ミルウォーキー・バックス」タグアーカイブ

【NBA/ミルウォーキー・バックス】完全読本|歴史・優勝の軌跡・ヤニス時代の戦術・最新ロスター&データ徹底解説【2025】

バックスとは?―― 鹿の都 が育んだ勝利のカルチャー

ミルウォーキー・バックス(Milwaukee Bucks)は、1968年創設のNBAフランチャイズ。ホームはウィスコンシン州ミルウォーキー、アリーナはダウンタウンの再開発を象徴するファイサーブ・フォーラム。チーム名の Bucks は地域に生息する牡鹿にちなみ、ロゴとカラー(グッドランドグリーン、クリームシティレンガ、クリーム、グレートレイクスブルーほか)は土地の歴史と自然を織り込む。優勝は1971年と2021年の2回、ファイナル進出は3度。地区(セントラル)では伝統的に強豪として知られ、1970〜80年代の連続地区優勝、2019年以降の再隆盛など、時代ごとに明確な 強さの相 を持つ。

ブランド/ロゴの物語―― 勤勉さ×自然 の抽象化

角を広げた牡鹿のエンブレムは、跳躍・警戒心・機動力のメタファー。ブリュワリーの街として栄えた産業史、五大湖圏の色彩、ドイツ系移民文化のクラフトマンシップ――こうした地元の文脈が、堅実で組織的なバスケットボールというプレースタイルとも響き合う。ユニフォームの クリームシティ 配色はレンガ造りの街並みを想起させ、アリーナ全体のエクスペリエンスデザインと調和する。

年表ダイジェスト(1968–2025)

1968:拡張ドラフトで誕生。
1969:ドラフト全体1位でルー・アルシンダー(後のカリーム・アブドゥル=ジャバー)を指名。
1971:オスカー・ロバートソンが加わり、創設3年目で優勝(史上最短)。
1974:ファイナル第7戦でセルティックスに惜敗。
1976–87:ドン・ネルソンHC期、6年連続地区優勝など堅守巧攻の強豪へ。
1998–2003:ジョージ・カールHC×レイ・アレン/サム・キャセール/グレン・ロビンソンで東決勝進出(2001)。
2014:新オーナー体制へ移行、再建ロード本格化。
2018:ファイサーブ・フォーラム開場、ビューデンホルツァーHC就任。
2021:ヤニスがファイナル第6戦 50点 で球団2度目の優勝。
2024–25:ドック・リバースHC体制、サイズ&スペーシング再設計で再頂点を狙う。

創世と 最短V の神話(1969–1974)

フェニックスとのコイントスを制し、アルシンダーを獲得した瞬間からバックスの軌道は変わった。1年目56勝、翌1970–71はオスカー・ロバートソン加入で66勝16敗、プレーオフ12勝2敗の圧勝で戴冠。創設3年目の優勝は今も破られないスピード記録で、スカイフックとショットクリエイトの共存が攻撃効率を桁違いに引き上げた。1973–74は再びファイナルへ。第6戦は2OTの死闘、第7戦はセルティックスの老練に屈したが、短期間に頂点級の 型 を作った戦略力は、後年のバックスに受け継がれる。

ネルソン流 が築いた組織の骨格(1976–1980s)

アブドゥル=ジャバー退団後、ドン・ネルソンが指揮を執ると、ポジションレスの先駆けともいえる柔軟なローテーション、ダークホースの起用、スモールのスイッチ守備など、多彩さで地区を席巻。シドニー・モンクリーフ、ボブ・レイニア、テリー・カミングス、ポール・プレッシーらが 堅守・インテリジェンス・連動 のバックスらしさを体現した。60勝シーズンを含め東の常連強豪に君臨するが、頂点ではボストン/フィラデルフィアの壁が厚く、カンファレンス決勝止まりが続く。

Ray–Sam–Big Dog の華と翳(1998–2003)

