台湾バスケ」タグアーカイブ

高雄全家海神、新加入ボグダン・ブリズニュクのトリプルダブルで6連敗ストップ

高雄全家海神、新加入ブリズニュクが圧巻のトリプルダブルで6連敗を止める

台湾職業籃球大聯盟(TPBL)において、苦しいトンネルを抜け出せずにいた高雄全家海神が、ようやく重要な一勝を手にした。桃園台啤永豐雲豹との対戦で112-90の快勝。これまで続いていた6連敗を断ち切っただけでなく、チームに新たな方向性と勢いをもたらす試合となった。その中心にいたのが、新加入したばかりのボグダン・ブリズニュク(Bogdan Bliznyuk)。デビュー戦ながら28得点・11リバウンド・12アシストという驚異的なトリプルダブルを達成し、攻守両面で圧倒的な存在感を放った。

ブリズニュクが見せた“万能型フォワード”としての価値

ブリズニュクのプレースタイルは、単なるスコアラーでは終わらない。高い視野、正確なパス、強度のあるドライブ、そしてリバウンドへの読みのすべてが揃った万能型フォワードだ。試合の序盤から積極的にゲームに関与し、ボールを受けてはペイントアタック、もしくは外角へ正確なキックアウトを展開。彼のプレイメイクによって海神のオフェンスは常に良いテンポを維持し、雲豹ディフェンスを崩し続けた。

特に注目すべきは、相手がスイッチを多用する時間帯においても、ブリズニュクが的確にミスマッチを突き続けた点である。大きな相手にはスピードで翻弄し、小さな相手には体格差を使ってリングへ向かう。その柔軟なアタックにより、雲豹はディフェンスの選択肢が限られ、ローテーションの乱れを生むことになった。

試合の流れを左右した第3クォーターの爆発

海神が主導権を握ったのは第3クォーターだ。この時間帯にブリズニュクが完全に試合をコントロールし、雲豹を突き放すきっかけを作った。リバウンドを確保した瞬間に速攻へ移行し、アウトナンバーの状況を次々と作り出す。アシストの多くはこのクォーターに集中しており、オフェンスの中心として攻撃を加速させた。

さらに、彼自身の得点も高確率で決まり、ドライブとジャンプショットのバランスが非常に良かった。ブリズニュクがボールを持つだけでディフェンスが収縮し、周囲のシューターが打ちやすくなるという理想的なオフェンスの循環が生まれた。この時間帯に点差が大きく開き、試合の流れは完全に海神へ傾いた。

海神が抱えていた“後半の失速”という課題の克服

連敗中の海神は、前半こそ互角でも後半で失速するパターンが続いていた。特にオフェンスが止まり、ディフェンスもスクリーン対応が甘くなるなど、戦術面・フィジカル面ともに苦しさを見せていた。

しかし、この日はブリズニュクの加入が流れを変えた。彼がハーフコートオフェンスを落ち着かせることで、海神は最後まで攻撃の形を維持。無理な1on1に頼らず、ボールが動き続ける状態が保たれた。結果として、試合終盤にありがちな“膠着状態”が起きず、リードを保ったまま余裕を持って試合を締めることができた。

メンタル面の変化も大きい。6連敗という重いプレッシャーを背負う状況で、新加入選手が圧倒的なプレーを見せることは、チーム全体の空気を一気に変える。ロッカールームは間違いなく明るさを取り戻し、選手たちも「勝ちきれる感覚」を得た試合となった。

雲豹ディフェンスの課題と崩れたローテーション

桃園台啤永豐雲豹にとって、この試合はディフェンスの脆さが目立つ内容となった。特に外角のローテーションが遅れ、ブリズニュクがパスを回し始めた瞬間に後手へ回る形が続いた。個人ディフェンスでは健闘している時間帯もあったが、海神が意図的にスペーシングを広げたことで、雲豹はヘルプとリカバリーの距離が長くなり、対応しきれない場面が増えた。

また、トランジションディフェンスでも課題が浮き彫りになった。ブリズニュクがリバウンドを取った瞬間に速攻を仕掛けるため、雲豹は走り負ける場面が多く、結果として失点がかさむ展開に。試合中盤から終盤にかけて改善の兆しは見えたものの、点差を詰めきるだけの強度と精度は保てなかった。

海神にとっての勝利の意味とチームへの影響

今回の勝利は、海神にとってシーズンの転換点となる可能性が高い。6連敗という状況で新加入選手が即戦力どころか“チームの中心”として活躍したことは、戦術面だけでなくメンタル面でも大きな後押しになる。

ブリズニュクの加入によって実現したポイントは以下の通りである。

・攻撃の停滞が解消され、ハーフコートの選択肢が増えた
・プレッシャーの中でも安定したゲームメイクが可能になった
・既存選手の役割分担が明確化され、無理なプレーが減少
・リバウンドとアシストで主導権を握れるため、試合全体の流れを管理しやすい
・後半の強度が維持されるようになり、勝ち切る力が向上

