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【Wリーグ/東京羽田ヴィッキーズ】Wリーグ唯一の東京都クラブが歩んだ半世紀:歴史・戦術・選手名鑑と今季展望

ニュース概要

東京羽田ヴィッキーズは、東京都大田区をホームタウンとする女子プロバスケットボールクラブで、Wリーグ(プレミア)に所属する。起源は1971年の荏原製作所女子バスケットボール部にさかのぼり、チーム名は「荏原製作所ハローヴィッキーズ」「エバラヴィッキーズ」「羽田ヴィッキーズ」を経て、2017年に「東京羽田ヴィッキーズ」に改称した。現在の運営法人は一般社団法人羽田ヴィッキーズ女子バスケットボールクラブ、ホームアリーナは大田区総合体育館(収容4,012人)。チームカラーはブルー、ヘッドコーチは萩原美樹子。

背景と歴史的文脈

日本女子バスケットのトップリーグは1990年代以降、企業実業団を母体とするクラブが多い中、東京羽田は地域密着型のプロクラブとして独自のポジションを築いてきた。1970年代は関東実業団で基盤を整備、1990年には社内後援会発足で強化を加速。2001年に当時のWJBLへ新規参入し、以後トップカテゴリーでの歴史を重ねた。

2012年、WJBL再編で「Wリーグ」へ移行すると同時に、運営を一般社団法人化。2013年には「羽田ヴィッキーズ」へ改称して地域密着を鮮明化し、2017年には「東京羽田ヴィッキーズ」へ。東京都で唯一のWリーグ所属クラブとして、行政・企業・学校との連携やクリニック、PR活動を積極展開してきた。2012年から「大田区観光PR特使」に任命され、スポーツ領域からの初選出という点でも象徴的である。

選手・チームのプロフィール

現行ロスター(抜粋):

  • PG:本橋菜子(1.64m)— 日本代表経験を持つゲームメイカー。東京五輪で銀メダル獲得メンバー。
  • PG:軸丸ひかる(1.68m)— ボール運びとペースコントロールに長ける。
  • SG:洪潤夏(1.78m)— ハンドラー兼フィニッシャー。ピックからのプルアップに強み。
  • SF:加藤優希(1.79m)— サイズと走力を活かすウィング。トランジションの先頭を走る。
  • PF:星澤真(C)(1.82m)— キャプテン。リバウンドとスクリーンの質で攻守を安定化。
  • PF:森美麗(1.80m)— 若手の伸びしろ。ストレッチ志向の4番候補。
  • C:栗林未和(1.88m)— ペイントの要。ハイローでのタッチと守備の存在感。
  • その他:岡田真那美千葉歩水野菜穂穴澤冴津村ゆり子吉田沙織高原春季 など。

コーチングスタッフは、ヘッドコーチに萩原美樹子(元女子日本代表)。アシスタントに岩下桂太。フロントは一般社団法人として地域連携とトップチーム運営を両立させる体制をとる。

試合・出来事の詳細

近年のハイライトは、2017年のプレーオフ進出(クラブ史上初の二桁勝利で到達)、2018年の本橋菜子の日本代表選出とFIBAワールドカップ出場、2019年のWリーグでクラブ史上初のプレーオフ勝利と最終6位。2019年女子アジアカップで本橋は得点王・アシスト王・MVP・オールスター5選出と国際舞台で突出した活躍を見せ、クラブの知名度を国内外で押し上げた。

リーグ成績のトレンドは、下位~中位で粘るシーズンが多いが、要所でのアップセットと育成の積み上げが特徴。2023-24はレギュラーシーズン10位、皇后杯は4回戦進出。長期目標はプレーオフ常連化と上位定着で、ホームアリーナを核に観客動員と収益モデルの強化も併走している。

戦術・技術・スタイル分析

萩原HC体制のヴィッキーズは、「ボールプレッシャーと共有」「走力ベースのトランジション」「ハーフコートでの多角的ピックアクション」を三本柱に据える。守備では、1番~3番のチェイス&リカバリーを徹底し、ハイサイドのヘルプ&ローテーションを素早く回す。オフェンスは本橋のP&R(主にハイP&RとサイドP&R)を起点に、弱サイドの45度とコーナーを埋めるスプリットやショートロールを多用。栗林のハイポでのハンドオフやリフトにより、スペースを確保しつつウィングのドライブラインを創出する。

セットの一例:

  • Horns 45 Split:2ビッグをエルボーに置き、PGの進入後に45度でウィング同士がスプリット。ディフェンスがエルボーに収縮した瞬間、弱サイドのコーナーキックアウトまたはショートロールでミドルに打点。
  • Spain P&R Variation:P&R背後に3人目が背面スクリーン(Spain)を入れてリム直行。相手がスイッチを選ぶと、ポストのミスマッチ攻略とコーナーへキック。
  • Early Drag:トランジションでのドラッグスクリーンから、早い段階でペイントにアタック。セカンダリーでトレイラーのビッグがリターンを受ける。