ジョージ・カールHCがレイ・アレン/サム・キャセール/グレン・ロビンソンのスコアリング三銃士を束ね、2000–01に東決勝第7戦まで進出。攻撃の爆発力はリーグ随一だった一方、ケミストリーと守備再現性が揺らぐと上振れ/下振れが大きく、翌季以降は主力流出とともに再び過渡期に入る。プレースタイルの華やかさと組織の脆さ――この対比が、後の 堅牢×効率 志向への反動を生んだ。

オーナー交代と新アリーナ、再建の実装(2014–2018)

2014年にオーナーが交代し、球団はミルウォーキー残留と新アリーナ建設にコミット。ジェイソン・キッドHC時代に若手を厚くし、2018–19にはファイサーブ・フォーラム開場とマイク・ビューデンホルツァーHC就任が重なり、スペーシング重視の近代オフェンスにフルシフト。ブルック・ロペスのストレッチ化、周囲の高確率シューター配置、トランジションでの加速――この ヤニスを中心に外を開ける 思想が勝率を決定的に押し上げた。

ヤニスの時代――2021優勝に至る設計図

ヤニス・アデトクンボは、ペイントの制圧力、守備のカバー範囲、トランジション推進力という3大資産を併せ持つ稀有なMVP級タレント。2020オフのドリュー・ホリデー獲得でPO耐性が整い、2021プレーオフはヒートにスウィープ、ネッツを第7戦OTで突破、東決勝では負傷離脱の逆風をロール陣で跳ね返してファイナルへ。第6戦、ヤニスは 50-14-5ブロック の歴史的名演でサンズを撃破。半世紀ぶりに頂点へ返り咲いた。
優勝の要諦:①リム守備(ロペス、ヘルプとドロップの精緻化)②セカンドユニットの得点源(ポーティス)③終盤の意思決定(ホリデー)④ヤニスのペイント期待値(FTA創出)――効率の積み木を丁寧に積み、クラッチでは個の上限で引き切る。

2023–2025:揺り戻しと再調整、そして現在地

2023–24はシーズン中の指揮官交代もあり、理想形と現実のズレを露呈。2024–25はドック・リバースHCがフルシーズンでマネジメントを担い、ロスターはヤニスを軸に、ボビー・ポーティスゲイリー・トレントJr.カイル・クーズママイルズ・ターナーらサイズと射程を併せ持つ人材で再編。ウイング・ガードにはゲイリー・ハリスコール・アンソニーらを配し、若手のアンドレ・ジャクソンJr.クリス・リビングストンも走力と守備で台頭。インサイドの厚みはターナーのリムプロテクトで増し、 守備→走る→外が開く→ヤニスが刺す の循環を再起動した。

最新ロスターの戦術適性(2025年版・抜粋)

ヤニス・アデトクンボ(F/C):トランジション発火点/ショートロール展開。ペイント期待値の源泉。
マイルズ・ターナー(C):リムプロテクト+トレイル3でスペース拡張。ヤニスのドライブレーンを確保。
ボビー・ポーティス(F/C):セカユニのスコアリング。PnP/ミドルでゾーン割り。
ゲイリー・トレントJr.(G):スポットアップ&ハンドオフからのプルアップで重心を動かす。
カイル・クーズマ(F):ハンドラー兼フィニッシャーのハイブリッド。サイズあるドライブでラインを押し下げる。
ゲイリー・ハリス(G):POAディフェンスの安定装置。
アンドレ・ジャクソンJr.(G/F):トランジション加速、ボールのない所作が優秀。
ジェリコ・シムズ(C):リムラン/オフェンスリバウンドでエナジー供給。

データで読むバックス(要点)

通算勝率は.528(2024–25シーズン終了時点の概数)、優勝2回、東決勝・決勝常連の強豪歴。1971はRS勝率.805、2021はPOで4–0→4–3→4–2→4–2と打ち上げ。1980年代は60勝を含む継続的な高勝率で、現代の60勝(2018–19の60–22)は ヤニス×外角解放 のモデル成功例。近年はRS効率値に対しPO再現性の調整がテーマで、ヘルスとマッチアップの細部(スイッチ対象、リム保護とコーナー3のトレードオフ)をどう最適化するかが勝敗を分ける。

