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モナコがユーロリーグで36点差の歴史的大勝。戦力差を超えた戦術的成熟とエフェス崩壊の全要因

モナコが36点差の大勝を記録した背景にある競技的構造

ユーロリーグ第13節でモナコがアナドル・エフェスを102-66で圧倒した一戦は、単に戦力が揃っていた側が勝利したというだけでは説明できない内容だった。36点差というスコアはクラブ史上最大で、前節のASVEL戦で更新したばかりの+28をさらに上回る新記録となった。結果そのものは明快だが、実際の試合は前半の均衡、後半の一方的展開、主力不在の影響、戦術的成熟など、複数の要素が重なりながら形成されている。この試合はユーロリーグの現代的なトレンドを読み解くうえでも重要で、両チームの構造がどのように噛み合い、どこで差が開いていったのかを整理して見る必要がある。

かつて拮抗していた対決が一方的になった理由

モナコとエフェスの対戦は以前は互角だった。しかし近年はモナコが連勝を重ねており、今回で4連勝となる。直近4試合の点差は+2、+12、+19、そして今回は+36と、試合を重ねるたびに差が広がっている。これには単純なロスターの充実だけでなく、チームとしての完成度の違いが大きく影響している。

今シーズンのモナコはローテーションの安定、戦術の徹底度、スター選手の配置バランスが高いレベルで噛み合っている。対してエフェスは大型補強を続けながらも、怪我人が続出したタイミングで試合を迎え、競争力を維持し切れなかった。今回の試合ではエフェスが主力4名を欠き、さらにクラブ側が「複数の選手が怪我を抱えながら無理をして帯同している」と認めたほどの厳しい状況に追い込まれていた。このような条件下では、過去の拮抗した構図は成立しなかったと言える。

ロースター状況が生んだミスマッチと序盤のエフェスの健闘

今回特に影響が大きかったのは、エフェスのガード陣の壊滅的な状態だ。シェーン・ラーキンとPJ・ドゥージャーが共に欠場し、ボールハンドラーとしての負荷が大きくワイラー=バブに集中した。彼は0/6、6ターンオーバー、評価値–10と厳しい内容だったが、彼自身の能力よりも、役割の過剰負担とローテーション崩壊による影響が大きかったと見るべきだ。

その一方で、元モナコのジョーダン・ロイドは13点5アシストと存在感を示し、夏にモナコが獲得を逃したイザイア・コルディニエも3P4/4を含む16点と活躍している。特に前半のエフェスは3Pを7/10と高確率で沈め、モナコの守備に穴を作りながらリードを奪う時間帯もあった。

それでも長くは続かなかった。試合のペースが上がり、ポゼッションの総量が増えるにつれて、より深いローテーションと組織力を持つモナコが徐々に主導権を握っていった。エフェスにとっては一瞬の集中力で局面をひっくり返す時間帯は作れたが、持続性は完全に欠いていた。

後半に試合が急激に傾いた構造的な理由

試合の流れが完全に変わったのは後半だ。モナコはここで攻守の精度を一段階引き上げ、エフェスはローテーション不足による運動量低下と判断の遅れが重なった。特にインサイドの守備が崩壊し、ドライブにもハイローにも対応しきれない場面が続いた。

モナコのスタッツはこの構造をよく表している。28アシスト、9ターンオーバー、2P成功率67%という数字は、単にシュートが入ったというより、質の高いショット選択が徹底されていたことを示す。後半のエフェスは守備ローテーションが遅れ、通常なら切れるはずのパスラインが空き続けたため、モナコは「自分たちが最も得意とする形」を何度も再現することができた。

主役陣の安定感とモナコの戦術的成熟度

個別に見ると、モナコの主力陣は非常に効率的に仕事をしていた。マイク・ジェームズは7点6アシストと控えめな数字ながら、ゲームメイクで試合をコントロールし、ダニエル・タイスは17点を獲得してP&Rの脅威として機能した。ケヴァリアス・ヘイズは12点を挙げ、ニコラ・ミロティッチは9点・7リバウンド・5アシスト・3スティールと総合的に貢献している。

