多嶋朝飛、新章へ──B3さいたまブロンコスで再スタート
1988年10月8日生まれ、北海道帯広市出身のポイントガード・多嶋朝飛が、2025–26シーズンよりB3リーグ・さいたまブロンコスに加入した。長年にわたりB1・B2の舞台でプレーしてきたベテラン司令塔が、キャリア15年目にして新たな挑戦へと歩みを進める。冷静なゲームメイクと高精度なシュートで知られる彼の加入は、ブロンコスにとって大きな戦力補強となる。
北陸高校から東海大学へ──学生時代に磨かれた「リーダーシップ」
帯広大空中学校から北陸高校(福井)に進学し、全国トップクラスの高校バスケットで経験を積んだ多嶋。東海大学進学後は、関東大学リーグで優勝選手賞・MIPを受賞し、その卓越したバスケットIQと判断力で評価を高めた。特に「状況を読む力」に優れ、プレー選択の的確さとチームを落ち着かせる統率力は、すでに学生時代から際立っていた。
プロキャリアの始まり:リンク栃木ブレックスでの挑戦
2011年、リンク栃木ブレックス(現・宇都宮ブレックス)と育成契約を結び、プロキャリアをスタート。JBL登録を経て、育成リーグTGI D-RISEでも経験を積んだ。スピードと冷静さを兼ね備えたプレーで評価を受け、翌年には本契約を勝ち取るなど、地道な努力で階段を上っていった。
地元・北海道での黄金期:レバンガ北海道の象徴的存在に
2013年、地元・北海道のクラブであるレバンガ北海道に移籍。以降8シーズンにわたりチームを支え、ファンから絶大な支持を集めた。173cmという小柄な体格ながら、鋭いドライブイン、約9割の成功率を誇るフリースロー、そして試合終盤のクラッチプレーでチームを引っ張る姿は、北海道バスケットの象徴とも言われた。甘いルックスとスマートな立ち振る舞いも相まって、女性ファンを中心に人気を集めた。
移籍を重ねて磨かれた「ゲームマネジメント能力」
2021年には茨城ロボッツへ、2023年には大阪エヴェッサ、そして2024年には仙台89ERSへと移籍。各チームで異なる戦術や選手層の中で、試合のテンポを読む能力やリーダーシップをさらに進化させた。試合の流れを読み取り、必要なときにスコアを狙い、仲間を活かすプレーを展開。どのチームでも「戦術理解力の高さ」と「信頼される司令塔」として評価を得ている。
さいたまブロンコス加入の背景:リーダーシップの継承と再生の象徴
2025年6月、さいたまブロンコスが正式に多嶋朝飛との契約を発表。クラブは近年、地域密着型チームとして再構築を進めており、経験豊富なリーダーの存在が不可欠とされていた。多嶋の加入は、若手育成とチーム文化の再構築を象徴する動きだ。クラブは「彼の冷静さと勝負勘が、チームに安定と自信をもたらす」とコメントしている。
プレースタイル:小柄ながらも戦略的な司令塔
173cm・73kgとBリーグでは小柄な部類に入る多嶋だが、そのプレーは極めて戦略的。スピードを活かしたドライブ、タイミングを見極めたピック&ロール、そして正確なジャンプショットでディフェンスを翻弄する。また、試合中の表情を崩さず、ミスをしても感情を表に出さないメンタリティは、若手選手の模範でもある。
認知判断力の高さが生む“静のバスケ”
多嶋の最大の強みは、「認知判断力の高さ」にある。プレー中、彼は常に相手のディフェンスのズレを観察し、ワンテンポ先の選択を行う。コート上での“静のバスケ”とも言われるスタイルは、派手さよりも合理性を重んじ、効率的にチャンスを作り出す。これは現代バスケットが求める「思考するポイントガード」の理想像そのものだ。
数字で見る多嶋の安定感
キャリア通算では平均得点7点前後、アシスト3本台をキープ。スリーポイント成功率は35%前後、フリースロー成功率は90%近くに達する。特筆すべきはターンオーバー率の低さで、1試合あたり1.2回前後と非常に安定している。これらのデータが示すように、派手さではなく「確実性」でチームに貢献するタイプの選手だ。
B3リーグの視点から見る多嶋加入の意義
B3リーグは現在、若手育成と地域活性化を両立させるプラットフォームとして機能している。その中で、B1・B2経験豊富な多嶋の存在は、リーグ全体のレベルアップにも寄与する。試合の質を高め、観客動員やメディア露出にも好影響を与えることが期待されている。さいたまブロンコスにとっては、単なる補強ではなく「チーム哲学の核」となる人物の獲得といえる。
ファンの声とメディアの反応
加入発表直後、SNSでは「多嶋選手のバスケIQをブロンコスの若手に伝えてほしい」「まだまだトップレベルで見たい」といったコメントが多数寄せられた。Bリーグ公式アカウントでも「経験と知性の融合」と紹介され、注目度の高さを証明した。彼の“静かなリーダーシップ”がどのようにチームを変えるのか、多くのファンが期待を寄せている。
まとめ:冷静さと知性で導くベテランPGの新章
多嶋朝飛のキャリアは、常に「考えるバスケット」とともにあった。サイズのハンディを克服し、知性と判断力で勝負してきた彼にとって、さいたまブロンコスでの挑戦は「経験の伝承」と「再出発」の両面を持つ。B3という新しい舞台で、彼がどのようにチームと自身を進化させていくのか──そのプレーは、若手育成と日本バスケの成熟を象徴するものになるだろう。