3×3的エッセンス(短い間合い、素早い意思決定、連続的ドリブルハンドオフ)は5人制にも移植されており、ロースコアゲームでもシュートエクスペクテッド(質の高い2P、オープンスリー、FT獲得)を伸ばしやすい設計だ。

ファン・メディア・SNSの反応

大田区を中心とする地元ファンの結束は強く、SNSでは「#Vickies」「#羽田からWへ」といったハッシュタグが定着。ホームの大田区総合体育館では、選手のプレーだけでなく、子ども向けの体験イベントや地域コラボのブース出展が賑わい、観戦文化が着実に醸成されている。選手の人柄やコミュニケーションも可視化されやすく、若年層・ファミリー層に拡散しやすい構造ができつつある。

データ・記録・統計情報

  • 創設:1971年(企業チーム)/2001年WJBL参入、2012年Wリーグ移行。
  • ホーム:大田区総合体育館(4,012人)。東京都内・関東近郊でもホームゲームを実施。
  • 主要タイトル:国体優勝1回(2008年、東京都代表)。
  • 個人賞:フリースロー成功率(2013-14 稲本聡子、2017-18 森本由樹)、新人王(2018-19 鷹𥖧公歌)。
  • 過去の主なHC:丸山健治/坂根茂/桑田健秀/外山英明/星澤純一/古田悟/棟方公寿/萩原美樹子。
  • ユニフォーム:サプライヤー PENALTY。前面スポンサーに荏原製作所、ミンカブ・ジ・インフォノイド、背面に水ing。

リーグ全体への影響と比較分析

Wリーグは企業母体のクラブが多数派で、地域プロ型は少数だ。東京羽田は「首都・東京 × 地域密着 × プロ運営」という希少なモデルで、バスケットボールの社会的接点を広げる役割を担っている。強豪のENEOSサンフラワーズやトヨタ自動車アンテロープス、富士通レッドウェーブとの比較では、資本・層の厚みで劣る局面もあるが、機動力と選手育成、ファン関与の深さで補完し、プレーオフ定着を現実的なマイルストーンに置く。

商業的視点では、首都圏でのスポンサーアクティベーション、女性アスリートのロールモデル化、学校・企業・自治体連携のクロスセクター型施策など、バリューチェーン拡張の余地は大きい。これはWリーグ全体の市場拡大にも寄与し得る。

今後の展望とまとめ

短期的な鍵は「ターンオーバー抑制」「FT獲得増」「3Pアテンプトの質量向上」。本橋—栗林のP&R軸に、洪・加藤らのウィングがペイントタッチを増やせるかが勝率を左右する。中期的には、U22~大学年代の育成連結を強化し、ロスターの平均サイズを微増させつつ、守備の対人強度を維持することが重要だ。

半世紀を超える歴史を持ちながら、東京羽田ヴィッキーズは常に「地域からトップへ」という原点を磨き続けてきた。勝敗の先にある“街のクラブ”としての意味を体現できるか—。ファンの声援とともに、その挑戦は続く。読後に感じた思いや推し選手、観戦記は、ぜひSNSで共有してほしい。#東京羽田ヴィッキーズ #Wリーグ #Vickies

【Bリーグ/横浜エクセレンス】徹底ガイド|B3優勝からB2復帰へ──歴史・ロースター・横浜武道館時代の戦略を総まとめ

ニュース概要|横浜エクセレンスがB3優勝を経てB2復帰へ

横浜エクセレンス(Yokohama Excellence、以下「横浜EX」)は、2024-25シーズンのB3で45勝7敗(勝率.865)と圧巻の成績を残し、優勝とともにB2復帰を果たした。ホームタウンは神奈川県横浜市。ホームアリーナは中区の横浜武道館で、2025-26シーズンはB2東地区での戦いに臨む。クラブは2012年創設の「東京エクセレンス」を前身に持ち、横浜移転(2021-22)を機にブランディングを再構築。チームカラーのEX GREENと「LIGHT UP FOR EXCELLENCE!」のスローガンを掲げ、地域密着と競技力向上の両立を進めてきた。

本稿はWikipedia情報を基礎としつつ、編集・再構成による解説記事として、横浜エクセレンスの歴史・成績推移・ロースター構成・運営体制・スポンサー/マスコット・開催アリーナを俯瞰し、B2復帰後に求められる戦術的/経営的ポイントを整理する。

