川崎が監督交代を決断──ネノ・ギンズブルグ体制がわずか1年で幕
B1東地区の川崎ブレイブサンダースは11月7日、ネノ・ギンズブルグヘッドコーチとの契約を双方合意の上で解除したと発表した。
シーズン序盤の13試合を終えて2勝11敗。勝率.154と苦戦が続く中、クラブはチーム再建に向けて大きな決断を下した。後任にはアシスタントコーチを務めていた勝久ジェフリー氏が昇格し、シーズン途中からチームを率いる。
ネノHCの経歴と退任までの経緯
ネノ・ギンズブルグHCはイスラエル出身の62歳。2013年から10年間チェコ代表HCとして指揮を執り、国際舞台でチームを安定的に上位へ導いた実績を持つ。2024-25シーズンより川崎に就任し、クラブ初の外国籍指揮官として注目を集めた。
しかし初年度は18勝42敗で中地区最下位。今季も開幕から波に乗れず、11月時点で2勝11敗と苦しいスタートとなっていた。チームの新戦術導入や選手層の再構築に時間を要したこと、主力の負傷離脱も重なり、クラブは早期のテコ入れを決断した。
ネノHCのコメント「この旅は早く終わったが、感謝でいっぱい」
退任にあたり、ネノHCは公式サイトで次のようにメッセージを残した。
「川崎ブレイブサンダースファミリーの皆さん、ありがとうございます。この旅は自分が望んでいたよりも早く終わることになってしまいました。それでも、選手、スタッフ、そして素晴らしいファンの皆さんからの信頼・サポート・情熱に心から感謝しています。どんなに苦しい時でも、皆さんのエネルギーが毎試合を特別なものにしてくれました。クラブの今後の成功を心から願っています」
勝久ジェフリー新HC「HARD WORK、TEAM WORK、RESPECTを大事に」
新指揮官の勝久ジェフリーHCは、岩手ビッグブルズやサンロッカーズ渋谷を率いた経験を持つ戦略家。2019年から川崎のACとしてチームに携わり、トム・ホーバスHCの日本代表でもアシスタントを務めるなど、戦術理解とチームマネジメントに定評がある。
就任コメントでは次のように語った。
「伝統あるクラブで指揮を執ることに身が引き締まる思いです。ネノヘッドコーチのもとで多くの刺激を受け、学んだことをチームの財産にしていきたいと思います。
これからはチームアイデンティティである『BE BRAVE』を体現し、HARD WORK・TEAM WORK・RESPECTを大切に戦います。苦しいスタートを切っていますが、ファミリーの皆さんに“応援してよかった”と思ってもらえるよう全員で戦います」
フロント陣の声明──「変革期にあるクラブの再構築」
北卓也GMは「ネノHCは速いペースのオフェンスの基盤を作ってくれたが、現状を打破するために交代が必要と判断した」と説明。
「勝久新HCには、そのベースを継承しつつ、ボールと人が連動するオフェンス、そして課題であるディフェンスの再構築を期待している」とコメントした。
また、川崎渉社長は「シーズン途中での交代は苦渋の決断。クラブの責任として、改めてファミリーの皆さまにお詫び申し上げる」と述べた。
川崎の現状分析──“攻撃の速さ”と“守備の脆さ”
川崎の今季序盤は、オフェンスリズムを重視するネノ体制の特徴が出ていた。ポゼッション数ではリーグ上位ながら、ターンオーバー率と被スティール率の高さが勝率を押し下げた。
一方で、ディフェンス効率はリーグ下位に沈み、終盤の失点が続いた試合も多い。“速さと連動性”をどうバランスさせるかが、勝久HCの初仕事となる。
選手陣の反応とチーム再出発
チーム内では、選手たちがSNSでネノHCへの感謝を綴る投稿が相次いだ。長谷川技・藤井祐眞ら主力も「悔しさを糧に前を向く」とコメント。ベテランと若手が混在する現ロスターをどう束ねるか、勝久HCのマネジメント力が問われる。
ファンコミュニティの声──「この苦境を乗り越えたい」
川崎ファンの間では「BE BRAVE」のスローガンを掲げ、クラブを支え続ける動きが広がっている。
SNSでは「勝久HCならチームを立て直せる」「ネノHCにも感謝を」といった声が目立ち、クラブへの信頼は揺らいでいない。
チーム一丸での再出発に、ブレイブサンダースファミリーの期待が高まっている。
今後の展望──チャンピオンシップ進出への再挑戦
クラブが掲げる今季目標は「チャンピオンシップ出場」。数字上は厳しいスタートだが、残り47試合での巻き返しは可能だ。
勝久HCは「1日ずつ、できることにフォーカスする」と語り、現場からの変革を誓った。
速攻とチームディフェンスを再統合し、“走る川崎”の再生が実現すれば、東地区での上位浮上も夢ではない。
まとめ|「BE BRAVE」の再定義
クラブスローガン「BE BRAVE」は、単なる言葉ではなく“逆境に立ち向かう覚悟”そのものだ。
2勝11敗という厳しい現実の中で、川崎ブレイブサンダースは新たな挑戦を始める。
ネノが築いた土台を受け継ぎ、勝久ジェフリーが描く新しいチーム像がどこへ向かうのか――。その答えは、次の試合から始まる。