Bリーグ」タグアーカイブ

河田チリジが三遠ネオフェニックスと契約!B1優勝経験を持つベテランがCS出場に向け新たな挑戦

三遠ネオフェニックスが河田チリジと契約!B1優勝経験を持つ帰化ビッグマンが加入

Bリーグの三遠ネオフェニックスが、広島ドラゴンフライズから自由交渉選手リストに公示されていた帰化選手・河田チリジと2025-26シーズンの新契約を結んだと、7月14日に発表した。この補強は、チームが継続的に掲げてきた「チャンピオンシップ(CS)出場」を現実のものとするための大きな一手となるだろう。

河田チリジのキャリアと実績

1989年生まれの河田チリジは、コンゴ共和国出身で、身長208センチ、体重122キロという恵まれた体格を持つインサイドプレイヤー。日本では2015年に熊本ヴォルターズでプロキャリアをスタートし、その後仙台89ERS、バンビシャス奈良、福島ファイヤーボンズなどを経て、2020年にB1昇格を目指していた広島ドラゴンフライズに加入した。

2022年に練習生として広島に復帰すると、2023年には日本国籍を取得。帰化選手としてチームの一員に登録され、2023-24シーズンにはB1リーグで悲願の初優勝を果たした広島のインサイドを支える存在となった。フィジカルを活かしたスクリーン、リムプロテクション、ハッスルリバウンドなどでチームに貢献し、献身的なプレーでファンの信頼も厚かった。

コンディション不良のシーズンを経て、新たな挑戦

とはいえ、2024-25シーズンは決して順風満帆ではなかった。負傷によって長期離脱を強いられ、インジュアリーリスト入り。B1のリーグ戦ではわずか22試合の出場にとどまり、平均出場時間も限られる中で3.1得点、3.3リバウンドという成績に終わった。チームとしての役割も縮小傾向にあった中、三遠が提示した新たな役割と環境が、河田にとって再起のチャンスとなる。

三遠ネオフェニックスが期待する役割とチーム方針

三遠ネオフェニックスは昨季B1中地区で好成績を残し、CS出場争いを繰り広げた。特にハードなディフェンスとトランジションバスケットを軸とするチームスタイルを持ち、近年は外国籍選手や帰化選手の起用を含め、戦力の多様化を図ってきた。

ゼネラルマネージャーの北郷謙二郎氏は「常にアグレッシブであることを意識し、インサイドで身体を張るプレーが彼の持ち味。彼の加入によって、ゴール下の守備力が大きく底上げされると信じている」とコメント。ベテランとしての経験値に加え、若手へのリーダーシップ的役割も期待されている。

河田チリジのコメントと今後の展望

河田はクラブ公式を通じて次のように意気込みを語っている。

「この素晴らしいチームの一員になれることをとても誇りに思います。三遠は近年、着実に力をつけてきましたし、その中で自分がCS出場のために全力を尽くせることに感謝しています。コートの中でも外でも、ファンの皆さんと強い絆を築いていけると信じています」

このコメントに表れているように、河田の目線はすでに次のステージに向いている。B1の舞台で再び輝きを放ち、三遠を上位へと導くキープレーヤーになることは間違いない。

類似の補強例とリーグ全体の動向

帰化選手による戦力補強はBリーグにおいて近年ますます注目を集めている。2023-24シーズンでは、広島のニック・メイヨ(元サンロッカーズ渋谷)、宇都宮のジョシュ・スコット(元東京)など、複数のチームが帰化選手の起用によってインサイドの補強に成功し、成績を伸ばしている。

三遠にとっても、今回の河田獲得は同様の文脈で捉えることができ、リーグ全体における競争力強化と戦略性が高まる一手となった。

ファンやメディアの反応

SNS上では、「チャンピオン経験ある選手が来てくれるのは大きい」「インサイドの厚みが一気に増した」など、歓迎ムードが高まっている。また、地元・浜松や豊橋のメディアもこの移籍を大きく取り上げ、地元経済や観客動員への影響も注目されている。

一方で、「昨季のような怪我が再発しないか心配」という声もあり、コンディション面の管理がチームとしての重要課題となりそうだ。

今後の鍵は 健康 と 連携

河田チリジが真価を発揮するための鍵は、やはり健康状態の維持とチームとの連携構築にある。特に三遠では若手選手が多く、ベテランの河田が練習や試合を通じてどのようにチームに溶け込んでいくかが注目される。

彼がゴール下で安定した存在感を発揮すれば、三遠のCS進出は大いに現実味を帯びてくるだろう。

まとめ:三遠の未来を支える経験と情熱

河田チリジの三遠加入は、単なるベテラン選手の補強ではない。Bリーグを長く経験し、優勝という結果も味わってきた彼が、チームにどのような 化学反応 をもたらすかが今後の注目ポイントとなる。CS進出、さらには頂点を見据える三遠にとって、彼の存在は大きな支えとなるに違いない。

今季の三遠ネオフェニックスは「経験×成長」の融合によって、B1の勢力図に新たな変化をもたらす可能性を秘めている。河田チリジがその中心人物となる日は、そう遠くない。

【Bリーグ/琉球ゴールデンキングス】完全ガイド:B1西の強豪が築いた「沖縄発・勝てるカルチャー」と経営モデル

ニュース概要

琉球ゴールデンキングスは、沖縄県沖縄市を本拠とするB1西地区の強豪クラブ。近年はリーグ戦、天皇杯、EASLを並走しながらも勝負強さと興行力を両立し、Bリーグでは2022-23に初優勝、2024-25は天皇杯で初戴冠、西地区でも再び頂点に立った。クラブの核となるのは、桶谷大ヘッドコーチが体現する堅守速攻のバスケット、沖縄サントリーアリーナを起点にした高密度のエンタメ演出、そして地域・企業・ファンを巻き込む経営基盤である。本稿では、歴史と経営、ロースター、試合運営、データ、将来構想までを俯瞰し、琉球がなぜ勝ち続け、愛され続けるのかを解説する。

背景と経緯

クラブは2007年に創設。bjリーグ参戦初期はアップテンポな志向と引き換えに波も大きかったが、2008-09に桶谷体制で初優勝を掴んで以降、戦術と規律を両立させる路線に舵を切った。2016-17のBリーグ発足に合わせてプラットフォームが変わると、ホームゲームの興行化をさらに推進。アリーナ常設の大型ビジョンや音響、沖縄カルチャーを取り入れた演出を強化し、観客動員と入場収入を着実に積み上げていく。

転機となったのが、1万人規模の沖縄アリーナ(現・沖縄サントリーアリーナ)の本格稼働だ。シーズン平均7000人級の動員に支えられ、2022-23にはB1最多の入場料収入を記録。女性ファン比率が高い客層構造や、シーズンシート運用、チケットレス入場、データドリブンなファンクラブ運営など、収益と満足度を両立する導線を磨き、クラブ総売上の大規模化へとつなげた。加えて、経営面ではプロトソリューション参画などの体制変化を通じ、地域×テクノロジーの相乗を高めている。

選手・チームのプロフィール

クラブカラーはシャンパンゴールド、スチールブルー、パールレッド。ロゴは龍頭をモチーフとし、琉球王国の歴史性を象徴する。マスコットはゴーディー。ヘッドコーチは桶谷大。アソシエイトヘッドコーチとして佐々宜央が復帰し、アシスタントにはアンソニー・マクヘンリーらクラブOBが参画。現行ロースターは岸本隆一、ジャック・クーリー、ヴィック・ロー、脇真大、ケヴェ・アルマ、小野寺祥太、松脇圭志らで、日本人ガードの判断力とインサイドの強度、ウィングのサイズと活動量のバランスが良い。

