ニュース概要
京都ハンナリーズ 2025-26は、B1西地区での再構築フェーズに入った。2024-25に勝率.550(33勝27敗)で反発し、新B1(B.LEAGUE PREMIER)初年度参入の切符を掴んだ流れを土台に、今季は伊佐勉HCが就任。エースの移籍や負傷者の発生といった逆風がある一方で、経験値の高いウィング/ビッグの補強とゲームマネジメントの明確化によって、「守備の再現性 × クラッチの最適化」という現実的な勝ち筋を探るシーズンとなる。本稿では、背景・編成・プレースタイル・他事例比較までを立体的に整理し、京都ハンナリーズ 2025-26の競争力を検証する。
背景と経緯
クラブは2008年創設。bjリーグ期には2011-12〜2015-16で上位常連となり、B.LEAGUE発足後は波を伴いながらも地域密着で事業と成績の両輪を回してきた。B1移行後は2017-18に地区2位でCS進出を果たしたが、以降はコーチ交代や主力入れ替えが続き、2021-22は14勝43敗と苦戦。2022-23のロイ・ラナ体制で運営・動員を持ち直し、2023-24は入場者記録を複数回更新しながらも17勝43敗。再編期の2024-25は一転して33勝27敗(西3位)と明確に反発し、新B1参入決定で中長期の足場を固めた。
2025-26は現行レギュレーション最終年。フロントは役割再編を行い、伊佐勉HCの下で「守備と意思決定」を軸に再スタート。開幕戦は白星で入ったものの、その後4連敗、さらに主力の負傷や契約変更が重なり、序盤はリズムを崩した。ここからの巻き返しには、ラインナップ最適化と終盤の意思決定の標準化が不可欠となる。
選手・チームのプロフィール
ホームタウンは京都市。運営はスポーツコミュニケーションKYOTO株式会社。クラブカラーは浅葱からアップデートされたハンナリーズブルー(花浅葱)。ホーム会場は京都市体育館(通称の変遷あり)を中心に運営し、将来的には向日町エリアの新アリーナ計画(収容8,000人規模想定)がクラブ価値を押し上げる見込みだ。
スタッフ体制(2025-26)
- ヘッドコーチ:伊佐勉(バスケットIQの高いセット運用と守備の整流化に定評)
- AC:福田将吾/上杉翔/内木主道/ディベロップメント:遠藤将洋
- GM:組織再編の下で実務と現場の連携ラインを短縮。補強は即戦力と適合性を重視。
ロスター主要構成
- インサイド中核:チャールズ・ジャクソン(#10 C)、ジョーダン・ヒース(#35 F/C)――ペイント決定力とリム守備で土台を形成。
- 万能フォワード:アンジェロ・カロイアロ(#32)――戦術リテラシーが高く、ショートロール〜ハイポストで潤滑油。
- スコアラー/フィニッシャー:チェハーレス・タプスコット(#11)――ハーフコートの停滞を個で破砕可能。
- ウィング&3&D:古川孝敏(#51)、前田悟(#13)、ラシード・ファラーズ(#24)、ホール百音アレックス(#39)――サイズと射程で幅を作る。
- ハンドラー:川嶋勇人(#15)、小川麻斗(#12)、澁田怜音(#3)、渡辺竜之佑(#16)――ゲームコントロールとペース創出を分担。
- ベテランの知見:小野龍猛(#0)――ラインナップの秩序とロッカールームリード。
キーワードは、京都ハンナリーズ 2025-26の「守備の基準化」と「クラッチの省略化」。最小のパス数で良いショットを得る0.5 decision、守備はno-middle徹底とtag→x-outの自動化で被ミスマッチの連鎖を断つ。
試合・出来事の詳細
開幕〜序盤:ホームで好発進後に連敗。要因は主に(1)ローテ未確定によるベンチ時間帯の失点増(2)クラッチでのターンオーバー(TOV%上振れ)(3)相手のドロップ/ディープドロップに対し、ミドル止まりでeFG%が伸びなかったこと。対策として、ダブルドラッグ→ショーティック、ヒースorカロイアロのショートロール→弱サイドスタック解放を増やし、最終5分は2メンの固定化(PG×C)で判断のレイヤーを削ぐ方針が有効。
セットプレーの基調:
- Horns DHO split:ハイポスト2枚からのハンドオフ→スプリット。ウィング背後のshakeでコーナーの射角を確保。
- Spain PnR:背中スクリーンの活用で5番のロール経路を解放。古川/前田のポップ脅威で守備を引き伸ばす。
- Elbow get:カロイアロ起点。ショートロール後に角(コーナー)→45度→トップの順で読み、最初のイージーを取り切る。
守備の骨格:
- no-middleの徹底でベースライン誘導。タグ位置はnail優先、Xアウトの最短距離化。
- 相手のghost screen対策に、ハンドラーの主導権をtop lockで削ぐ。スイッチ後のミスマッチはearly digで時間を食わせる。