永久欠番/レジェンド小史

#33 カリーム・アブドゥル=ジャバー:スカイフックで 最短V を牽引。
#1 オスカー・ロバートソン:ゲーム支配の原型。
#4 シドニー・モンクリーフ:屈指のガードディフェンダー。
#8 マーカス・ジョンソン、#10 ボブ・ダンドリッジ、#16 ボブ・レイニア、#32 ブライアン・ウィンターズ、#14 ジョン・マクグロックリン、#2 ジュニア・ブリッジマン――勝利の時代を支えた職人たち。
現代の象徴はもちろんヤニス。都市とチームの自己像を更新し続ける 時代の体現者 だ。

アリーナ&ビジネス:ファイサーブ・フォーラムがもたらした外部効果

ファイサーブ・フォーラムはアリーナ単体ではなく、周辺開発を含む ディア・ディストリクト のハブ。地元企業・ファミリー層・大学コミュニティを巻き込み、ゲームデー体験と市街地回遊を一体設計することで、来場者あたり消費の最大化、スポンサーアクティベーションの拡張、雇用創出に寄与。 勝つこと の価値を街で循環させる仕組みが整った。

ライバル比較:東の地政学

セルティックス/76ers:ハーフコートでのショットクオリティ勝負。ヤニスのペイント侵入を抑えられると苦戦。
キャブス/ペイサーズ:テンポと3P試投数の差し合い。守備ローテの遅滞をいかに最小化するか。
ヒート:フィジカリティとゲームプラン耐性の真っ向勝負。ポゼッション価値の積み上げでミスを減らすのが鍵。
ニックス:リム保護とOREBの二律背反。ボックスアウトとトランジションの規律で 消耗戦 を制したい。

過去の転機と教訓(ケーススタディ)

① 2001東決勝:ハイオクタンスなオフェンスだけでは頂点に届かない――守備再現性とメンタル面の安定が不可欠。
② 2019東決勝:2–0からの4連敗は、FTとラインナップの揺り戻しへの耐性不足が露呈。
③ 2021優勝:ローテの 役割明確化 と収益化できる守備の両立が王道。

主要人物プロフィール(要約)

ヤニス・アデトクンボ:MVP×FMVP。移動しながらパワーを出せる希少体質。
ドック・リバースHC:対人関係とロッカールームマネジメントに強み。POでのプランB構築が命題。
ボビー・ポーティス:シックスマンの炎。
マイルズ・ターナー:ブロックと外角で 守備→攻撃 の橋渡し。
カイル・クーズマ:サイズあるセカンドハンドラー。終盤の もう一手 を担う。
ゲイリー・トレントJr.:ショットメーカー。相手のドロップに強い。

数字と比較でわかる らしさ

・創設3年目優勝(1971)はNBA史に残るスプリント。
・1980年代:6年連続地区優勝= 継続性 はDNA。
・2019–2024:RSトップ級のネットレーティングを複数回記録→PO耐性の微調整が継続課題。
・2021:ファイナル第6戦のヤニス50点は、球団史上 単一ゲームの象徴値 として最大級。

今後の課題とアップサイド(2025以降)

課題:①ヘルス管理(スターの稼働率)②終盤のシュートクリエイター複線化③ゾーン/スイッチに対するセットの磨き直し④コーナー3容認の量と質の制御。
アップサイド:ターナー導入のライン守備、クーズマの自給自足点、トレントJr.のハンドオフ発射台、若手の走力―― 守って走る→広げて刺す の完成度が高まれば、東上位で再び最有力候補に返り咲く。

ファン/メディアの反応傾向

ミルウォーキーのファンベースは、勤勉さとチーム至上主義を尊ぶ 職人気質 。メディアはヤニスの人間性・コミットメントを称えつつ、POの戦術適応力に厳しい評価を下すことも。ホームの ディア・ディストリクト は相手にとって明確なアドバンテージ圧力となり、感情の波をスコアに変換するプラットフォームとして機能する。