  • スタイルの核は堅守速攻と自陣リバウンドからのトランジション。ハーフコートでは2メンゲームとペリメーターの連動、コーナーの配置を重視し、終盤は岸本のショットクリエイトやローのミスマッチ活用で勝ち筋を引く。
  • メンバー運用は複線型。主力のコンディション変動に耐えるべく若手の台頭を促し、育成と勝利の両立を志向する。
  • カルチャーは規律と献身。ルーズボール、リバウンド、ハッスルを可視化して称揚し、ブースターと共有する。

試合・出来事の詳細

Bリーグ移行後の成績推移を見ると、2017-18以降は西地区首位の常連。2021-22は49勝7敗で地区優勝、ファイナル準優勝。2022-23は48勝12敗で初のBリーグ優勝を果たす。2023-24は過密日程と負傷者が重なる中でもファイナル進出を継続。2024-25はシーズン中の補強や若手起用を織り交ぜ、天皇杯初優勝と西地区制覇を同時達成した。

シーズン リーグ成績 CS結果 トピック
2021-22 西1位 49勝7敗 ファイナル準優勝 20連勝を含む圧倒的ペース
2022-23 西1位 48勝12敗 ファイナル優勝 Bリーグ初制覇、動員と収益もリーグ上位
2023-24 西2位 41勝19敗 ファイナル準優勝 EASLと天皇杯併走の中で勝負強さ維持
2024-25 西1位 46勝14敗 ファイナル準優勝 天皇杯初優勝、若手台頭と両立

ホームゲームは演出の完成度が高い。アリーナ内の映像・音響設計、沖縄民謡を取り入れたクラブテイスト、コートサイド席や視認性の高いサイネージなど、体験価値の細部に至るまで設計されており、初来場者でも直感的に没入できる。地域連携が深く、コンビニや商業施設とのコラボ、教育資材の共同制作、小学校への寄贈など、コミュニティの成功循環を築いていることも特徴だ。

他事例との比較・分析

琉球の特異点は三つある。

  1. アリーナドリブンの興行モデル。1万人規模のハコを前提に、チケット設計、アトラクション、飲食、物販、コミュニケーションを統合。女性比率が高い観客構成に合わせ、動線や演出を最適化することで、客単価と再来場率を両立している。
  2. 勝てるカルチャーの可視化。ハッスルや献身をインサイト化し、スタッツやハイライト編集で価値を翻訳。単純なスター依存でなく、ロール定義と遂行度で評価軸を共有している。
  3. ゲームプランの再現性。守備リバウンドからの一次加速、ハーフコートではシンプルな2メン連動とコーナーの脅威づくりを徹底。主力の欠員が出てもラインナップ調整で再現できる設計がある。

結果として、千葉やA東京などメガクラブと比べても、ホームの一体感とアジャスト力で劣らない競争力を維持。bj出自クラブとして初めてB制覇を達成した歴史性は、運営面の発明と戦術的再現性の両輪が噛み合った証左といえる。

データで読むキングス

  • 入場者数はBトップクラスを継続。平均7000人規模のシーズンも記録し、複数年で入場収入は大幅伸長。
  • CSは長期安定してベスト4以深。ファイナル常連化はリーグでも数少ない。
  • 攻守の肝はリバウンドとターンオーバー抑制。ポゼッションの非効率を最小化し、終盤のクラッチではペースコントロールとショットクオリティの担保を優先する。

運営・パートナーシップの要点

ユニフォームサプライはドーム(アンダーアーマー)。スポンサーは地域大手から全国ブランドまで幅広い。チケットはデジタル完結を推奨し、ファンクラブデータの活用でCRMを高度化。物販はオフィシャルショップとアリーナショップの二軸で、試合日の体験と非試合日の生活導線を接続する。地域連携として教育プログラムや店舗ラッピングなどを展開し、クラブ体験を街の至るところへ拡張している。

若手育成とローテーション設計

近年の沖縄は、短期の勝利と中長期の育成を併走させる設計に舵を切った。シーズン中でもユースや特別指定、育成枠を要所で実戦投入し、役割を明確化。ガードラインのボールプレッシャーやスイッチ後のミスマッチ対応など、試合でしか学べない強度に若手を慣らすことで、主力不在の穴を最小化する。これが過密日程や故障リスクが高いシーズンでの安定度に直結している。

ファン体験を磨く細部

  • 到着から退館までを一筆書きにする動線設計。入場直後に視覚ハイライトが入り、試合間の演出で滞在価値を上げ、退場動線で物販や次戦告知へ誘導する。
  • ブースターの声量と可視化。応援の振り付け、チャンス時のコール、キープレイのハイライト即時再生など、ファンの関与をゴールに近づける。
  • 家族同伴や初観戦への優しさ。トイレ、授乳室、キッズ向けの導線など、離脱ポイントを先回りで潰す。

リスクと課題

課題は三つ。第一に過密日程とコンディショニング。EASLや天皇杯を含む三正面作戦では、主力の負荷管理が勝敗に直結する。第二にCS終盤のクラッチ効率。拮抗戦でのターンオーバーやディフェンスリバウンドの1本が、タイトルの天秤を左右する。第三に収益の天井打ち対策。入場者数は高水準だが、単価の伸びしろ、非試合日の活用、メディア権益の拡張など、次の10億円をどこで積むかの設計が肝になる。

今後の展望とまとめ

琉球は50億円規模の売上目標を公言し、アジア市場や在日米軍コミュニティを含む越境的なプロモーションを視野に入れている。スポーツの価値を「試合」と「街」の両面で増幅させ、アリーナ発の地域経済プラットフォームを築く青写真だ。コート上では、堅守速攻とハーフコートの再現性を磨き、クラッチの勝率を押し上げることが最短の優勝ルートとなる。若手育成のアグレッシブさと、主力の健康管理、そしてホームでの圧倒的な空気感を維持できれば、再び頂点に戻る可能性は高い。

琉球ゴールデンキングスは、勝つための設計と、愛されるための設計を両立させたクラブである。まだ沖縄アリーナに行ったことがない読者は、次のホームゲームで体験してほしい。試合後には、なぜこのクラブが何度もファイナルに戻ってくるのか、その理由が腹落ちするはずだ。

【Bリーグ/長崎ヴェルカ】2025-26最新情報|ハピネスアリーナ本格稼働とマオール体制の全貌、補強・ロスター・戦術を徹底解説

ニュース概要

長崎ヴェルカは2025-26シーズン、B1西地区で2年目のモーディ・マオールHC体制を継続し、スローガンを「WE THE VELCA」として再出発する。ホームは長崎スタジアムシティ内の多目的アリーナ「ハピネスアリーナ」。スタンリー・ジョンソン、アキル・ミッチェル、イ・ヒョンジュンら国際色豊かな新戦力を加え、伊藤拓摩GMが描く“地域×エンタメ×競技力”の三位一体モデルをいっそう推し進める。ロスター刷新とスタッフ強化、育成路線の拡充、メディア露出の積極化を背景に、B1定着から上位進出を狙う。

背景と経緯

長崎ヴェルカは2020年に創設された長崎県初のプロバスケットボールクラブで、運営はジャパネットHD出資の株式会社長崎ヴェルカ。B3初年度の2021-22で圧倒的な45勝3敗の成績を収め優勝、B2でも準優勝を果たし、創設から最短ルートでB1へ到達した。2023-24はB1西6位(27勝33敗)、2024-25は同6位(26勝34敗)と苦心しつつも、クラブとしての基盤を広げた時期となった。

組織面ではGM伊藤拓摩の下、アソシエイトHCにポール・ヘナレを迎え、アシスタントコーチやパフォーマンス、メディカル、ビデオ部門を国際水準へ近づける再編を実施。育成カテゴリはU14/U15/U18が整備され、VCDP(Velca Coaching Development Program)で次世代コーチの育成も並行する。2024年以降は新拠点「ハピネスアリーナ」と併設クラブハウスが稼働し、練習・試合・オフィス・温浴設備に至るまで動線がシームレス化。チームとファンが日常的に交差する“都市型クラブ”の実装が進んだ。