- ディープドロップ相手には、PnRハンドラーのフローターとショーティック成功率を指標化し、基準未満なら即empty cornerに切替。
特殊状況(ATO/クラッチ):
- ATOは3本柱:①Spain PnR(古川ポップ/ジャクソンロール)②ベースラインアウトはstackからのrip③サイドラインはIverson cut → elbow。
- クラッチの省略化:first good shot is best shotの原則で、レイヤーを重ねない。PG×Cの2メンに3枚のspacing wingを合わせる。
他事例との比較・分析
西地区上位は「守備効率の再現性」と「ベンチ時間帯の微差管理」で勝率を積む。京都の強みは、(A)サイズの二段構え(ジャクソン+ヒース)によるペイント制圧、(B)シューター/ファシリテーターが同時に2枚以上立つ時間帯を作れる編成幅、(C)ベテランの試合運びだ。一方、弱点は(a)ハンドラーデプスのムラ(TOが得点直結しやすい)と、(b)foul trouble時のサイズ維持、(c)drop相手に中間距離へ誘導される時間が長い点。
KPIの目安(内部指標として設計したいライン):
- Half-court D Rating:リーグ上位1/3(失点PPPで昨季比1〜2%改善)。
- ClutchのTOV%:昨季比-1.5pt。ATO後初手の成功率55%ラインを目安。
- Bench Net Rating:-1.0以内。タプスコット+ヒースの同時稼働で+に転じたい。
- OR%(攻撃リバウンド):状況限定で20%台前半を確保(トランジションリスクとトレード)。
これらは公開スタッツとクラブ内トラッキング(ラインナップ別on/off、プレータイプ別PPP)でモニタ。特にSpain PnR採用時のPPPとempty corner PnRのTO率は週次レビューの必須指標だ。
今季の要所(年表的整理)
- オフ〜開幕:主軸の移籍でスコア配分を再編。伊佐新体制でセット群を再設計。
- 序盤:負傷・契約変更でローテ揺れ。ハンドラーローテ(川嶋/小川/澁田)を固定化しリズム回復を図る。
- 中盤:ヒース合流とタプスコット起用最適化で、five-outと4-out-1-inを相手スキームで使い分け。
- 終盤:クラッチの省略化と守備のテンプレ自動化で勝ち切り数を上積み、上位直対の白星を狙う。
データ・ロスター可視化
| カテゴリ | 主担当 | 補助 | 狙い |
|---|---|---|---|
| リム守備/リバウンド | ジャクソン/ヒース | ファラーズ/小野 | 被二次加点の抑制、セカンドチャンス創出 |
| スペーシング創出 | 古川/前田 | カロイアロ | ドロップへの外圧、Spainのポップ脅威 |
| クラッチ運用 | 川嶋/小川 | 澁田 | 2メン固定で判断省略化、ATOセットの標準化 |
| 停滞打開 | タプスコット | 百音アレックス | 個の創造性で0→1を生む |
他事例との比較・分析
西の強豪は、PnRのファーストリードで利得を出し切る意思決定が早い。京都はここを「ルール化」で補うべきだ。例:empty corner PnRで弱サイドのタグ禁止を徹底し、ロールマンへの1stリードを明確化。もしnailが早く閉じたら、逆サイドのshakeまでがプリセット。こうしたif-thenの明文化は、若手や新加入が多いロッカールームほど効きやすい。
また、特定相手のスキーム別ゲームプランを週単位で用意する。たとえば、ハードヘッジの相手にはショートロール→2対1の即時形成、スイッチ徹底の相手にはミスマッチ早期確定→角で時間を止めない。この「相手別の簡易辞書」を共有するほど、クラッチの迷いは減る。
今後の展望とまとめ
事業面では、新アリーナ計画と新B1参入で長期的なアセットが明確化。ホームコート・アドバンテージの強化、スポンサーとの統合施策(テーマナイター/学生・ファミリー導線の最適化/動線内体験価値)が、選手獲得力と勝率の双方に波及する。編成面では、インサイドの二段構えとベテランの試合運びで土台は堅い。課題はハンドラーデプスの安定とクラッチの省略化で、ここを詰められれば、上位直対でも勝ち切りが増える。
総括すると、京都ハンナリーズ 2025-26の鍵は「守備の再現性」「クラッチの最小手数」「ベンチ時間帯の微差黒字化」。Spain / empty corner / Hornsの3本柱を相手別に出し入れし、ジャクソン&ヒースの縦圧と古川・前田の外圧でスコアプロファイルを安定させれば、成績の目標ライン(勝率.500超〜.550台)に再接近できるはずだ。最後に――この記事が役立ったと感じたら、ブックマークやSNSで共有してほしい。小さな拡散が、京都のホームの熱量を確実に底上げし、B1西地区での存在感をさらに強くする。