FAQ:よくある質問

Q:バックスはなぜ 崩れにくい ?
A:守備・リバウンド・トランジションの骨格が強固で、RSでの底堅さを担保しやすいから。

Q:ファイナル再進出の鍵は?
A:クラッチの創造性の分散化と、相手エースに対するスキームの 二段構え 。

Q:どんな選手が バックス向き ?
A:役割受容ができ、守備のルールを守りつつ外角で床を広げられる選手。

観戦のコツ:戦術視点の楽しみ方

①ヤニスがトップで受けた瞬間、弱サイドのディフェンダーの足の向きを観察。寄りの鈍い側へハンドオフ/キックアウトの導線を作る。②ロペスやターナーのトレイル3は 早い段階のハンマー 。入ると相手はペイントシールを解かざるを得ず、以後のドライブ成功率がじわ上がる。③ポーティスの投入タイミングは得点の潮目。ベンチが出た局面での±をチェックすると、勝敗の相関が明確。

まとめ:1971と2021の中間に、 次の章 がある

アブドゥル=ジャバーの 最短V 、ネルソン時代の 継続的強さ 、ヤニスの 再到頂 。バックスの歴史は、スーパースターの爆発組織の再現性を糸で結んだ物語だ。2025年のロスターは、守備・サイズ・外角・走力が再び良いバランスに近づきつつある。課題はクラッチの多様化と健康管理――それを乗り越えた時、ミルウォーキーの夜は再びに染まる。

次の一歩:東上位との直接対決で 守備の収益化 を数字で示し、POではラインナップの大胆な可変を恐れないこと。
あなたがファイサーブ・フォーラムに立つなら、 We’re built to last. ――その意味を、40分強の攻防の中で体感できるはずだ。

コール・アンソニーがグリズリーズと決別、バックスと契約へ!PG陣再編の鍵を握る存在に

コール・アンソニー、バックスへ電撃移籍──FA解禁で新天地を決断

2025年7月13日(現地時間)、NBA界に大きな動きが走った。メンフィス・グリズリーズに在籍していたポイントガード、コール・アンソニーが契約バイアウトを経てFA(フリーエージェント)となり、ミルウォーキー・バックスとの契約を結ぶ見通しであることが報じられた。バイアウト後の48時間 ウェイバー期間 を終え、正式な契約に進むとされている。
この報道は、ESPNの有力記者エイドリアン・ウォジナロウスキーによって伝えられ、早くもリーグ関係者やファンの間で注目を集めている。25歳という若さながら、すでに5シーズンをNBAで過ごしたアンソニーの移籍は、バックスのバックコート再編における重要なピースとなることは間違いない。

NBAキャリア6年目の現状──ドラフト15位からの道のり

コール・アンソニーは2020年のNBAドラフトにて、オーランド・マジックから1巡目15位指名を受けてプロキャリアをスタートさせた。ノースカロライナ大学での1年を経て早期エントリーを果たした彼は、得点力とスピードに優れたスコアリングPGとして注目された。
188cm・83kgとサイズこそ大柄ではないが、爆発的なドライブと難しいシュートを決める能力には定評がある。デビューシーズンから先発出場を果たし、2年目には平均16.3得点とキャリアハイを記録。その後もベンチスコアラーやリードガードとしての役割をこなしつつ、マジックの若手再建期を支えてきた。

マジック時代の成績と成長曲線

アンソニーはマジックでの5年間で合計320試合に出場し、うち129試合でスターターとして起用された。キャリア平均は24.8分出場で12.5得点、4.3リバウンド、3.8アシストというオールラウンドな数字を残している。特にピック&ロールからのスコアリング能力と、トランジション時の加速力は高く評価されていた。
直近の2024-25シーズンでは67試合に出場し、平均18.4分プレーで9.4得点、3.0リバウンド、2.9アシスト。出場時間の減少によりスタッツはやや控えめながら、ベンチからのエネルギー源として貴重な役割を果たしていた。マジックがガード陣を若返らせる中で、アンソニーはトレード要員としてグリズリーズへ移籍することとなった。