特にミロティッチは守備面での評価が高く、ポジショニングとカバレッジの精度が後半の強度維持に大きく影響した。モナコの守備は個人能力だけで構築されているわけではなく、全体が同じリズムで反応し、ズレを修正するチームとしての成熟が見て取れる。

ベンチメンバーまで機能したモナコの強み

第4Qに入ると試合は完全にモナコの流れとなり、32-13という一方的なスコアで締めくくった。この時間帯では、普段出場の少ないヨアン・マクンドゥ(9点)、テリー・ターピー(5点)、そしてユーロリーグ初出場となるデイビッド・ミシノーまでがプレータイムを得ている。

それでも試合の質が落ちなかったのは、モナコがポジションに応じた役割とプレー構造を明確にしているからだ。どの選手が入っても攻撃の意図が変わらず、同じ形でスコアチャンスを作れることは、長いシーズンを戦ううえで決定的な強みとなる。

「7人ローテの限界」を露呈したエフェスと試合後の反応

イザイア・コルディニエが前半に「50失点は多すぎる」と語ったように、エフェスは前半から守備の綻びが顕著だった。後半にはこれがさらに悪化し、試合後には指揮官が「7人ローテではモナコのようなチームには太刀打ちできない」と語っている。

選手の負荷が極端に偏り、ハンドラー不足が続いたことで、攻撃でも単調さが増し、守備でもローテーションが途切れた。ユーロリーグのレベルでは、主力の欠場をロールプレイヤーだけで補うのは現実的ではなく、ロスター構成の脆さが一気に表面化した形だ。

モナコが示したユーロリーグ上位レベルの完成度

今回の勝利でモナコはリーグのトップ5に浮上した。2試合連続の大勝という結果は偶然ではなく、チームとしての成熟度、選手の役割遂行能力、戦術の再現性が高水準で整っていることを示している。特に後半の支配は、ローテーションの深さだけでなく、チーム全体が共通理解を持って動くユーロリーグ上位チーム特有の強さを映し出していた。

この勝利は順位以上に、モナコが今季のユーロリーグで本格的に優勝争いに絡む可能性を示す内容だった。読者の皆さんも、このチームがどこまで勝ち進むのか、ぜひ注目してほしい。


【執筆】GL3x3編集部(バスケ専門ニュースチーム)
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バルセロナ新政権がユーロリーグ開幕黒星:シャビ・パスクアル体制が迎えた試練の第一歩

シャビ・パスクアル復帰の開幕戦は黒星スタート

2025-26シーズンのユーロリーグが幕を開け、スペインの名門FCバルセロナは本拠地でアナドル・エフェス(トルコ)と対戦した。しかし結果はバルサにとって厳しいものとなり、復帰したシャビ・パスクアル新政権の初陣は黒星で始まった。欧州でも屈指の戦力を備えながら、試合の主導権を握りきれず落としたこの一戦は、シーズン開幕直後とはいえ大きな意味を持つ。

パスクアルは2008年から2016年までバルサを率いた名将であり、リーグ制覇やユーロリーグ優勝争いの常連だった時代を作り上げた人物でもある。その名将が再び戻ってきたことで、クラブ内外の期待は大きかった。しかし、初戦の敗北はバルサの現状が決して簡単ではないことを物語っている。

前半は優勢も後半で崩れたバルサ

試合の入りは悪くなかった。前半のバルセロナはテンポの良いパスワークと安定した守備でアナドル・エフェスに対してリードを奪い、ホームの観客を沸かせた。特にピック&ロールの展開から生まれるオフボールの動きが効果的で、外角シュートも高確率で決まっていた。

しかし後半になると、バルサの精度は徐々に落ち始める。アナドル・エフェスはフィジカルなプレッシャーを強め、1対1の状況を数多く作り出し、そこからのドライブやキックアウトで流れを掌握した。守備面でもスクリーンへの対応が綻び、ミスマッチを突かれ失点を重ねた。

最終クォーターでは、エフェスの外角が連続して決まり、さらにバルサが攻撃でリズムを崩したことで逆転を許す。終盤のクラッチタイムにおいて、バルサは判断の迷いと連携不足を露呈し、結果としてリードを守り切れなかった。

パスクアルが語った“移行期間の厳しさ”