選手・チームのプロフィール

クラブアイデンティティは“Welcome/Well community/Victory”を掛け合わせたチーム名「VELCA」が端的に示すとおり、地域に開かれた勝利志向。チームカラーはヴェルカネイビーとキャンバスホワイト、斜め上昇の「ヴェルカバード」ロゴは成長と革新性を象徴する。

経営・編成本部の顔は代表取締役社長兼GMの伊藤拓摩。NBAやNBLに通底する最新トレンドへの感度が高く、戦力補強は「スイッチ対応力」「トランジション適性」「マルチポジション性」をキーワードに一貫性がある。指揮官モーディ・マオールHCは、ハーフコートでのスペース創出、ハンドオフやズーム系の連携、5アウト/4アウト1インの可変運用を使い分けることで、国籍やサイズの異なる選手を束ねるのが持ち味だ。

2025-26登録の主な顔ぶれは、以下の通り(ポジションは便宜上)。

  • G:熊谷航、森田雄次、狩俣昌也、松本健児リオン
  • W/F:馬場雄大、山口颯斗、星川堅信、菅野翔太、イ・ヒョンジュン、スタンリー・ジョンソン、森川正明(IL入りからの復帰見込み)
  • F/C:アキル・ミッチェル、ジャレル・ブラントリー、川真田紘也

新加入のスタンリー・ジョンソン(NBA在籍経験)とアキル・ミッチェル(国際舞台での守備・リムラン能力)は、B1のアスレティシズム基準を引き上げるピース。イ・ヒョンジュンは高精度のキャッチ&シュートとサイズのあるウイング守備で、日本のB1でもフィットが期待される。継続勢では馬場雄大が攻守のトーンセッター、ブラントリーがミスマッチ攻略の第一手、川真田がスクリーンとリムプロテクトで骨格を担う。テクニカルなスイングマン星川、2way志向の山口、ゲームメイク力の熊谷など、ローテは多層化した。

試合・出来事の詳細

直近2季のB1では負傷と入れ替えの影響で波に乗り切れず、2024-25は7連敗を含む難所を経験。終盤は立て直して26勝34敗でフィニッシュした。課題はセカンドユニットの持続火力、リム周りの決定力、終盤の意思統一で、いずれも今季の補強テーマと整合的だ。具体的な上積みポイントは以下の3つ。

  1. 守備の土台強化
    • ミッチェル+ブラントリー+川真田のラインで、リム守備・DREB・ショーブロックを改善。ウイングはジョンソンと馬場がPOA(Point of Attack)で圧をかけ、後方の助け舟を減らす。
    • スイッチ後のポストミスマッチへの二段対応(早いボールプレッシャー→遅いダブル)は、ヘナレAHCのコーチングで整理が進むはずだ。
  2. トランジションの加速
    • 守備リバウンド即発進(rebound to outlet to lane fill)を徹底。馬場・山口・イ・ヒョンジュンの三走路はB1でも上位水準の推進力を生む。
  3. ハーフコートの省手数化
    • ズーム(ピンダウン→DH0)やホーンズ起点のハンドオフで、初動からスイッチを強要。ブラントリーのショートロール、ミッチェルのダイブ、外ではイ・ヒョンジュンのスポットアップを絡めて“判断2手以内”を目指す。

ホームの「ハピネスアリーナ」はアクセス性と演出設備でB1屈指。併設クラブハウスは“徒歩30秒”の導線でパフォーマンス管理を高効率化する。試合日は会場の飲食・物販や演出(MC/DJ、チア「VELC」)が一体化し、地域メディアの定期番組と連動するハイブリッドな“試合体験”が提供される。

他事例との比較・分析

B1西地区の上位常連は、堅守速攻(川崎タイプ)、大柄ビッグの高効率活用(琉球タイプ)、多彩なハンドオフ連携(名古屋Dタイプ)など、色のあるスタイルを持つ。ヴェルカのユニークさは、国際色あるロスターに対して“可変式”の落とし込みを行い、週単位で対戦相手の弱点へ戦術を微調整する運用にある。

例えば、サイズ差で押せる相手にはミッチェル+川真田の縦リム圧とOR(オフェンスリバウンド)で上書き。外角守備が脆い相手には、イ・ヒョンジュンのピンダウン→シャローカールからのキャッチ&シュートを連投し、ブラントリーのショートロールでヘルプを吸う。POAが強い相手には、馬場をプライマリーハンドラーにしてDH0やズーム系を増やし、ドリブル回数を削る。これらの“相手特化の小回し”は、長期的な“クラブとしての型”を損なわない範囲で調整できるのが強みだ。

また、B3優勝→B2準優勝→B1定着という駆け上がりの裏側で、アカデミーとメディア、アリーナ運営を統合し、勝つだけではない収益多角化を早期に実装した点が他クラブ比で先進的だ。U14/U15/U18の整備、コーチ育成プログラム、地元番組・YouTube・SNSの立体展開、スポンサー協業の広がりは、“地域装置”としてのプロクラブというBリーグの理想形に近い。

今後の展望とまとめ

短期目標は、勝率5割超と西地区上位進出。中期では、連敗の芽を序盤で摘む“下振れ耐性”の獲得と、終盤のクローズ力の安定化が焦点だ。戦術的には、リム周りの効率(FT獲得とペイントFG%)を押し上げつつ、3Pの量と質を担保できるかが鍵になる。特に以下のKPIをシーズンの体温計として捉えたい。

  • 守備:DREB%、相手のペイント得点、相手TOV%
  • 攻撃:ペイント得点、FT Rate(FTr)、3P試投比率とコーナー3比率
  • ゲーム運び:クラッチタイムのPPP(100ポゼッション得点)とTOV%

ロスター面では、ウイングのヘルシー維持とバックアップガードのハンドリング安定が上振れの条件。スタッフ体制の厚みはリーグ随一で、負傷や日程密度の波を平準化できる可能性が高い。ハピネスアリーナという新基盤は“ホーム勝率の底上げ”に直結しやすく、観客体験の品質はスポンサー価値と選手リクルート力を押し上げる。

総括すれば、長崎ヴェルカは“地域密着×国際規格の実装”という独自性で、B1の新潮流を牽引するポテンシャルを持つ。2025-26は、守備の土台とトランジション、ハーフコートの省手数化が噛み合うかが勝負どころだ。読者の皆さんは、ホームの熱量とともに、セットの起点(ホーンズ、ズーム、DH0)の配分や、終盤のクラッチで誰が第一次決定権を握るかに注目してほしい。興味を持ったらこの記事をシェアし、現地で“WE THE VELCA”の空気を体感しよう。

ジョン・パトリックが台湾新北キングスの新HCに就任!千葉Jで歴史を作った名将がアジアで再出発

名将ジョン・パトリック、台湾プロバスケ・新北キングスの指揮官に就任


2025年7月9日、台湾のプロバスケットボールクラブ「新北キングス」は、元千葉ジェッツHCのジョン・パトリック氏を新たなヘッドコーチとして迎え入れることを正式発表した。パトリック氏は日本バスケ界でも豊富な経験と輝かしい実績を持つ指導者であり、今回の就任は台湾リーグTPBLにとっても大きな話題となっている。

新北キングスは、2024年に発足したTPBL(Taiwan Professional Basketball League)において初代王者に輝いた強豪。チームには元NBA選手でアジア圏で圧倒的な人気を誇るジェレミー・リンが所属しており、攻守にわたりアグレッシブなスタイルを展開することで知られている。そんなチームが2025年シーズンに向けて選んだ新指揮官が、日本でB1歴代最高勝率や2冠を成し遂げたパトリック氏だった。