グリズリーズからのバイアウト、その背景と意味


6月のトレードによりグリズリーズへ加入したものの、アンソニーがそのままプレーすることはなかった。ジャ・モラントやマーカス・スマートといったガードがすでに複数在籍する中、アンソニーの出場機会は限定的になると見られており、双方の合意により契約を買い取る「バイアウト」に至った。
この動きは、アンソニー自身がより大きな役割を担えるチームを求めていたことを示しており、新天地を探すにあたり重要な決断だったといえる。NBAでは近年、若手のガードが育成優先で重宝される中、経験ある25歳PGの市場価値は再評価されている。

ミルウォーキー・バックスでの新たな役割とは

ヤニス・アデトクンボとデイミアン・リラードを擁するバックスにとって、アンソニーの加入はバックコートの厚みを増す好材料だ。2024-25シーズンはリラードの故障離脱が多く、ガード陣の控え層に不安があった中、スコアリング能力のあるアンソニーは 第3のガード として理想的な人材といえる。
さらに、ギャリー・トレントJr.やケビン・ポーターJr.といった攻撃型ガード陣との競争は激しくなるが、クラッチタイムのシュート力、アップテンポな展開への適応力など、アンソニーがバックスのテンポアップに貢献できる局面は多い。リラードとの併用やセカンドユニットの司令塔としての活躍が期待されている。

NBAのPG市場と将来展望──アンソニーの立ち位置


現在のNBAでは、大型ガードや2ポジション対応型のガードが主流となりつつある中で、アンソニーのような 純PG寄りのスコアラー は立場が難しくなっている。しかし、プレーオフ経験が豊富で、ローテーションプレイヤーとして確実な数字を残せる選手は重宝される傾向にある。
アンソニーにとってバックスでの一年は、キャリアを再評価させる 勝負の年 となるだろう。もしここで結果を残せれば、来季以降の中長期契約や、より大きな市場への移籍も見えてくる。逆にローテ落ちや怪我があれば、Gリーグや海外リーグへ進む可能性もゼロではない。

まとめ:GL3x3視点で見る 移籍劇 の注目ポイント

今回のコール・アンソニーの移籍劇は、3×3バスケ界にとっても無関係ではない。フィジカルとスピードを兼ね備え、個で打開できる能力を持つ彼のような選手は、FIBA 3×3でも活躍できるポテンシャルがあるからだ。将来的にNBAでポジションが限られた際、3×3へ転向するNBA経験者も増える可能性がある。
また、NBAにおける 再起を図るプレイヤーの動向 は、3×3との親和性が高く、GL3x3としても注目したいトピックだ。アンソニーの挑戦は、今後のガード市場の行方を占うひとつのモデルケースとして捉えることができるだろう。

ライアン・ロリンズがミルウォーキー・バックスと3年約17億円で再契約|急成長中の若手ガードが主力定着へ

ライアン・ロリンズが3年約17億円でバックスと再契約|成長著しい若手PGに長期投資

2025年7月7日(現地時間6日)、NBAのミルウォーキー・バックスがライアン・ロリンズとの再契約に合意したと『ESPN』が報じた。契約期間は3年間、総額1200万ドル(約17億5200万円 ※1ドル146円換算)で、3年目にはプレイヤーオプションが付与されている。

23歳となったばかりのロリンズにとって、この契約はキャリア初の安定的な複数年契約となり、NBAでの地位を確立する大きな一歩と言える。2024年に本契約を勝ち取ったばかりの彼が、なぜここまでの評価を得るに至ったのか。その成長とバックスにおける立ち位置を紐解いていく。

ロリンズのキャリアの軌跡|ドラフト2巡目からの逆転劇

ロリンズは2022年のNBAドラフトで2巡目全体44位でアトランタ・ホークスから指名されるも、即座にゴールデンステイト・ウォリアーズへトレード。NBA入り初年度は強豪チームの中で限られた出場機会を得るにとどまり、翌2023年にはワシントン・ウィザーズへ移籍するも、プレータイムは不安定だった。

転機が訪れたのは2024年2月。ウィザーズからウェイブ(保有権放棄)された直後、ミルウォーキー・バックスと2ウェイ契約を結び、Gリーグとの兼用選手として出場。その後3月には本契約を勝ち取り、レギュラーシーズン終盤にはローテーションの一角に定着するなど、急成長を見せた。

