン層拡大につながっています。

Bリーグ10周年を迎える2025–26シーズンは、各クラブにとっても大きな挑戦の年。愛知から全国へ、そして世界へ。地域とともに成長する姿勢が、今後の日本バスケ界の未来を形づくっていくことでしょう。

まとめ:愛知から始まるBリーグ新時代

– 愛知4クラブ(シーホース三河、三遠ネオフェニックス、名古屋ダイヤモンドドルフィンズ、ファイティングイーグルス名古屋)が知事を訪問
– それぞれの選手・代表が地域とファンへの思いを語り、10周年シーズンへの意気込みを表明
– 大村知事と島田チェアマンが激励、愛知からBリーグ王者誕生への期待が高まる

愛知はまさに「日本バスケの縮図」とも言える土地。この地域から、Bリーグ10周年にふさわしい新たなドラマが生まれることは間違いありません。

名古屋Dが期待の若手PF2名を獲得!大学MVP・小澤飛悠&米国出身ホルツが加入

名古屋Dが大型補強を発表、若手パワーフォワード2名と新規契約


2025年7月7日、B1リーグの名古屋ダイヤモンドドルフィンズが、2人の若手パワーフォワードとの契約を発表した。加入するのは、日本体育大学出身の小澤飛悠(おざわ・ひゆう)と、アメリカ出身のジェイク・ホルツ。いずれも将来性豊かな選手であり、2025-26シーズンの台風の目となる可能性を秘めた補強である。

チームはこれまで主力に加え、堅実なベテランを揃えてきたが、今オフは若返りと育成を視野に入れた戦略へシフトしている。今回の小澤・ホルツの獲得は、その第一歩と位置づけられる。

小澤飛悠:大学MVPの実力者が 第2の故郷 名古屋へ


山梨県出身の小澤飛悠は、現在20歳。身長190cm・体重92kgとサイズはやや小柄ながら、機動力と高いシュート精度を武器とするモダンタイプのパワーフォワードだ。

中部大学第一高校時代には、U18日本代表として『FIBA U18アジア選手権2022』準優勝に貢献。日本体育大学では早くから主力として頭角を現し、2024年には「日本代表ディベロップメントキャンプ」にも選出された。1月にはシーホース三河の練習生としてプロの現場も経験済みである。

特に評価を高めたのが、『第74回関東大学バスケットボール選手権大会(スプリングトーナメント)』。シックスマンながらチームを頂点へ導き、自身は大会MVPに輝いた。全5試合で平均18.0得点、3P成功率46.7%(15本中7本)は非凡であり、「B1でも即戦力」との声も多い。

「愛知は第2のふるさと」…小澤のコメントににじむ決意


契約発表に際し、小澤は次のように語った。

「まずは、入団にあたり受け入れてくださったクラブと、背中を押してくださった日本体育大学の関係者の皆さんに感謝しています。愛知県は高校時代を過ごし、僕の頑張りを見て欲しい方が沢山いる、第2のふるさとだと思っています。そのような土地で歴史あるチームに入団することができたことをとても光栄に思っています。一日も早くチームの戦力となり、ファンの皆さまに勝利を届けられるよう、全力でプレーします」

「自分の強みは3Pと献身性」とも語る小澤。B1の舞台でどこまで自分を貫けるかが注目される。

ジェイク・ホルツ:アメリカ育ちの23歳、D3からB1へ

ジェイク・ホルツは、アメリカ・ワシントン州出身の23歳。身長194cm・体重92kgのフィジカルを活かしたプレースタイルで、NCAAディビジョン3のウィットワース大学にて活躍。2024-25シーズンは平均16.4得点、6.2リバウンド、2.3アシスト、1.0スティール、0.9ブロックとオールラウンドなスタッツを残している。

D3出身ではあるが、戦術理解度が高く、フィジカル、シュート、リバウンドすべてにおいて平均以上のバランスを持つタイプ。名古屋Dはこの「賢く泥臭いスタイル」に着目し、アジア圏での適応力を買って契約に踏み切ったとされている。

ホルツは加入に際し、次のようにコメントしている。

「名古屋の一員としてプロキャリアをスタートできることに、これ以上ないほどワクワクしています。毎日情熱、タフさ、そしてエネルギーを持って取り組み、チームの勝利のためにできることは何でもやるつもりです」

名古屋Dの若返り路線とポジション編成の動き

2024-25シーズンの名古屋ダイヤモンドドルフィンズは、渡邉飛勇や須田侑太郎など実力派ベテランを中心に戦ってきたが、2025年夏の補強では明確に「将来性重視」の姿勢が見える。

今回獲得した2人はいずれも20代前半で、リクルート戦略としても、開幕前キャンプでの競争を激化させる狙いがあるとみられる。現時点でのPF/SF枠の選手構成を見ると、プレータイム争いは激しく、小澤やホルツにとっては、開幕からのアピールが極めて重要だ。