試合後、シャビ・パスクアルは「移行期間に与えられた時間は多くない」と語り、チーム再建の難しさを率直に強調した。名将であっても、チームが抱える課題をすぐに解決できるわけではない。選手構成、戦術理解度、ローテーションの最適化、そしてメンタル面など、多くの要素を組み直す必要がある。

バルセロナはこの数年、国内リーグでもユーロリーグでも安定した成績を残せていない。レアル・マドリードが黄金期に突入し、バレンシアやバスコニアも力をつける中、バルサは「再起のプロセス」にいる。このタイミングでのパスクアル復帰は、クラブ改革の象徴と言えるが、今回の敗戦はその改革が簡単ではないことを改めて示した。

アナドル・エフェスの強さが際立った後半戦

アナドル・エフェスはここ数年のユーロリーグで常に優勝候補に挙げられるトップクラブであり、近年リーグ制覇も経験している。個人能力の高さに加え、チームとしての完成度が非常に高く、後半のバルサの失速を逃さず確実にスコアへつなげた。

特にバルサの守備が崩れた要因としては以下が挙げられる。

・スクリーンディフェンスの迷い
・ローテーションの遅れ
・1対1対応で後手に回った
・ベンチユニットのディフェンス強度不足
・外角シュートに対するクローズアウト不足

これらが重なり、後半だけで見るとエフェスが完全に主導権を握った内容だった。欧州トップレベルの攻防において、わずかな判断の遅れが失点につながるという典型例と言える。

欧州バスケの現実:細かな差が勝敗を分ける

ユーロリーグは世界でも最も戦術レベルが高いと言われるリーグであり、40分間のどこを切り取っても高密度の駆け引きが存在する。今回の試合は、以下のような“細部の差”が勝敗につながることを改めて示した。

・3秒の判断遅れが失点につながる
・ターンオーバー1つが流れを変える
・リバウンドの1本で試合のテンポが変わる
・クロージングの数ポゼッションで勝敗が分かれる

前半を優位に進めたバルサも、後半に要求される強度と精度を保てず、エフェスの試合巧者ぶりに屈した格好となった。ユーロリーグの戦いは、この「わずかな差」を埋められるかどうかが重要であり、名門バルサといえど例外ではない。

バルサが抱える構造的課題

今回の敗戦は単なる黒星ではなく、クラブが抱えるいくつかの課題を浮き彫りにした。

・ロスターの再構築
経験豊富なベテランと伸び盛りの若手の組み合わせは、魅力的ではあるが安定性に欠ける場面もある。

・戦術浸透不足
パスクアルの戦術は高度かつ緻密であり、短期間で浸透させるのは容易ではない。

・クラッチタイムの弱さ
近年のバルサは接戦での勝ち切りが課題であり、今季も改善の兆しはまだ見えていない。

・リバウンドの安定感不足
インサイドの高さやフィジカルで苦戦する試合が増えている。

これらは長期的な視点で解決すべき問題であり、パスクアルがどのようにアプローチしていくかは今後の大きな焦点だ。

スペイン4大クラブの中での立ち位置は?

スペインにはユーロリーグ常連の強豪が多く、バルセロナの現状は国内競争にも直結する。

・レアル・マドリードは依然として安定感抜群
・バスコニアは攻撃力で勝負
・バレンシアは着実に戦力を強化
・バルサは改革途上で浮き沈みが大きい

バルセロナは依然として“ブランド力”と“潜在能力”ではトップクラスだが、現実的なパフォーマンスは他クラブより一歩遅れていると言わざるを得ない。ただしシーズンは始まったばかりであり、パスクアル体制がフィットし始めれば後半戦での反転攻勢も十分に可能だ。

開幕黒星の先にあるもの

ユーロリーグは長丁場であり、開幕戦の敗北がそのままシーズン全体の結果に直結するわけではない。むしろ今の段階で課題が明確になったことは、パスクアルにとってポジティブな材料でもある。

彼はこれまでも戦術理解を重視し、細部にこだわるスタイルでチームを改善してきた指揮官だ。今回の敗戦も、彼の哲学に基づいた再調整によってチームを成長させる材料になるだろう。

バルサのシーズンはまだ始まったばかりだ。名門クラブとしての誇りを取り戻せるか。パスクアル体制の真価が問われるのは、ここからである。