2024-25シーズンのスタッツと飛躍

2024-25シーズン、ロリンズはバックスで56試合に出場(うち19試合で先発)し、平均14.6分の出場時間で6.2得点、1.9リバウンド、1.9アシストをマーク。スタッツだけ見ると目立たないが、フィールドゴール成功率48.7%、3ポイント成功率40.8%という高効率が評価を高めた。

特に4月の7試合では、出場時間が増える中で平均10.9得点、2.9リバウンド、4.0アシストを記録。フィールドゴール成功率53.7%、3ポイント成功率52.2%と高い精度を誇り、スターターとしても十分に機能することを証明した。

この一連のパフォーマンスが評価され、若手育成と同時に勝利を求めるバックスにおいて、ロリンズは 必要不可欠な戦力 として位置付けられることになった。

バックスのガード陣における立ち位置


バックスのバックコートには、ドリュー・ホリデー、デイミアン・リラードといった実力者が名を連ねていたが、リラードのケガによる長期離脱により、2024年シーズン中盤からロリンズが台頭する機会が生まれた。

結果としてロリンズはその期待に応え、セカンドユニットの司令塔としてだけでなく、試合展開によっては先発ガードとしても活躍。バックスが今後、リラードに代わる若手司令塔を育てるという長期的視点に立った場合、ロリンズはその最有力候補といえるだろう。

また、デフェンスでも193cmのサイズとウイングスパンを活かした対人守備に強みがあり、コンボガードとしての将来性も高く評価されている。

バックスの再編とロリンズへの期待

ここ数年、ミルウォーキー・バックスはヤニス・アデトクンボを中心としたチャンピオンシップ路線を維持しながらも、プレーオフでは3年連続で1回戦敗退を喫している。こうした結果を受けて、今オフは大胆なロスター再編を断行。

– 再契約:ボビー・ポーティス、ギャリー・トレントJr.、ケビン・ポーターJr.、トーリアン・プリンス
– 移籍:ブルック・ロペス(→クリッパーズ)
– 新加入:マイルズ・ターナー(←ペイサーズ)

このような流れの中で、ロリンズの再契約は単なる若手育成の文脈ではなく、戦力の中核へとステップアップを期待されてのものである。

本人と球団が見据える未来


バックスのフロントはロリンズとの再契約に際し、「彼はこの短期間で多くを証明した。ベテランと若手のバランスを取る我々にとって、ロリンズのような存在がチームの未来を繋ぐ橋渡し役となる」と高く評価。

一方、ロリンズ自身も再契約後のインタビューで「自分を信じてくれたチームに感謝している。この環境で自分の可能性を広げたい」と語っており、今後は自身の武器である ゲームリズムの読み や タフネス をさらに高めていく意向を示した。

まとめ:若き司令塔候補が手にした 3年の信頼

ライアン・ロリンズは、NBAにおいて決して恵まれたスタートを切ったわけではない。だが、その分 這い上がる力 と 準備された者 としての冷静さを武器に、バックスという強豪チームでの地位を確実に築いてきた。

3年17億円という契約には、単なる数字以上の「信頼」と「期待」が込められている。2025-26シーズン以降、バックスが本気でタイトル奪還を狙うなら、ロリンズの覚醒は必要不可欠だ。

新たなステージに進む若きガードの挑戦は、まだ始まったばかりだ。

マイルズ・ターナーがバックス移籍!リラード解雇の背景に2つのアキレス腱断裂の悲劇

マイルズ・ターナーがミルウォーキー・バックスと大型契約を締結

2025年7月2日、ミルウォーキー・バックスがフリーエージェント(FA)となっていたビッグマン、マイルズ・ターナーと契約を締結したことが明らかになりました。現地メディア『ESPN』の記者シャムズ・シャラニアによれば、契約内容は4年総額1億700万ドル(約153億円)で、最終年となる2028-29シーズンはプレイヤーオプションが付帯しています。