過去の事例:大学MVP・海外育成組の B1での成功例

大学バスケのMVPを経てB1で飛躍した選手には、金近廉(東海大学→千葉ジェッツ)、井上宗一郎(筑波大学→三遠ネオフェニックス)らが挙げられる。いずれも大学時代に全国区の存在として名を馳せ、プロでもローテーション入りを果たしている。

一方、NCAA D3から日本に挑戦するホルツのようなルートは稀だが、フィリピン代表で活躍したアンジェ・クワメ(アテネオ大→Bリーグ)など、下部リーグからの飛躍例は近年増加している。名古屋Dが育成型選手を採用した背景には、長期スパンでのチーム構築を視野に入れた戦略が透けて見える。

まとめ:名古屋Dが描く未来像と若手2人の挑戦

名古屋ダイヤモンドドルフィンズが打ち出した若返り戦略の一環として、小澤飛悠とジェイク・ホルツの加入は象徴的な出来事だ。いずれも即戦力とは言えないかもしれないが、将来的にBリーグを代表する存在へと成長する可能性を秘めている。

B1での適応、プレータイムの獲得、そしてチームへの貢献。2人に課されたテーマは多いが、それだけに挑戦のしがいもある。開幕へ向けたトレーニングキャンプ、プレシーズンゲームでの彼らのプレーは要注目である。

GL3x3では、引き続き若手の台頭と名古屋Dのチームビルディングを追いかけていく。

【Bリーグ/名古屋ダイヤモンドドルフィンズ】IGアリーナ時代へ――西地区移行と最多13,375人動員で描く成長戦略【Bリーグ/名古屋D】

ニュース概要

名古屋ダイヤモンドドルフィンズは、2025-26シーズンから新本拠地IGアリーナ(愛知国際アリーナ)へ移転し、リーグ再編に伴いB1西地区で戦う。開幕戦(10月5日・vs北海道)ではクラブ史上最多となる13,375人を集客。チームはショーン・デニスHCの下、既存主力の再編と新加入の融合を進め、アリーナ移転・動員増・戦力上積みの「三位一体」の成長局面を迎えている。本稿では、移転の背景、歴史と競争力の変遷、最新ロスター構成、そして西地区での勝ち筋までを多角的に整理し、名古屋ダイヤモンドドルフィンズの「今」と「次」を解説する。

背景と経緯

名古屋ダイヤモンドドルフィンズは1950年に三菱電機名古屋男子バスケットボール部として発足。JBL、NBLを経て2016年のB.LEAGUE創設時に現名称へ移行した。長らく本拠としてきた愛知県体育館(ドルフィンズアリーナ、命名権期間あり)は老朽化や国際基準面の課題を抱え、県の新アリーナ構想に合わせて移転計画が進行。2024年2月、命名権がIGアリーナに決定し、2025年7月の開業を経て、同年シーズンから本格稼働した。

リーグ再編では3地区制から2地区制となり、2025-26シーズンに西地区へ移動。競争環境が変化する中で、クラブは戦力再設計を推進。2023-24は41勝19敗で西地区優勝(発足後初)・全体3位、CSはセミファイナル敗退。翌2024-25は中地区4位の35勝25敗とし、好不調の波を抑えながらも、2025-26での再加速に向けてアーロン・ヘンリー、カイル・リチャードソン、鎌田真、小澤飛悠、アラン・ウィリアムズらを補強し、IGアリーナ初年度の「勝てる土台」を築いた。

選手・チームのプロフィール

クラブ・アイデンティティ

  • チームカラー:ドルフィンズレッド(2016年に刷新)。
  • エンブレム:名古屋の「八」を象徴する8つの星、バスケットボールのラインを再解釈した「ドルフィンズエンブレム」を内包。シンプルかつ情熱的なメッセージを掲げる。
  • ホームタウン:愛知県名古屋市。地域密着と国際基準アリーナの二軸で、観戦体験の高度化を狙う。

近年の成績トレンド

シーズン 地区 勝敗 主な結果
2023-24 西 41-19 (.683) 西地区優勝、CS SF敗退
2024-25 35-25 (.583) 地区4位(9位相当)
2025-26 西 IGアリーナ元年、13,375人で最多動員スタート

2023-24の「攻守バランスの良さ」を基点に、2024-25は編成変更と負傷対応で再現性が揺れたが、2025-26はサイズ・ウィング守備・ボール保持力の再強化で戻しにいく設計に見える。

ロスターの骨子(2025-26)

  • ガード/クリエイション:齋藤拓実(PG)、加藤嵩都(PG)、今村佳太(G/F)。齋藤はハーフコートでの局所優位創出、終盤の意思決定に強み。今村はユーティリティの高い2-3番で、セカンドサイドを活性化。
  • ウィング/スイッチ守備:アーロン・ヘンリー(SF)、佐藤卓磨(SG/SF)、中東泰斗(SG)。長さ・機動力で相手のメインハンドラーに圧をかけ、トランジションの質を引き上げる。
  • インサイド/リム制圧:アラン・ウィリアムズ(C)、スコット・エサトン(F/C)、カイル・リチャードソン(F/C)。ウィリアムズはペイント効率とリバウンドで攻撃回数を増やす「増幅器」。エサトンはスクリーン角度づくりとポジショニングの巧さで攻撃設計を支える。
  • 伸びしろ層:鎌田真(G)、小澤飛悠(SF)、ジェイク幸輝・ホルツ(SF)ら、サイズ×機動力のU25帯。ローテに安定的に絡めれば、ディフェンスの総合力が一段上がる。