背景と経緯|東京エクセレンスから横浜エクセレンスへ

母体は2002年にスポーツドクター辻秀一氏の手で創設されたクラブチーム「エクセレンス」。NBDL期には3連覇(2013-14/2014-15/2015-16)を達成し、下部リーグで存在感を高めた。Bリーグ創設後はB2配置(2016-17)からのスタートだったが、ホーム基準(3000人規模アリーナ)を満たせずライセンス不交付となりB3降格という苦い経験を持つ。その後、2018年に加藤製作所が運営会社を子会社化、2019年にはB3年間1位で自動昇格を勝ち取りB2へ返り咲いたものの、再びホームアリーナ計画が頓挫し、2度目のライセンス不交付でB3に戻る。

この揺り戻しを断つべく、クラブは2021-22に横浜市へ移転。B2基準を満たす横浜武道館をホームとし、ブランディングを横浜仕様に刷新。横浜ビー・コルセアーズとのホームタウン棲み分け(横浜EXは南部エリア中心)を明確化し、地域連携を強化した。2024-25のB3優勝でB2復帰資格を得た現在、クラブ史に二度刻まれた「ライセンス不交付」というリスク要因を克服する体制が整いつつある。

選手・チームのプロフィール|2025-26ロースターの骨格と強み

2025-26の横浜エクセレンスは、ガードの機動力+ストレッチ可能なビッグという現代的な構成。PG/SGラインは複数のボールハンドラーを揃え、テンポコントロールと外角火力を両立させる設計だ。

  • バックコート:板橋真平(PG/168cm)、ディクソンJrタリキ(PG/181cm)、西山達哉(PG/172cm)、大橋大空(PG/165cm/キャプテン)、永野威旺(G/178cm)、杉山裕介(SG/183cm)など、小柄だが推進力と意思決定に優れたハンドラーが多い。
    米系のトレイ・ボイドⅢ(SG/193cm)がスコアリングの核になりうる。
  • ウイング/フォワード:木下大南帆(F/192cm)、ザック・モーア(SF/198cm)。機動力とサイズを活かし、トランジション/セカンドユニットの安定剤として期待。
  • ビッグマン:ベンジャミン・ローソン(C/216cm)、カリム・エゼディン(F/C/206cm/アジア枠)、エライジャ・ウィリアムス(PF/201cm)。
    ローソンの長身はリムプロテクトとハイローフィードで効く。エゼディンはスクリーナー兼ロール/ショートロールの起点として、ウィリアムスはフィジカル&ミドルで起点を担える。

指揮官は河合竜児HC。アシスタントに玉城理規、S&Cに冨樫司、トレーナーに大野夢実、通訳兼マネージャーの安喰淳平、アナリストの川本貴和子と、現場機能が整理されている。B3優勝の再現性をB2で示すうえで、守備規律とラインナップ最適化が鍵を握る。

試合・出来事の詳細|成績トレンドと横浜武道館運用

成績推移を見ると、B3では2018-19:32勝4敗(優勝)2024-25:45勝7敗(優勝)と「勝ち切る年」の再現性がある。一方で、B2基準のホーム確保不備により二度の降格を経験したのが難点で、施設計画と競技成績のアラインメント不全がクラブの構造課題だった。横浜移転後は、横浜武道館という明確なホームフォーマットを得たことで、演出/導線/販売の標準化が可能に。2022-23には横浜武道館でプレーオフを3試合開催するなど、“アリーナで魅せる”勝ち筋を強化している。

開催アリーナの歴史を振り返ると、東京EX時代は板橋・立川・練馬・八王子などに分散していたが、横浜移転以降は横浜武道館が主戦。平塚・座間・横須賀など県内サテライト開催の実績もあり、南部エリア中心の地理戦略が明確化された。

ブランド/スポンサー/マスコット|共創型アクティベーションへ

2025-26シーズンのユニフォーム関連は、サプライヤー:ペナルティ。スポンサー枠は前面・背面・パンツに横浜市、三菱地所、加藤製作所、横浜武道館、銀座鮨あらい、TH弁護士法人などが並び、自治体×地場/全国企業の混成。単なる露出ではなく、試合当日や地域イベントと連動した活用(アクティベーション)が企図されている。

マスコットは二人体制の「ピック&ロール」(背番号45と80)が2023年から稼働。NBDL/東京EX期のtex(テックス)は2019年に活動を停止し、横浜EXの世界観に合わせた新コンセプトへ移行した。ロゴは横浜発祥の「ガス灯」モチーフで、“LIGHT UP”の物語をアリーナ体験全体に織り込む。

他事例との比較・分析|B2で定着するためのゲームモデル

B2定着のポイントは、守備効率の底上げ・DREB%の安定化・TOV%の縮小・3Pの質(オープン比率)の確保に集約される。横浜EXは小柄で敏捷なガードと、長身リムプロテクター/ストレッチPF/Cの組み合わせを持つため、以下のゲームモデルが理想解だ。

