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【Bリーグ/ライジングゼファーフクオカ】B2西を制して再起動:19連勝と43勝17敗の真因、B1昇格を逃した理由、そして福島雅人体制の課題

ニュース概要

ライジングゼファーフクオカは2024-25シーズンのB2西地区で地区優勝(43勝17敗, .717)。開幕2勝6敗からのクラブ新記録・19連勝で首位ターンし、プレーオフではQFで福井に2連勝。しかしSFで富山に2連敗し、7年ぶりのB1昇格は届かなかった。2025-26はアシスタントから昇格した福島雅人ヘッドコーチの新体制で再挑戦。ホームは照葉積水ハウスアリーナ(5,042席)を軸に、福岡市民体育館などを併用する。フロントはやずやがオーナー、代表は古川宏一郎。ロスターはベテランと即戦力をMIXし、デイボン・リードジャスティン・バーレルパブロ・アギラールサン・シャオ(アジア枠)會田圭佑西川貴之狩野祐介らが並ぶ。

背景と歴史的文脈

クラブの源流はJBLスーパーリーグ参入の福岡レッドファルコンズ(2005-06)に遡る。その後、ライジング福岡としてbjリーグに参加し、2012-13に準優勝。B.LEAGUE発足後はB3経由で2017-18にB2西優勝→B1昇格まで駆け上がった。だが2018-19のB1では運営課題が噴出。資金繰り難からライセンス不交付によるB2降格を経験し、多くの主力流出やフロントの再編など激しい揺り戻しを受けた。

以降は指揮官交代を経て、2023-24に37勝23敗(西3位)でPO復帰。そして2024-25に19連勝で西地区を制し、競技面の“再現性”を取り戻した。クラブは地域密着を掲げ、RsunZ(オフィシャルチア)やMC、マスコット神(ジン)くん、車いす部門のRizing Zephyr Fukuoka Wheelchairなど「一体のブランド」としての広がりを強化。B2西地区優勝の陰には、ホーム演出と営業の地道な積み上げがある。

選手・チームのプロフィール

2025-26の主要構成:

  • デイボン・リード(SF, 198cm):ウイングのファーストオプション。3&Dに加え、P&Rハンドラーも担えるコンボ性。
  • ジャスティン・バーレル(F/C, 204cm):ペイントの得点源。ショートロールからのミドルとフィジカルでFTを獲得。
  • パブロ・アギラール(PF, 203cm, C):キャプテン。ハイポスト配球、スペイン流のハンドオフ連鎖でリズムを整える。
  • サン・シャオ(C, 210cm, アジア枠):高さと及第点のタッチ。ドロップ守備の“最後の壁”。
  • 會田圭佑(PG, 183cm):ゲームマネージャー。TO%を抑え、テンポ管理に長ける。
  • 西川貴之(SF, 196cm):長射程のスナイパー。移動3やトレイル3で一気に傾ける。
  • 狩野祐介(SG, 184cm):判断の速いキャッチ&シュート。エンドゲームでの勝負強さは資産。
  • 青木龍史/村上駿斗/井手拓実:バックコートの厚み。2ndユニットでのボールプレッシャー係。
  • 寒竹隼人(C)/加藤寿一(C):クラブカルチャーを体現するベテラン枠。ロッカールームの“温度”を安定化。

ベンチは福島雅人HCを中心に、戦術の再現性と若手の台頭を両立させる方針。オーナー企業やずやの支援のもと、照葉積水ハウスアリーナの体験価値と勝敗をリンクさせる経営設計が進む。

試合・出来事の詳細

2024-25の“物語”を分解すると、①2勝6敗→19連勝という形で「規律の再構築→連鎖効率の最大化」が噛み合った。オフェンスはウイング主導のDHO(ハンドオフ)→P&R派生で、45度からのシェイク/リロケートを多用。守備はドロップ基調Xアウトを連続させ、コーナー3の被効率を管理した。QF福井戦は相手のP&Rに対してウィークサイドのタグトップ戻りの早さで封殺。だがSF富山戦は終盤のリムセーバー不足と、相手のセカンドチャンスを抑え切れず2連敗。“勝ち切る完成度”があと一歩だった。