試合・出来事の詳細

IGアリーナ開幕戦:13,375人のインパクト

2025年10月5日のホーム開幕戦(vs北海道)は、13,375人の来場でクラブ最多を更新。新アリーナ効果に加え、アクセス性、可変演出、飲食・グッズ導線の最適化といった体験価値の底上げが観客動員を押し上げた。Bリーグは国内スポーツの中でも「アリーナ体験」が収益の要で、ドルフィンズはこの文脈に沿って「観戦の目的地化」を強く打ち出したかたちだ。

ショーン・デニス体制の継続性

2017-18からの編成で課題だった「守備の再現性」を、デニスHCはウィングの人材設計とルールの徹底で是正。2023-24の地区優勝は攻守のバランスが整った結果で、ウィークサイドのスプリット・カッティング、ベースラインローテの短縮など細部の調整が端的に効いた。2025-26はサイズと強度のあるウィング群+置き所を理解したビッグマンの組み合わせで、トランジション抑制→ハーフコート優位という勝ち筋を繰り返す絵を描く。

他事例との比較・分析

1) アリーナシフトのベンチマーク

国内外を見ても、新アリーナ移転初年度は「動員+物販+スポンサー露出」が伸びやすい。ドルフィンズは13,375人という象徴的な数字で船出したが、鍵は「二度目以降の再訪動機」だ。座席の快適性、視認性、演出の一貫性、ファミリー向け導線、試合以外のコンテンツ(ハーフタイム、体験ブース、ミュージアム的展示)などが、年間平均来場者顧客生涯価値(LTV)を左右する。西地区は伝統的強豪と市場規模の大きいクラブが多く、体験価値の競争は成績と表裏一体だ。

2) 西地区のゲームモデルに対するアンサー

西地区は「サイズと遂行力」を軸にした堅実なハーフコート志向の色合いが強い。これに対し、ドルフィンズは

  • ウィングのスイッチ守備で相手の1stアクションを遅延
  • ビッグのリム保護+DREBで1ポゼッション終わらせる
  • 前進局面は「最短ルートのアドバンテージ創出」を徹底(ドラッグスクリーン、アーリーシール)

という循環を狙う。アラン・ウィリアムズのリム周り効率と、齋藤拓実のショートクロック意思決定は、地区のゲームモデルに対する強いカウンターだ。

3) 2023-24優勝時との比較

2023-24は41-19の勝ち星を確保。攻守のレーティング詳細はここでは割愛するが、「ターンオーバー抑制」「フリースロー獲得」「ディフェンス・リバウンド」の3点が勝敗を最も説明した。2024-25は編成変動や負傷でこの3点の再現性が揺らぎ、接戦を取り切れない場面が増えた。2025-26は、ヘンリーのオンボールディフェンス、今村のライン間受け、リチャードソン/エサトンの接触局面での微差勝ちによって、細かな期待値を積む戦いが戻っている。

今後の展望とまとめ

短期(今季):ホームアドバンテージの最大化

IGアリーナは固定席1万5,000席規模の国際基準施設。観戦導線と演出を最適化し、平均入場者・チケット単価・物販客単価・スポンサー露出の四点を連動させたい。コート上では失点の「質」管理(セカンドチャンス・トランジション・ファウル由来)と、クラッチのショットセレクション改善が直結KPIとなる。

中期(2~3年):育成×人件費の最適化

U25層(小澤、鎌田、ジェイク幸輝・ホルツほか)の成長曲線をローテに組み込み、国内枠の再現性を上げることが、年々タイトになる外国籍・アジア枠の人件費を平準化するカギ。「ウィング守備の自前化」に成功すれば、編成の柔軟性が飛躍的に増す。

長期(ブランド):都市の「目的地」化

名古屋ダイヤモンドドルフィンズは、名古屋市の中心性と新アリーナの強みを背景に、イベントとしての成熟を加速できる。試合日程以外の常設コンテンツ(アリーナツアー、地域連携展示、キッズプログラム、eスポーツ・カルチャー導入)を拡充し、「試合がない日にも行きたくなる場所」に近づけることが、集客の天井を押し上げる。

結論

名古屋ダイヤモンドドルフィンズは、IGアリーナ移転と西地区での再挑戦を成長ドライバーに、チームの競技力とクラブの事業力を同時に引き上げる局面に入った。13,375人の歴史的な船出は、単なる話題づくりではなく、戦略の正しさを示す重要な通過点だ。勝敗は細部に宿る。守備のルール徹底、クラッチでの判断、そしてホームアドバンテージの積み増しが、今季の天井を決める。この記事が観戦計画や議論の起点になれば幸いだ。この記事をシェアして、IGアリーナ元年の名古屋Dを一緒に追いかけよう。