千葉ジェッツでの偉業:勝率.883、24連勝、天皇杯制覇

ジョン・パトリック氏(57歳)は、アメリカ出身ながら近畿大学に留学経験を持ち、日本バスケットボールとの結びつきが深い。JBL時代にはトヨタ自動車アルバルク(現・アルバルク東京)を指揮。その後、ドイツリーグで最優秀ヘッドコーチ賞を受賞し、国際的にも高く評価された実力派だ。

2022年に千葉ジェッツのヘッドコーチに就任すると、その手腕が瞬く間に発揮され、就任初年度にはB1史上最長となる24連勝を記録。シーズン勝率.883(53勝7敗)はB1歴代最高であり、2023−24シーズンには東アジアスーパーリーグと天皇杯の2冠を獲得。名実ともに「勝てるチーム」を作り上げた。

彼のバスケはディフェンスを土台としたハードなスタイルと、選手の自立を促すマネジメントが特徴。実績だけでなく、指導哲学の面でもチームに強い影響を与えるタイプのコーチだ。

台湾の新リーグ「TPBL」と新北キングスの挑戦

TPBLは2024年に新たに設立された台湾のプロリーグであり、元P.LEAGUE+やT1リーグのクラブが再編・統合される形でスタートした。リーグの初年度王者となったのが新北キングスであり、ジェレミー・リンや高身長外国籍選手の起用など、グローバル視点での編成が特徴だ。

昨季、チームを率いたライアン・マルシャンHCはリーグ最優秀コーチ賞に輝いたが、今オフに日本のB2クラブ「福島ファイヤーボンズ」への移籍が決定。後任探しが急務となる中で白羽の矢が立ったのが、実績と知名度を兼ね備えたパトリック氏だった。

GMの言葉:「ゴッドファーザーのような存在」


新北キングスのゼネラルマネージャーであるジェームス・マオ氏は、パトリック氏の就任にあたり以下のようにコメントした。

「パトリックはまるで ゴッドファーザー のような偉大な指導者。国際的な視野と経験を兼ね備え、これまで数々のチームを再構築してきた。キングスを次なる優勝へ導いてくれると確信している」

このように、台湾のバスケット界からも大きな期待が寄せられていることがわかる。

選手たちへの影響と展望:リンとの融合、新戦術は?

パトリック氏の指導下で最も注目されるのは、ジェレミー・リンとの化学反応だ。NBA、CBA、PBAなどを経験してきたリンにとっても、国際的な知見を持つ指導者とのタッグは刺激になるはずだ。

また、パトリック式ディフェンス重視バスケが台湾リーグの中でどのような効果を発揮するかも注目される。特に速攻重視のアジア系バスケにおいて、パトリックの「ハードDからのオフェンス」は強力な武器となる可能性がある。

Bリーグとの対比と移籍動向:今後の帰還も視野?

Bリーグファンにとってもパトリックの去就は関心事だ。彼の千葉J退任後、後任のHCがどうチームを引き継ぐのか、また今後パトリック氏が再びBリーグに復帰する可能性も否定できない。

実際、2024−25シーズンは日本の複数クラブでもHC交代が続いており、「勝たせられる外国人HC」は争奪戦となっている。TPBLでの成果次第では、数年以内のBリーグ復帰、または日本代表のアシスタントなどの選択肢も見えてくるだろう。

まとめ:アジア全体のバスケ成長を象徴する存在へ


ジョン・パトリックの台湾行きは、単なる1クラブの補強にとどまらず、アジアバスケットボール界の成長と多様性を象徴する事例とも言える。日本、ドイツ、そして台湾を渡り歩く中で蓄積された指導哲学と戦術は、今後のアジアバスケに新たな刺激をもたらすことだろう。

これまでにもBリーグとCBA、KBL、PBAなどアジア各国間でのコーチ・選手の交流は進んでいたが、今回のような「日本で実績を残した指導者が台湾に行く」流れは、TPBLの国際化と成熟の証でもある。

今後、新北キングスがパトリックの下でどんなバスケを見せてくれるのか。アジアのバスケファンは大いに注目している。

【Bリーグ契約情報|7月9日】長崎ヴェルカがアキル・ミッチェル獲得!チャイルズやピークらの移籍先も判明

長崎ヴェルカ、アキル・ミッチェル獲得でインサイドを強化


2025年7月9日、Bリーグ各クラブによる新シーズン(2025-26)に向けた契約情報が続々と更新された。中でも注目を集めたのは、B1所属の長崎ヴェルカによるアキル・ミッチェル(Akil Mitchell)の獲得だ。

ミッチェルはパナマ代表経験を持つ実力派ビッグマンで、身長206cm、屈強なフィジカルとリムプロテクションに定評がある。過去にはフランス、イタリア、プエルトリコ、イスラエル、トルコなど複数の国でプレーし、インサイドにおける守備力と得点力のバランスが高く評価されてきた。

昨シーズンはB1の横浜ビー・コルセアーズと契約したものの、約2カ月で退団。そのため、日本国内での公式戦出場は叶わなかったが、長崎での新たな挑戦に期待がかかる。

長崎ヴェルカは2024-25シーズンにB1初昇格を果たしたばかりの新鋭クラブで、機動力と勢いを武器に一気に注目チームへと躍進。新シーズンに向けた戦力強化の第一歩として、ミッチェルのような即戦力ビッグマンの加入は、リーグ中位〜上位進出への布石となる可能性が高い。

ヨーリ・チャイルズがB2神戸へ移籍、立川にはLJ・ピークが加入


続いて話題となったのは、B2・神戸ストークスによるヨーリ・チャイルズ(Yoli Childs)の獲得発表だ。

チャイルズは佐賀バルーナーズで2023-24シーズンに在籍し、在籍2年目で平均2ケタ得点を記録した実力派フォワード。もともとBYU(ブリガムヤング大学)のエーススコアラーとして注目され、プロ転向後も安定したパフォーマンスを披露してきた。今季は自由交渉選手リスト入りしていたが、神戸への加入が正式に決定し、B2屈指の得点源としての働きが期待されている。

また、LJ・ピーク(LJ Peak)も新たな動きを見せた。昨季までB2・越谷アルファーズに所属していたピークは、平均得点10点超と高い得点能力を発揮していたが、今回B3の立川ダイスへの移籍が発表された。

立川はB3中位クラスのチームだが、近年は外国籍選手の活用や若手の積極登用で評価を上げており、ピークの加入により攻撃面での飛躍が期待される。

奈良がインサイドに2名を補強、新外国籍選手の顔ぶれにも注目

B2のバンビシャス奈良は、7月9日に2名の外国籍選手獲得を発表。いずれもインサイド強化を目的とした補強となっており、2025-26シーズンへの本気度がうかがえる。

まず1人目は、ドミニカ共和国出身のジョーダン・ダラス(Jordan Dallace)。身長208cmのセンターで、パワフルなリバウンドとリム付近での得点力が売り。ドミニカ共和国代表歴を持ち、中南米リーグやGリーグでのプレー経験も豊富だ。

2人目は、NCAA強豪・ミシシッピ大学(Ole Miss)出身のジェイミン・ブレイクフィールド(Jaemyn Brakefield)。206cmのフォワードで、アウトサイドシュートとペリメーターディフェンスの両立が魅力。NCAAで4年間プレーした経験から、安定感のあるオールラウンダーとして注目されている。

奈良は昨季B2下位に沈んだが、このインサイド補強により、攻守両面での底上げを図る構えだ。

東京Zがブルーナーを獲得、B3中堅クラブの動きも活発化


B3クラブにも注目の動きが出ている。アースフレンズ東京Zは、ドンテ・ジョーダン・ブルーナー(Donte Jordan Bruner)の獲得を発表。ブルーナーは立川ダイスを退団したばかりのパワーフォワードで、昨季はレバノンリーグでもプレー経験を積んだ。