ホームでは観客動員と勝率が連動。照葉の導線/音響/視認性がテンポの良い展開を後押しし、Q4のFT Rateコーナー3比率が上振れ。アウェイでは逆にTO発生後の失点期待値(efeet)上昇が課題として残った。

戦術・技術・スタイル分析

オフェンス:5アウト派生とツーマンゲームのハイブリッド。リードのハンドルからアギラールのハイポスト起点、もしくはバーレルのショートロールでペイントタッチを増やす。KPIは①ペイントタッチ回数、②コーナー3占有率、③FT Rate、④セカンドチャンス得点。サン・シャオ起用時はローポスト・ショートコーナーを使い分け、会田のスプリット/スネークでタグの遅れを誘発したい。

ディフェンス:基本はドロップアイス(サイドP&R)。ウイングのギャップ守備を深め、ローテーションの“終わり方”を統一する。Xアウト連鎖が長くなる局面では、トップ戻りの優先順位を徹底して、ロングクローズアウト→ドライブの負の連鎖を断ち切る。

トランジション:自軍はリム→外の原則(リムラン優先→トレーラー3)。被トラ時はセンターライン手前の1stブレイク阻止ラインを明確化し、ヒットアヘッドを寸断。ここでの1回目の接触(ファウルせず止める)が次の24秒を決める。

ファン・メディア・SNSの反応

19連勝のインパクトで、SNSは「ホームの熱気×勝率」を称える声が大勢。演出ではRsunZとMCの連携が定評で、神(ジン)くんの露出も増加。メディアは「ライジングゼファーフクオカの再浮上」をストーリーとして扱い、昇格未達の要因を「終盤のセカンドチャンス抑制とミス管理」に整理する論調が目立った。地域面では車いす部門の活動がクラブの社会的価値を底上げし、“観戦理由が勝敗だけではない”という好循環が形成されつつある。

データ・記録・統計情報

  • 2017-18:47勝13敗でB2西優勝、プレーオフ制覇→B1昇格。
  • 2018-19:B1(12勝48敗)。ライセンス不交付でB2降格。
  • 2023-24:37勝23敗(西3位)で6年ぶりPO/QF敗退。
  • 2024-25:43勝17敗(西1位)、19連勝、PO QF勝ち抜け→SF敗退。
  • ホームアリーナ:照葉積水ハウスアリーナ(5,042席)。福岡市民体育館(3,500席)等を併用。
  • 個人系の象徴値:外弾(3P)とFTの“二軸”でQ4の効率を押し上げ。ベテランの時間帯配分が勝敗の分水嶺。
  • クラブ史:bj準優勝(2012-13)/B2優勝(2017-18)/B1経験(2018-19)。

リーグ全体への影響と比較分析

B2西はここ数年で3Pアテンプト比率トランジション効率が上方シフト。上位クラブは例外なくTO%が低く、リム守備の再現性が高い。ライジングゼファーフクオカはウイングに得点源を置き、“確率で勝つ”設計を採用。B1昇格組との比較で不足したのは、ビッグラインナップ時のORB抑制クラッチのTO質。ここを埋めるのが福島雅人の最優先課題だ。

戦術トレンド的には、DHO→リピック→ショートロールからコーナー3の生成量で勝つ形が主流。富山に屈した局面は、逆サイドのギャップ詰めが浅く、Xアウトが一手遅れたことがトリガーだった。2025-26はローテの“終わり方”の標準化と、アジア枠(サン・シャオ)×バーレル×アギラールの組み合わせ最適化が順位を左右する。

今後の展望とまとめ

短期KPIは以下の通り:①被セカンドチャンス得点のリーグ中位以内、②クラッチ時TO%の顕著な低下、③コーナー3の試投比率増、④FT Rateの維持向上、⑤アウェイでのペース管理。運営面では、照葉の来場体験×勝敗の正相関をさらに強めつつ、新アリーナ計画と歩調を合わせた中期の収益設計が鍵になる。

クラブは過去にB2西優勝→B1→降格という激動を経験した。だからこそ、今度の目標は「昇格して終わり」ではない。ライジングゼファーフクオカがB1で持続的に戦うために、守備の再現性とミス管理という地味だが最重要の土台を積み上げられるか。この記事が参考になったら、ぜひ周囲に共有し、次のホームで声援を届けてほしい。B2西地区を制した“追い風”は、まだ止んでいない。