この勝利は単なる1勝ではなく、チーム全体の方向性を改善し、今後の上位争いへ復帰するための足がかりとなる。

ブリズニュクという選手がもつ“将来的インパクト”

ブリズニュクは欧州で実績を積み、多彩な役割をこなせる選手として知られている。台湾リーグのスタイルとも相性が良く、フィジカル・スキル・IQのバランスが非常に高い。彼が安定してプレイメイクできることで、海神の攻撃は今後さらに多様化していく可能性が高い。

また、相手チームにとっても対応が難しいタイプであり、一人で複数の役割を兼ねる能力はシーズンが進むほど効果を発揮する。彼の存在を軸に、海神がどのようなチームに変化していくのか注目が集まる。

総括

高雄全家海神が桃園台啤永豐雲豹を112-90で下し、6連敗をようやく止めたこの試合は、新加入ボグダン・ブリズニュクのトリプルダブルが象徴するように、チームに大きな変革をもたらす内容だった。攻守のバランス、ゲームメイク、リバウンド、アシストのすべてが改善され、試合全体を通して主導権を握る理想的な展開に。シーズンの流れを変える起点として、この1勝は今後の海神にとって非常に重要な意味を持つだろう。

T1リーグ解散の真相|台湾バスケ界の再編とTPBL誕生の背景

T1リーグとは

T1リーグ(T1 League)は2021年に創設された台湾の男子プロバスケットボールリーグで、台湾バスケの新たな時代を切り拓く存在として注目を集めた。P. League+(PLG)と並び、国内トップクラスの選手が集うリーグとして3シーズンにわたって開催されたが、2024年夏に事実上の解散を迎えた。

創設から解散までの経緯

  • 2021年5月:T1リーグ設立。初年度は6チームでスタート。
  • 2023-24シーズン:リーグ3年目に突入するも、チーム数・財務面での課題が表面化。
  • 2024年7月9日:新たなプロリーグ「TPBL(Taiwan Professional Basketball League)」発足。T1加盟チームの多くが移行し、T1は実質的に活動停止。

解散の主な理由

① 財務・運営基盤の脆弱化

T1リーグは創設からわずか3年で財務的困難に直面した。加盟クラブの中には運営資金を確保できず、リーグ基準を満たせないチームも出てきた。2023年9月には「台中サンズ(Taichung Suns)」が財務基準未達を理由に除名処分を受け、以後リーグの存続自体が不安視されていた。

② 不祥事・ガバナンス問題

2023年から2024年にかけて、選手による賭博関与事件が発生。台南TSGゴーストホークス(Tainan TSG GhostHawks)の選手が試合関連の賭博行為を認め退団するなど、リーグの信頼性を揺るがす出来事となった。リーグ全体としてもガバナンス体制の甘さが批判され、スポンサー離れを招いた。

③ 台湾バスケ界の再編・統合

当時、台湾にはP. League+(PLG)、T1 League、Super Basketball League(SBL)と複数リーグが並立しており、観客・選手・スポンサーが分散していた。統一リーグ創設への動きが進む中で、T1加盟チームの多くが新リーグTPBLに移籍。これによりT1は自然消滅的に吸収再編された。

加盟チームのその後

T1に参加していた主要クラブの多くは、新リーグTPBLへ移行した。

  • 台北タイシン・マーズ(Taipei Taishin Mars) → TPBLへ加盟
  • 高雄アクアス(Kaohsiung Aquas) → TPBLへ加盟
  • 新北CTBC DEA → TPBLへ加盟
  • 桃園ビア・レオパーズ(Taoyuan Leopards) → TPBLへ加盟

一部チームは活動休止または再編中だが、リーグ全体としてはTPBLへの移行によって「国内統一リーグ化」へと舵が切られた形だ。

TPBL誕生とその意義

TPBLは2024年7月に設立され、台湾初の完全プロフェッショナルリーグを標榜している。7チーム体制でスタートし、ドラフト制度、外国籍選手枠、放映権収益分配など、近代的なプロスポーツ運営を取り入れた。T1からの移行組が多数を占めるため、実質的には「T1の後継リーグ」として機能している。

リーグ統合の背景にある課題

  • 観客動員・スポンサー収入の限界(市場規模が小さい)
  • クラブ間の資金格差と選手流動性の不足
  • リーグ運営会社間の競争によるブランド混乱

こうした問題を解消するため、台湾では「リーグ再編」「共通基準の導入」「放映権の一本化」などが議論され、TPBLがその実験台として期待されている。

まとめ

T1リーグの解散は、単なる経営失敗ではなく、台湾バスケットボール界が「分裂」から「統合」へと向かう過程における必然的なステップでもあった。新リーグTPBLの誕生は、その教訓を踏まえた再出発を意味している。今後はPLGとTPBLという二大リーグ体制のもとで、台湾バスケがどのように成長し、国際的競争力を高めていくかが注目される。