東京Zは、B3再編後の新体制で台頭を目指すチームの一つ。ブルーナーのように複数の国でプレーした経験を持つ選手の加入は、チーム内の競争力を高める意味でも重要だ。

移籍・契約情報まとめ:今後の動向に注目

以下は、2025年7月9日に発表されたBリーグの契約情報一覧である。

  • 【移籍】
  • LJ・ピーク(越谷アルファーズ ⇒ 立川ダイス)
  • ヨーリ・チャイルズ(佐賀バルーナーズ ⇒ 神戸ストークス)
  • 【新規契約】
  • アキル・ミッチェル(プエルトリコリーグ ⇒ 長崎ヴェルカ)
  • ジョーダン・ダラス(ドミニカ共和国リーグ ⇒ 奈良)
  • ジェイミン・ブレイクフィールド(NCAA ⇒ 奈良)
  • ドンテ・ジョーダン・ブルーナー(レバノンリーグ ⇒ 東京Z)

今後もBリーグ各クラブによる移籍・契約情報は続々と発表されていく見込みで、8月上旬に控えるプレシーズンマッチや公開練習にも影響が及ぶだろう。外国籍選手の加入は、チーム戦術の幅やリーグの競争力を左右する重要なファクター。GL3x3でも、引き続き最新情報を速報形式でお届けしていく。

まとめ:Bリーグ2025-26シーズンへ、新戦力の戦いが始まった

7月9日に発表された各クラブの契約・移籍情報は、B1からB3までリーグ全体における戦力図の変化を象徴するものとなった。特に、アキル・ミッチェルの長崎加入をはじめ、実績ある外国籍選手の日本参戦は、今シーズンのBリーグの見どころの一つだ。

また、各クラブが将来性ある若手やNCAA・海外リーグからの逸材を積極的に獲得している点も見逃せない。今後のシーズン展望、順位争いの行方にも大きな影響を与えるこれらの契約更新は、ファンならずとも注目しておきたいポイントである。

【Bリーグ/佐賀バルーナーズ】SAGAアリーナ発の“施設先行型”モデルでB1に定着するまで:歴史・成績・ロスター・戦略を徹底解説

ニュース概要

佐賀バルーナーズは、佐賀県佐賀市を拠点とするB.LEAGUEのクラブで、2018年創設という新興勢力ながら、B3優勝(2019-20)、B2西地区優勝・B2制覇(2022-23)を経てB1へ昇格した。新アリーナ「SAGAアリーナ」をハブとする“施設先行型”の取り組みで地域スポーツと都市開発を接続し、B1初年度の2023-24は29勝31敗(西地区5位/全体15位)と昇格組として上々の成績を残した。2024-25は主力の長期離脱もあり22勝38敗(西7位)と踏みとどまるシーズンだったが、2025-26に向けては宮永雄太HC(GM兼務)の下、ロスターの再編とゲームモデルの再整備を進めている。本稿では、クラブの来歴から組織構造、ロスターの役割分担、ゲーム戦略、そしてSAGAアリーナがもたらす波及効果までを多角的にレビューする。

背景と経緯

佐賀バルーナーズの成長ストーリーは、日本のプロスポーツでも稀少な「アリーナ建設を前提としたクラブ創設」に象徴される。県都・佐賀市に整備されたSAGAサンライズパークの中核施設であるSAGAアリーナ(B1基準の5,000席超)は、クラブが構想段階から活用を見据えており、創設当初から“アリーナ→チーム強化→街の賑わい”という循環設計を志向。2018年のチーム結成後、B3準加盟・参入をクリアし、2019-20にB3で勝率.750の首位(リーグ途中中止の特殊事情下)を確保、理事会承認をもってB2へ昇格した。B2では序盤から競争力を発揮し、宮永体制2年目の2022-23に45勝15敗(勝率.750)で西地区1位—プレーオフも2連続スイープでB1昇格とB2優勝を同時達成。B1初年度の2023-24は29勝31敗、アウェー16勝14敗とロードで勝ち越し、昇格組としては歴代最高勝率を更新した。

経営面では、2023年にヒューベストホールディングスの資本参加・業務提携が公表され、デジタル/アナログ両面の強化を推進。運営会社も2023年7月に現行の「株式会社佐賀バルーナーズ」へ社名変更し、地域密着と事業拡大を両立する体制へと舵を切った。クラブ名の由来は“バルーン”で知られる佐賀インターナショナルバルーンフェスタ。地域の象徴をアイデンティティの核に据え、マスコット「バルたん」やチア「BAL-VENUS」も含めた総合的な観戦価値づくりに取り組んでいる。

選手・チームのプロフィール

2025-26の指揮は引き続き宮永雄太HC(GM兼務)。ゲームモデルは堅実なハーフコートをベースに、シューター陣のオフボール活用と、サイズのあるビッグマンを軸としたリバウンド・スクリーンの質で土台を作るスタイルが特徴だ。ロスターには、経験と実績を備えたシューターやストレッチ系ビッグ、ベテランガードら多様なタイプが並ぶ。

  • ベテランの核:金丸晃輔(G/F)、橋本晃佑(PF)、ジョシュ・ハレルソン(帰化/F-C)。いずれもB1での勝ち方を知る存在で、ハーフコートの効率性を押し上げる駒となる。
  • 機動力と育成:内尾聡理(G)、角田太輝(SG)、富山仁貴(特別指定/F)。トランジションとオフボールムーブの両面で伸びしろが大きく、強度とスキルの積み上げに直結する。
  • インサイドの厚み:タナー・グローヴス(F/C)、デイビッド・ダジンスキー(F/C)。スペーシングやショートロールでの意思決定に強みを持ち、PnRの“受け手”だけでなくハブとしての役割も期待される。
  • ゲームメイク:レイナルド・ガルシア(PG)、岸田篤生(PG)、山下泰弘(PG)。リードガードの組み合わせでテンポとチームバランスを最適化する。

チームカラーはブルー/ピンク/グリーン。ホームはSAGAアリーナ、練習拠点は旧市立富士小学校体育館(改修)。クラブの象徴である“色と気球”のビジュアル・メタファーは、ファミリー層の集客導線とも親和性が高く、ゲームデーの演出価値に直結している。

試合・出来事の詳細

直近2季の推移を俯瞰すると、2023-24はB1初年度で29勝31敗と合格点。一方、2024-25は主力ビッグマンの長期離脱やけが人の相次ぐアクシデントが響き22勝38敗に後退した。指標面では、接戦の終盤管理(タイムアウト後のセットプレー、ATOの効率化、勝負所でのターンオーバー抑制)と、40分間の守備強度維持(ファウルトラブル回避と2ndチャンス抑止)が課題として浮かぶ。2025-26に向けては以下の3点が打ち手となる。

  1. ビッグラインアップとスペーシングの両立:ハレルソンやダジンスキー、グローヴスの併用時に、ペリメーターのシューティング脅威を保ちつつ、ローポストの渋滞を避ける。ハイローやショートロール→ドリフトのレーン整理が鍵。
  2. シューターの“走らせ方”の明確化:金丸をはじめとするシューターのピンダウン、フレア、スタガーの頻度・角度・スクリーナーの接触質を設計し、ミッドゲームの停滞を防ぐ。
  3. トランジションDの整流化:外角主体のラインナップ時に生じやすいロングリバウンド→被速攻の連鎖を断つため、ショットセレクションとクラッシュ人数、セーフティバランスの基準を共有する。

ユニフォームはアンダーアーマー供給。2025-26はフロント/バック/パンツに地元有力企業が並び、スポンサーの質量がSAGAアリーナの商圏力とクラブの事業規模拡大を物語る。ホームゲーム会場の配分はSAGAアリーナが中心で、年間30試合の安定開催により、観戦体験の標準化とリピーター醸成が進む構造だ。