ターナーはこれまでインディアナ・ペイサーズ一筋でプレーしてきた中心選手であり、今回の移籍はリーグ全体に衝撃を与えるニュースとなりました。

ペイサーズ残留を望んだターナー、チームの方針転換で決断


ターナーは2015年NBAドラフトで全体11位指名を受け、ペイサーズに入団。以降10シーズンにわたり同チームで活躍し、2019年・2021年にはリーグのブロック王に輝いた実績を持ちます。守備においては屈指の存在感を放ち、「ペイント内の番人」として高く評価されてきました。

そんなターナー自身は、ペイサーズ残留を強く希望していたとされますが、主力ガードであるタイリース・ハリバートンがアキレス腱断裂という重傷を負い、長期離脱が確定。これを受けて球団は再編とラグジュアリータックスの回避を優先し、方針を転換。ターナーとの再契約交渉は打ち切られる形となり、FA市場での移籍が現実となりました。

ターナーの加入でフロントライン強化を図るバックス

ターナーが加わることで、バックスのフロントコートはさらに強固なものとなります。彼のリムプロテクト能力やピック&ロールへの対応力、さらには3ポイントシュートも放てる現代型センターとしての万能性は、ヤニス・アデトクンボとの共存にも適しており、大きな武器となるでしょう。

バックスは2024-25シーズンに『NBAカップ』を制覇するなど高い競争力を誇りましたが、さらなるタイトル獲得を目指してロスターの再構築を急いでいます。その中心に据えられるのが、ターナーの存在というわけです。

リラード解雇の衝撃:アキレス腱断裂が引き金に


今回のターナー獲得にあたり、バックスはキャップスペース確保のため、デイミアン・リラードを解雇するという衝撃的な決断を下しました。2023年にポートランド・トレイルブレイザーズからバックスに移籍したリラードは、加入直後からアデトクンボとともにチームの中核を担い、『NBAカップ』制覇にも貢献しました。

しかし、2025年3月に深部静脈血栓症と診断され離脱。その後プレーオフ第1ラウンドで復帰するも、第4戦でアキレス腱を断裂するという不運に見舞われました。これにより長期離脱が決定的となり、バックスは将来を見据えた戦略として彼を放出する判断を下したとされています。

リラードとの契約残額は5年分割で支払いへ

リラードとの契約はまだ2年1億1300万ドル(約162億円)分が残っており、バックスはこの金額を今後5年間にわたって分割して支払うことになりました。サラリーキャップに対する影響を抑えつつ、戦力の若返りと再構築を進める方針が浮き彫りとなった形です。

一方で、リラード自身が完全復活した際には再びリーグのトップレベルで活躍する可能性も高く、今後の去就にも大きな注目が集まっています。

2人のビッグネームに共通するアキレス腱断裂という不運

今回の動きで特筆すべきは、マイルズ・ターナーとデイミアン・リラード、そしてタイリース・ハリバートンといった主力選手たちが相次いでアキレス腱断裂という重傷に見舞われたことです。この“負傷ドミノ”が、チーム編成に大きな影響を与え、連鎖的にFA市場やキャップ運用にまで影響を及ぼしました。

いずれの選手もチームの中心であり、かつてのNBAを牽引してきたスターであるだけに、その離脱と移籍劇はファンにとっても衝撃的な出来事でした。

バックスの今後は?アデトクンボ&ターナー新体制に注目

リラードを放出し、マイルズ・ターナーという新たなピースを得たバックスは、ヤニス・アデトクンボを中心に新たな体制を構築しようとしています。サイズと機動力を兼ね備えたターナーは、ディフェンスの要として機能することが期待されており、攻守両面での相乗効果が注目されます。

また、若手選手の成長も重要な要素となりそうです。ターナーの加入によって、内外でのバランスが整い、より多様な戦術が可能になると見られています。

スター選手の去就がチームの命運を左右する時代へ


今回の一連の動きは、現代NBAにおいてスター選手の去就がいかにチームの将来を左右するかを如実に示した例となりました。1つの負傷が複数の移籍・解雇・契約構造にまで波及するという現象は、今後も続く可能性があります。

ミルウォーキー・バックスとマイルズ・ターナーの新たな挑戦、そしてリラードの再起に、多くのバスケットファンが注目する2025−26シーズンとなりそうです。