ジョン・パトリックが台湾新北キングスの新HCに就任!千葉Jで歴史を作った名将がアジアで再出発

名将ジョン・パトリック、台湾プロバスケ・新北キングスの指揮官に就任


2025年7月9日、台湾のプロバスケットボールクラブ「新北キングス」は、元千葉ジェッツHCのジョン・パトリック氏を新たなヘッドコーチとして迎え入れることを正式発表した。パトリック氏は日本バスケ界でも豊富な経験と輝かしい実績を持つ指導者であり、今回の就任は台湾リーグTPBLにとっても大きな話題となっている。

新北キングスは、2024年に発足したTPBL(Taiwan Professional Basketball League)において初代王者に輝いた強豪。チームには元NBA選手でアジア圏で圧倒的な人気を誇るジェレミー・リンが所属しており、攻守にわたりアグレッシブなスタイルを展開することで知られている。そんなチームが2025年シーズンに向けて選んだ新指揮官が、日本でB1歴代最高勝率や2冠を成し遂げたパトリック氏だった。

千葉ジェッツでの偉業:勝率.883、24連勝、天皇杯制覇

ジョン・パトリック氏(57歳)は、アメリカ出身ながら近畿大学に留学経験を持ち、日本バスケットボールとの結びつきが深い。JBL時代にはトヨタ自動車アルバルク(現・アルバルク東京)を指揮。その後、ドイツリーグで最優秀ヘッドコーチ賞を受賞し、国際的にも高く評価された実力派だ。

2022年に千葉ジェッツのヘッドコーチに就任すると、その手腕が瞬く間に発揮され、就任初年度にはB1史上最長となる24連勝を記録。シーズン勝率.883(53勝7敗)はB1歴代最高であり、2023−24シーズンには東アジアスーパーリーグと天皇杯の2冠を獲得。名実ともに「勝てるチーム」を作り上げた。

彼のバスケはディフェンスを土台としたハードなスタイルと、選手の自立を促すマネジメントが特徴。実績だけでなく、指導哲学の面でもチームに強い影響を与えるタイプのコーチだ。

台湾の新リーグ「TPBL」と新北キングスの挑戦

TPBLは2024年に新たに設立された台湾のプロリーグであり、元P.LEAGUE+やT1リーグのクラブが再編・統合される形でスタートした。リーグの初年度王者となったのが新北キングスであり、ジェレミー・リンや高身長外国籍選手の起用など、グローバル視点での編成が特徴だ。

昨季、チームを率いたライアン・マルシャンHCはリーグ最優秀コーチ賞に輝いたが、今オフに日本のB2クラブ「福島ファイヤーボンズ」への移籍が決定。後任探しが急務となる中で白羽の矢が立ったのが、実績と知名度を兼ね備えたパトリック氏だった。

GMの言葉:「ゴッドファーザーのような存在」


新北キングスのゼネラルマネージャーであるジェームス・マオ氏は、パトリック氏の就任にあたり以下のようにコメントした。

「パトリックはまるで ゴッドファーザー のような偉大な指導者。国際的な視野と経験を兼ね備え、これまで数々のチームを再構築してきた。キングスを次なる優勝へ導いてくれると確信している」

このように、台湾のバスケット界からも大きな期待が寄せられていることがわかる。

選手たちへの影響と展望:リンとの融合、新戦術は?

パトリック氏の指導下で最も注目されるのは、ジェレミー・リンとの化学反応だ。NBA、CBA、PBAなどを経験してきたリンにとっても、国際的な知見を持つ指導者とのタッグは刺激になるはずだ。

また、パトリック式ディフェンス重視バスケが台湾リーグの中でどのような効果を発揮するかも注目される。特に速攻重視のアジア系バスケにおいて、パトリックの「ハードDからのオフェンス」は強力な武器となる可能性がある。

Bリーグとの対比と移籍動向:今後の帰還も視野?

Bリーグファンにとってもパトリックの去就は関心事だ。彼の千葉J退任後、後任のHCがどうチームを引き継ぐのか、また今後パトリック氏が再びBリーグに復帰する可能性も否定できない。

実際、2024−25シーズンは日本の複数クラブでもHC交代が続いており、「勝たせられる外国人HC」は争奪戦となっている。TPBLでの成果次第では、数年以内のBリーグ復帰、または日本代表のアシスタントなどの選択肢も見えてくるだろう。

まとめ:アジア全体のバスケ成長を象徴する存在へ


ジョン・パトリックの台湾行きは、単なる1クラブの補強にとどまらず、アジアバスケットボール界の成長と多様性を象徴する事例とも言える。日本、ドイツ、そして台湾を渡り歩く中で蓄積された指導哲学と戦術は、今後のアジアバスケに新たな刺激をもたらすことだろう。

これまでにもBリーグとCBA、KBL、PBAなどアジア各国間でのコーチ・選手の交流は進んでいたが、今回のような「日本で実績を残した指導者が台湾に行く」流れは、TPBLの国際化と成熟の証でもある。

今後、新北キングスがパトリックの下でどんなバスケを見せてくれるのか。アジアのバスケファンは大いに注目している。