他事例との比較・分析

“施設先行型”でB1に到達した例は国内でも限られる。アリーナが先に存在し、クラブが後から成長するモデルは、以下の利点をもたらす。

  • 収益構造の安定:座席数・VIP席・飲食/物販の設計自由度が高く、1試合あたりのマネタイズ上限が高い。
  • スポーツ×まちづくりの接点:周辺動線や再開発と接続しやすく、自治体・企業との協働の選択肢が広がる。
  • ブランドの“初期完成度”が高い:ビジュアル/サウンド/演出の標準を早期に確立でき、ファンの認知形成が速い。

一方で、プレッシャーもある。器に見合う競技力(ホーム勝率、接戦対応力)を短期に引き上げる必要があり、ロスターの再構築やアカデミー連携を含む人材パイプラインの整備が欠かせない。佐賀は2022-23のB2での圧勝を起点にB1へ参入したが、B1定着には「オフェンス・ディフェンス双方の効率の底上げ」「シーズンを通したヘルス管理」「終盤の決定力」が要諦となる。これは昇格組や中位層クラブに共通する壁であり、佐賀も例外ではない。

競技的な文脈では、ハーフコートの精度(eFG%とTOV%の最適化)と、リバウンドの取捨(ORB%にどれだけリソースを割き、トランジションDとのトレードオフをどう制御するか)が勝率に直結する。シューターの活用と2メンゲームの緻密化に、セカンドユニットの役割明確化(特にラインアップ別の得失点差管理)を重ねられるかどうかが、2025-26の分水嶺となる。

今後の展望とまとめ

2025-26は「B1定着からポストシーズン射程へ」のリスタート。鍵は3点に集約できる。

  1. 健康とローテの安定:主力のコンディション維持と、役割が重ならない交代設計。故障発生時にゲームモデルを崩さず、ラインアップABテストを迅速に回す。
  2. シュートクリエイションの多様化:PnR主体から、ハンドオフ(DHO)、ズームアクション、ベースラインドリブンのセットを織り交ぜ、プレーオフ型の準備を平時から蓄積する。
  3. ホームアドバンテージの強化:SAGAアリーナの演出・ファン参加を競技優位へ転化し、拮抗戦の勝ち目を1~2勝上積みする。

佐賀バルーナーズは、地域の象徴たる“バルーン”の名の通り、上昇気流に乗る準備を整えている。B3からB1へ、短期間で階段を駆け上がった推進力は、アリーナを核とした経営設計と、現場の再現性あるゲームモデルづくりの両輪に支えられてきた。2025-26は、その総合力をもう一段引き上げ、チャンピオンシップ争いへ存在感を示せるかが焦点だ。この記事が観戦前の予習や、戦術・ロスター把握のガイドになれば幸いだ。気づきや意見があればぜひ共有してほしい。地域に根ざしたクラブの未来は、ファンの声とともに大きく、遠くへ舞い上がる。

Bプレミア、選手登録期限を最終節まで延長へ…島田チェアマンが改革の背景と狙いを説明

Bプレミア、選手登録期限を「最終節まで」延長へ

2025年7月8日に実施されたBリーグ理事会後のメディアブリーフィングにて、島田慎二チェアマンが2026-27シーズンから始動する「B.PREMIER(Bプレミア)」に関する新たな制度運用について発表した。最も注目されたのは、選手登録最終日のルール見直しである。Bプレミアでは、これまで「レギュラーシーズン3/4終了時点」とされていた登録締切を、「レギュラーシーズン最終節」まで延長する方針が明らかにされた。

世界基準の選手流動性を見据えた制度改革

今回の見直しの背景には、Bプレミアが掲げる「世界レベルの競技水準」の実現がある。島田チェアマンは「海外リーグとの接続性を意識した制度設計が不可欠」と強調。オーストラリアのNBLや中国のCBAといった、Bリーグよりも早くシーズンを終えるリーグからの選手流入を視野に入れた制度変更だ。

「例えばNBLでは3月にはシーズンが終了する。そこから日本に来る選手を受け入れられる柔軟性が、Bプレミアの競争力向上につながる。グローバルな選手獲得競争の中で、日本だけが閉鎖的であってはいけない」と、国際的な人材流動性への対応姿勢を明確にした。

サラリーキャップ制度との整合性

シーズン終盤に戦力補強が可能になることに対しては「戦力バランスが崩れるのでは」と懸念も出るが、島田チェアマンは「サラリーキャップ制度の導入により、過度な戦力集中は抑制される」と明言。2026-27シーズンから導入されるサラリーキャップ制度は、チーム全体の年俸総額に上限を設けることで、クラブ間の資金力格差による不公平感を緩和する役割を担う。

「そもそもキャップの中でしか動けない。例え登録期限が延びても、枠の中でのやり繰りとなるため、補強に際しての無制限なインフレは起きない」と述べ、制度間の整合性を強調した。

B.ONEとB.NEXTは従来通り「3/4終了時点」で締切

一方、Bリーグの他のカテゴリーである「B.ONE」「B.NEXT」については、従来通り「レギュラーシーズンの3/4終了時点」での登録締切を継続する。理由は、クラブ間の人件費格差やチーム力の不均衡によって、戦力の偏りが発生しやすいリスクを考慮したためだ。

島田チェアマンは「下位カテゴリーでは一人の補強が順位に直結する。登録期限があまりに遅ければ、終盤で戦力を加えたクラブが一気に順位を押し上げる不公平な構造ができてしまう」と指摘。中小規模クラブの競技バランス維持を優先し、慎重な制度運用を求めた。

リーグの多層化に応じた制度分離の必要性

今回の発表は、Bプレミアの制度が他カテゴリーとは別軸で運用されていくことを明示する象徴的な改革でもある。島田チェアマンは「Bプレミアは別のフェーズに入るリーグ。それにふさわしいレギュレーションを構築し、他カテゴリーとは分離したルール設計が不可欠」と語った。

事実、Bプレミアはクラブライセンス基準も厳格化され、アリーナ収容人数、運営資金、人件費水準など、全体のプロフェッショナリズムが一段と高まるリーグとして設計されている。選手登録期限も、そうした「高度な制度設計」の一環と言える。

国際リーグとの制度比較:FIBA主導の環境整備へ

国際的には、FIBA主導で各リーグの制度統一や柔軟性の確保が進められており、ヨーロッパやアジアの強豪リーグでは、登録期限や契約の移行に対する調整が年々拡大している。オーストラリアNBLでは「NBA終了後の契約受け入れ枠」など、複数の例外制度がある。

島田チェアマンは「Bリーグもグローバルスタンダードに歩調を合わせていく必要がある。日本発で 選手が戻りたくなる環境 を整えるべき時期に来ている」と語り、今後のリーグ価値向上に制度整備が不可欠であることを示した。

制度変更の影響と今後の議論の焦点

この登録期限の延長は、選手にとってはキャリア選択の幅が広がる一方、クラブ間の補強戦略やスカウティング能力により一層の差が生まれる可能性もある。特に、アジア特別枠選手やNCAA帰りの若手選手を巡る争奪戦は、最終節までに流動性が高まることが予想される。

また、今後はBプレミアでの契約ルール、シーズン中トレード制度、セカンドチーム登録など、複数の補足ルール制定も検討されており、制度改正は続いていく見込みだ。

まとめ:Bプレミア始動に向けて動き出した 制度の地殻変動

選手登録期限の見直しは、Bプレミアの競技水準を引き上げるための大きな一歩である。登録締切を最終節にまで延長することで、国際的な人材流動性を受け入れ、よりダイナミックなリーグ形成が期待される。

一方で、B.ONEやB.NEXTでは、慎重な運用が維持され、制度的な分離と差別化が明確になってきている。こうした多層的制度設計が、Bリーグの持続的な発展と地域バスケ文化の活性化にどう貢献するか、今後の動向が注目される。

