ニュース概要
プレステージ・インターナショナル アランマーレ(Prestige International Aranmare)は、秋田県秋田市を拠点とする女子バスケットボールチームで、Wリーグ・フューチャーディビジョンに所属している。2015年に企業チームとして創設され、2021–22シーズンにWリーグへ正式参入。企業理念である「地域を元気に」「女性の活躍支援」を体現するチームとして注目を集めている。
背景と歴史的文脈
チームを運営するプレステージ・インターナショナルは、秋田に本社を置くBPO事業を展開する企業である。地域創生と女性活躍を掲げ、2015年にアランマーレを設立。チーム名はイタリア語の「オレンジ(arancia)」と「海(mare)」を組み合わせた造語で、明るさと広がりを象徴している。
初代ヘッドコーチには元Wリーガーの吉田沙織が就任し、秋田公立美術大学体育館を拠点に始動。2018年に地域リーグへ参戦し、2019年にはデンソーアイリス前HCの小嶋裕二三が指揮を執る体制に移行。戦術・育成両面での基盤整備が進んだ。
2020年6月、Wリーグ参入が正式発表され、これは2004年のトヨタ紡織サンシャインラビッツ以来17年ぶりの新規加盟である。2022年1月15日、東京羽田ヴィッキーズ戦での初勝利は、秋田女子バスケットボール史における象徴的な瞬間となった。
選手・チームのプロフィール
チームはプレステージ・インターナショナルの女子社員を中心に構成されつつ、全国から有望選手を獲得している。チームカラーはオレンジとブルー。マスコット「アラマ」はチームの象徴であり、ファンイベントなどでも親しまれている。
小嶋裕二三ヘッドコーチはデンソーアイリスでの豊富な指導経験を持ち、ディフェンス意識と規律を重視するスタイルを導入。アシスタントには元秋田ノーザンハピネッツの高橋憲一が就任し、戦術的な分析と育成支援の両輪でチームを支えている。
試合・出来事の詳細
2021–22シーズンは2勝22敗で12位(13チーム中)。Wリーグ初年度としては厳しい船出となったが、翌2022–23シーズンでは8勝18敗で10位に浮上。さらに経験を重ねた2023–24シーズンは4勝22敗で13位と再び低迷するも、若手選手の台頭が光った。
皇后杯では3季連続で3回戦に進出。強豪相手に接戦を演じるなど、戦力差を少しずつ埋めつつある。ホームゲームはCNAアリーナあきたなどで開催され、地域企業や学校と連携した「バスケ×地域」イベントも積極的に実施している。
戦術・技術・スタイル分析
アランマーレのオフェンスはピック&ロールを軸に、ハイポストからの展開を多用する。ガード陣のスピードを活かし、ボールムーブメントと外角シュートでリズムを作る戦法だ。特にエルボー付近での2メンアクションや、ウィークサイドカッティングの精度が年々向上している。
ディフェンスではマンツーマンを基本にしつつ、3×3的なヘルプ・リカバリーの速さを意識。守備から攻撃へ素早く切り替える「ファストブレイクバスケ」を志向し、体力と判断力を両立させるスタイルを目指している。
ファン・メディア・SNSの反応
地元秋田では「女子スポーツの象徴」として認知が拡大。SNS上では「秋田から世界へ」「努力が見えるチーム」といった声が多く、地域メディアも積極的に特集を組んでいる。マスコットのアラマは子どもたちに人気で、試合会場でのフォトスポットは常に賑わいを見せる。
また、Wリーグ公式や各メディアが取り上げる「地方発クラブの成功モデル」として、企業CSRと競技強化を両立するチーム運営にも注目が集まっている。
データ・記録・統計情報
| シーズン | 勝 | 敗 | 順位 | 皇后杯 |
|---|---|---|---|---|
| 2021–22 | 2 | 22 | 12位(13) | 3回戦 |
| 2022–23 | 8 | 18 | 10位(14) | 3回戦 |
| 2023–24 | 4 | 22 | 13位(14) | 3回戦 |
通算成績では苦戦が続くが、得点効率(OffRtg)やターンオーバー率(TOV%)の改善が見られ、2025–26シーズンには中位争いへの浮上が期待される。3P成功率も年々向上しており、スペーシング重視のオフェンスが定着しつつある。
リーグ全体への影響と比較分析
アランマーレのWリーグ参入は、地方企業による女子スポーツ支援の象徴的事例である。トヨタ系やENEOSのような全国ブランドチームとは異なり、地域密着型の実業団として持続可能なモデルを提示している。
同様に企業系チームとして再評価されるSMBC東京ソルーア、日立ハイテククーガーズとの比較でも、アランマーレは「地域貢献×競技志向」のバランスが際立つ。秋田ノーザンハピネッツとの連携イベントも増加し、男女バスケの一体的な盛り上げを図っている。
こうした取り組みは、今後のWリーグ全体の地方展開に影響を与える可能性が高い。地方発クラブが持つ経済的・文化的価値が再定義される中、アランマーレはその先駆けといえる存在だ。
今後の展望とまとめ
2025–26シーズンに向け、チームは若手中心の育成路線を維持しながら、即戦力補強による競争力向上を目指している。クラブ運営面ではスポンサー拡大と地域貢献プログラムを強化し、「秋田から全国へ発信する女子スポーツブランド」としての立場を確立しつつある。
小嶋裕二三HCのもと、チームの方向性は明確だ。ディフェンス強度とボールシェアの徹底により、組織的な成長を続ける。アランマーレの物語は、単なる勝敗を超え、女子バスケットボールの未来像を示すプロジェクトへと進化している。
秋田の地で生まれたこのチームが、どこまでWリーグの構造を変え、女子スポーツ文化を広げていくのか。今後もその挑戦は多くのファンと地域に希望をもたらすだろう。