  • ハーフコート攻撃:ハイ/サイドPnRを主軸に、ローソン/エゼディンのスクリーン角度と大橋・板橋のハンドラーリズムでペイントタッチを増やす。弱サイドは45度のシェイク/リロケートでキックアウト動線を短くし、ボイドⅢ・杉山・モーアのキャッチ&シュートを最大化。
  • トランジション:守備リバウンドから2タッチ目で前進、押し切れない場合は早い2ndエントリー(Horns/5-out)でショットクオリティを担保。ポゼッション価値の下がる無理打ちは避け、“良い早打ち”の定義を徹底。
  • PnR守備:基本はドロップ+ボールサイドナビゲート、相手のパススキルに応じて弱サイドのタグ/スクラムを明確化。相手のコーナー3を最重要脅威とし、ローテの優先順位を全員に浸透。
  • ファウルマネジメント:ローソン/エゼディンのファウルトラブルは構造的な敗因になりうる。ポジション取りの先手と、縦ドライブの角度管理で接触/リーチを減らす。

経営面では、横浜武道館を核に“ホーム体験の標準化”(演出・飲食・グッズ・ファン交流導線)を進めるほど、勝率×動員の相関が強まる。他クラブの成功事例では、学校連携・地域祭事・企業福利厚生観戦の三本柱が来場動機の分散と底上げに寄与している。横浜EXはスポンサー/自治体が厚く、南部エリアの生活導線に寄り添った施策を積み上げやすい。

経営・組織ガバナンス|“ライセンス不交付”の歴史を教訓に

横浜EXは過去に2度のライセンス不交付を経験している。要因は主としてホームアリーナ基準とのミスマッチだった。横浜移転後は基準適合施設=横浜武道館に拠点を一本化し、B2以上で戦う前提を固めた。将来的な横浜BUNTAI活用の構想も掲げられており、施設計画とカテゴリーの整合性を保つことで、“昇降格の揺り戻し”を避けることが可能になる。

運営法人は株式会社横浜エクセレンス。代表は桜井直哉。事業はバスケットボールクラブ運営、プロスポーツ興行、グッズ/写真/映像等の企画・販売。一般社団法人EXSCはスポーツクラブ運営や指導者育成を担い、教育・地域事業のハブとして機能する。競技・興行・育成の三位一体は、ホームタウン密着の質を高める中長期戦略の要だ。

年表ダイジェスト|主要トピック早見

  • 2012年:東京エクセレンス創設。
  • 2013-16年:NBDLで3連覇
  • 2016-17年:B2配置→ライセンス不交付でB3降格。
  • 2018年:加藤製作所の子会社化/専用練習場「KATO FACTORY ARENA」稼働。
  • 2018-19年:B3優勝→B2自動昇格。
  • 2019-20年:アリーナ計画頓挫で2度目の不交付、B3へ。
  • 2021-22年:横浜移転/横浜武道館をホームに。
  • 2024-25年:B345勝7敗優勝、B2復帰へ。

KPIと実装順|B2で“勝ち続ける”ためのチェックリスト

  1. 守備効率の中位以上化:DREB%とコーナー3被弾率を最優先KPIに。
  2. ペイントタッチの増加:ハンドラーのPAINT侵入→ショートロールの起点化。
  3. 3Pの質:キャッチ&シュートのオープン比率を可視化し、個人/ラインナップ別に最適化。
  4. TOV%の縮小:クラッチ時の意思決定ルール(初手のプレータイプ)を統一。
  5. ホーム体験の標準化:演出・飲食・動線・交流をテンプレ化し、セールスと勝率の相関を強化。

今後の展望とまとめ|横浜エクセレンスがB2で示すべき“再現性”

横浜エクセレンスは、NBDL期の勝ちグセ、B3での勝ち切る力、そして横浜移転によるホーム基盤の安定を手に、B2で「再現性のある勝利」を示す段階に入った。小柄なガード群と長身ビッグの組み合わせはB2でも戦えるポテンシャルがあり、守備とショットクオリティの徹底で接戦勝率を積み上げたい。運営面では横浜武道館を核に、学校・企業・自治体と連動した共創型アクティベーションで来場理由を多層化し、動員×勝率の好循環を作ることが重要だ。

横浜エクセレンスの物語は、ライセンス不交付→再起→B2復帰という稀有な軌跡でもある。次なる章は“定着”と“挑戦”の両立。気になる方は公式サイトやSNSで最新リリースをチェックし、横浜武道館でのホームゲームに足を運んでほしい。感じたことをシェアする一言が、クラブの次の一歩を明るく照らす。