Bリーグが日本財団と連携強化へ!全国10クラブで「まちづくり」事業始動、地域課題にスポーツで挑む

Bリーグ×日本財団が推進する「まちづくり」事業が本格始動

2025年7月8日、Bリーグは日本財団と連携し、「スポーツを通じた地域課題の解決」を目的とした新たな社会貢献プロジェクトを発表した。これまで震災復興やスポーツ振興といった分野で共に取り組んできた両者だが、今回はより地域密着型の「まちづくり」を軸に、全国10クラブによるモデル事業が展開される。

この取り組みは、Bリーグ全体で推進するSDGsやESG(環境・社会・ガバナンス)戦略の一環であり、単なるCSRではなく、スポーツが地域社会の持続可能性に寄与する実践的モデルの構築を目指す。総事業費はおよそ2.8億円で、そのうち約1.1億円が今回採択された10クラブに分配され、各地域の課題に対処するプロジェクトが始動する。

日本財団との協業強化、なぜ「今」なのか

2017年に連携協定を締結して以来、Bリーグと日本財団は震災被災地への支援、コロナ禍での募金活動、スポーツ体験支援などの共同活動を重ねてきた。今回の連携強化は、その延長線上にあるものの、より深い「共創」のフェーズに突入したと言える。

島田慎二チェアマンは記者会見で「今、Bリーグが地域と共に歩む時代に来ている。スポーツの価値は 試合 だけでなく、地域の未来を変える力にある」と語り、クラブの存在意義が「勝敗を超える価値創出」に広がりつつある現状を強調した。

採択された全国10クラブとその取り組み内容

今回のプロジェクトには、全国のB1・B2全クラブから提案があり、厳正な審査を経て10クラブが採択された。それぞれの地域に根差したユニークな施策が展開される:

  • レバンガ北海道:「レバンガこども BASE」
    廃校を改修した練習場内に「子ども食堂」を開設。プロチームの拠点を教育的空間として再活用。
  • 秋田ノーザンハピネッツ:「こども居場所モデルの構築」
    既存の「みんなのテーブル」事業を進化。食と遊びを掛け合わせた常設型の居場所を創出。
  • 茨城ロボッツ:「みんなで育てるまちプロジェクト」
    商店街と連携し、スポーツ観戦・イベントを通じてウォーカブルな都市空間と交流の場を設計。
  • 川崎ブレイブサンダース:「Global Connect構想」
    外国人スタッフを配置し、英語・多文化共生の機会を提供。外国人児童のサポートも視野に。
  • 名古屋ダイヤモンドドルフィンズ:「共生型まちづくりプラットフォーム」
    部活動支援を起点に、財源・人材の自走サイクルを生み出し、持続可能な地域コミュニティを形成。
  • 大阪エヴェッサ:「リアルお仕事体験 in 商店街」
    小中高生向けに商店街と連携した職業体験を実施。バスケを通じて 働く意義 を伝える教育的試み。
  • 福島ファイヤーボンズ:「郡山まちづくりビジョン型スポーツコミュニティ」
    地域の体育施設を拠点に、誰でも参加できる運動プログラムを常設。まちづくりビジョン策定も視野に。
  • 信州ブレイブウォリアーズ:「ホワイトリング地域交流拠点事業」
    長野五輪レガシーを活用し、アリーナをアートや教育イベントの拠点へと再定義。
  • ベルテックス静岡:「共生社会をアートで推進」
    知的障がい者との共同アート制作を通じて、地域に 共に生きる というメッセージを届ける。
  • 熊本ヴォルターズ:「熊本ヴォルフェスタ」
    バスケ・音楽・食を融合した観光イベントで、地域経済と文化の活性化を図る。

プロジェクトがもたらす スポーツの新しい役割

これらの事業に共通しているのは、「スポーツをきっかけにした社会参画と地域共創」だ。クラブが主役ではあるが、運営には自治体や商店街、地域住民、NPOなども巻き込み、多様な主体の共働によって構築される。

中には、廃校や体育館を活用した事例、外国人支援、子ども食堂、アートとの融合といった異分野との連携も多く、従来の クラブ活動 の枠を大きく超えるスケール感と柔軟性が特徴だ。Bリーグは「競技団体」から「社会課題解決型プラットフォーム」へと変貌しつつある。

防災や次世代プロジェクトにも波及へ

なお、今回の「まちづくり」事業に続いて、2025年度中には「防災意識向上プロジェクト」も始動する。全国約30クラブが自治体や学校と連携し、災害教育・避難訓練・防災グッズの配布など、さまざまな啓発活動を展開予定だ。

こうした社会還元活動の積み重ねは、将来的にクラブの 地域公共財 としての価値を一層高め、バスケットボールの認知拡大・観客動員とも相乗効果を生み出すと見られている。

まとめ:Bリーグ発の まちづくり モデルが切り開く未来

Bリーグと日本財団が手を組み、各地域の社会課題に真正面から向き合う「まちづくりプロジェクト」は、スポーツ界における新たな潮流として注目を集めている。勝敗やスタッツを超えて、クラブが 地域の未来をつくる存在 へと進化していく姿は、今後のプロスポーツの在り方に一石を投じることになるだろう。

スポーツが持つ力──それは人と人をつなぎ、地域を動かし、社会を変えていく。その実例が、Bリーグの取り組みを通じて今、確かに形になり始めている。

【7月8日Bリーグ契約情報まとめ】元NBA選手ブロドリック・トーマスがFE名古屋に加入!レバンガ北海道はハーラー獲得でインサイドを強化

FE名古屋がNBA出身スウィングマン、ブロドリック・トーマスと契約を締結

2025年7月8日、B1所属のファイティングイーグルス名古屋(FE名古屋)は、新戦力としてブロドリック・トーマスとの契約合意を発表した。196cm・95kgのスモールフォワードで、NBA通算44試合の出場経験を持つ29歳のアメリカ人選手だ。

トーマスはヒューストン・ロケッツやクリーブランド・キャバリアーズ、ボストン・セルティックスといったNBAチームで活躍した後、近年はトルコなどヨーロッパリーグでプレーしていた。NBAではシーズン平均3.3得点1.6リバウンドを記録しており、身体能力とスピード、スイッチディフェンスでの適応力が特徴のオールラウンダーだ。

今回のFE名古屋加入は、攻守両面での即戦力補強を目的としたもの。近年、Bリーグの中でも安定した成績を残しつつある同チームにとって、彼の加入はウイングの層を一段と厚くする補強となるだろう。

北海道がB2静岡からジョン・ハーラーを獲得し、インサイドの強化を推進

同日、B1レバンガ北海道も重要な補強を発表。B2のベルテックス静岡からジョン・ハーラーを迎え入れることを正式に発表した。205cm・109kgのパワーフォワード兼センターで、昨シーズンはB2全60試合に出場。1試合平均14.1得点、11.2リバウンド、2.1アシストと堂々たるスタッツを記録しており、B1昇格を狙う静岡の主力として活躍した。

2023-24シーズンに来日したハーラーは、ペンシルベニア州立大学出身。大学卒業後はスペインリーグで経験を積んだ後、Bリーグへと活躍の場を移した。B1ではインサイドの層の厚さが勝敗に直結する中、レバンガ北海道はすでに前日にジャリル・オカフォーの加入を発表しており、ハーラーとの2枚看板でペイントエリアを支配できる陣容となった。

本人はクラブを通じて、「素晴らしい街である札幌でプレーできることに感謝しています。チームの目標を達成するためにハードワークを続けたい」とコメント。昨季B1で苦戦を強いられた北海道が、強固なインサイドの再構築で巻き返しを図る構えだ。

その他の注目契約:東京Z、名古屋D、アースフレンズ東京の動き

この日、その他にも複数のクラブから契約情報が発表された。

  • アディリ・クエルバン:B3徳島からB3品川(しながわシティ)へ移籍。
  • 向後アディソンジェスモンド:アースフレンズ東京Zと再契約。5月26日に一度契約満了となったが、再びチームの一員として来季を戦う。
  • 名古屋D(ダイヤモンドドルフィンズ):コーチ陣の継続契約を発表。浜中謙(TAC)、川原侑大(AC)、山下恵次(AC兼PDC)の3名が来季もベンチに残留する。
  • 東京Z:廣瀬慶介アシスタントコーチの契約継続が発表された。

オカフォーに続く補強に見るBリーグの多様化と国際化

前日にレバンガ北海道が発表した「元NBAドラフト3位指名」ジャリル・オカフォーの加入も記憶に新しい。2015年にフィラデルフィア・セブンティシクサーズから指名され、オールルーキーファーストチームに選出されたビッグマンが日本で新たなキャリアを築くこととなり、国内外で注目を集めている。

その直後にジョン・ハーラーの獲得が続いたことで、レバンガ北海道はペイントエリアを大幅に強化。高さとフィジカルに加え、実績ある外国籍選手の加入で来季の上位進出を目指す姿勢が鮮明になった。

また、今回のブロドリック・トーマスのようなNBA経験者の加入は、Bリーグ全体のグローバル化を象徴するトピックでもある。かつては「キャリアの終盤でのプレー地」としての側面が強かった日本リーグだが、現在では「キャリアの継続・再起・飛躍の場」として機能し始めている。

Bリーグの契約制度とサラリーキャップの導入による選手獲得の戦略化

2026-27シーズンから導入が予定されている「B.PREMIER(Bプレミア)」におけるサラリーキャップ制度も、各クラブの補強戦略に大きな影響を与え始めている。島田慎二チェアマンが「ルールに違反した場合には厳正な対応を取る」と明言しているように、今後はより制度的な制約の中での補強合戦が加速するだろう。

また、外国籍選手の報酬に影響する為替基準も「1ドル=149.65円」と定められており、クラブの経営手腕がますます問われる局面に入ってきている。

今後の注目点:プレシーズンから見える戦力の化学反応

今回の契約発表により、複数クラブのチーム構成が明確化し始めた。特にFE名古屋のトーマス、北海道のオカフォー&ハーラーといった大型補強は、開幕前から注目の的となるだろう。

今後はプレシーズンマッチやトレーニングキャンプを通じて、新戦力がどのようにフィットし、既存戦力と化学反応を起こすかが問われる。補強の「量」だけでなく、「質」や「役割分担の最適化」も重要な鍵を握る。

来季2025−26シーズンのBリーグは、国内選手の成長に加え、国際色豊かな補強の成果にも注目が集まりそうだ。

Bリーグがサラリーキャップ制度を2026年導入へ、違反時は厳罰処分も示唆「温情は一切なし」

2026−27シーズンに始動予定のサラリーキャップ制度、Bリーグが運用方針を明示

Bリーグは2026−27シーズンからスタートするトップカテゴリー「B.PREMIER」の設立にあわせ、新たな制度改革の柱としてサラリーキャップ制度を導入する。この動きに関して、7月8日に実施された理事会後の記者会見にて、島田慎二チェアマンが制度の詳細と運用指針を明らかにした。

サラリーキャップ制度は、クラブにおける選手報酬に対し上限と下限を設定するもの。これは、戦力の均衡化を促進するとともに、クラブ経営の健全性を高め、持続可能なリーグ運営を実現するための重要な施策だ。島田チェアマンは「制度を導入するだけでなく、確実に守らせることが重要。温情や曖昧な対応は一切なし」と強調。リーグとして厳格な姿勢で臨む方針を示した。

「ルールを守らないクラブにはペナルティ」…厳罰方針の背景

今回の発表で最も注目を集めたのは、違反時の処分についての明言である。島田チェアマンは「制度を形骸化させてはならない。ルールに違反したクラブには降格などのペナルティを科す」と断言した。

この発言の背景には、これまで日本のプロスポーツ界において制度が 建前 になってしまい、実効性に乏しかったケースが少なくないという課題認識がある。Bリーグとしては、制度の信頼性と公平性を確保するためにも、あえて厳しい処分方針を示すことで、クラブに対して強い順守意識を促す狙いがある。

導入準備は万全に…クラブとの連携と事前のガイドライン整備

一方で、厳罰だけが制度運用の柱ではない。島田チェアマンは「各クラブが混乱なく制度に適応できるよう、具体的な運用ルールと想定事例を事前に共有する」と説明。リーグとクラブが一体となって準備を進めていく姿勢も打ち出した。

具体的には、報酬額の定義やインセンティブの扱い、選手の登録形態に応じた計上方法など、詳細な制度設計が進められており、今後は説明会やQ&Aセッションなども予定されているという。島田チェアマンは「制度を定着させるには、現場での理解と納得が不可欠」と語り、丁寧な運用支援を約束した。

外国籍選手の報酬も対象に…基準となる為替レートを初公表

制度のもうひとつの大きな柱が、外国籍選手に対する対応だ。サラリーキャップ制度では日本人選手だけでなく、外国籍選手の報酬も制度対象に含まれる。そのため、為替レートの基準設定が重要課題とされていた。

今回、リーグは2024年7月1日から2025年6月30日までの1年間の為替終値の平均値をもとに、2026−27シーズンの基準為替レートを「1ドル=149.65円」と設定。このレートは日本銀行の統計を基準にし、小数点第3位を四捨五入する形式で決定された。これにより、外国籍選手との契約時の換算基準が明確となり、クラブ側も計画的な年俸管理が可能となる。

世界基準に近づくBリーグの制度設計…NBAとの比較と注目点

NBAなどの主要バスケットボールリーグでは、サラリーキャップ制度はすでに中核的な制度として機能している。例えばNBAでは「ソフトキャップ」「ラグジュアリータックス」「ミッドレベル例外条項」など、多様な契約形態が存在する中で、全クラブに戦力のバランスと財務責任を求めている。

Bリーグもこれに近づくため、まずは「ハードキャップ(絶対的上限)」方式からスタートすると見られ、制度の成熟度に応じて柔軟な制度設計へ進化する可能性も示唆されている。

実際のチェック体制と違反事例への対応は?

実効性を確保するためには、制度違反を発見・是正する仕組みが不可欠である。Bリーグでは、第三者機関を通じた報酬査定や監査、リーグ独自の報告義務制度の導入などが検討されており、透明性と公平性を高める方向で制度設計が進行している。

違反事例が発覚した場合、降格・勝点剥奪・罰金など複数のペナルティが科される可能性があり、島田チェアマンも「実際に罰則を適用することが最大の抑止力になる」との認識を示している。

ファン・メディアからの反応と今後の注目点

今回の発表を受け、SNSやメディアでは「ついにBリーグが本格的なガバナンスに踏み込んだ」「曖昧な年俸問題にメスを入れる好機」といった好意的な評価が多く見られた。一方で、「罰則が形だけにならないか」「クラブ間で情報の非対称性が出ないか」といった慎重な声も上がっている。

制度の信頼性は、一部のクラブだけでなく、リーグ全体が公平なルールに基づいて運営されているという 共通認識 によって初めて成り立つ。島田チェアマンが主導する制度改革は、その土台づくりの第一歩だ。

まとめ:Bリーグが挑む次のステージ「競技力×経営力の両立」

サラリーキャップ制度の導入は、単なる財務管理の強化ではなく、「競技力と経営力の両立」というBリーグの本質的な進化を象徴する取り組みである。

制度開始まで約1年半。今後は各クラブの準備状況やリーグとの連携、現場の理解度が制度の成否を分けるカギとなるだろう。2026−27シーズン、Bリーグが新時代に向けてどのようなスタートを切るのか――その動向に注目が集まっている。