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【CBA/江蘇同曦モンキーキング】“孫悟空”の名を冠したCBAクラブの挑戦と軌跡

ニュース概要

江蘇同曦大聖籃球倶楽部(英: Jiangsu Tongxi Monkey King Basketball Club)は、中国・江蘇省常州市を本拠地とするプロバスケットボールクラブで、中国男子プロリーグ「CBA(中国バスケットボール協会)」に所属している。クラブ愛称「モンキーキング(Monkey King)」は、中国の伝説的人物・孫悟空(斉天大聖)をモチーフとしており、チームスピリットである“反骨と自由”を象徴する。

創設と初期の歩み

クラブは2007年10月、南京同曦投資発展有限責任公司(Nanjing Tongxi Investment Development Co., Ltd.)の出資によって創設された。当初は南京市を本拠地とし、ホームアリーナを江寧区スポーツセンター体育館に置いた。2008年から中国男子二部リーグ「NBL(全国男子バスケットボールリーグ)」に参戦し、堅実な運営と若手育成によって成長を続けた。

NBLからCBAへの昇格

2013年、クラブはCBA昇格を目指すため、一時的に安徽省合肥市へ拠点を移した。この移転は、より充実した施設環境と広域マーケットを活用するための戦略的措置であった。2014年、NBLから2チームがCBAに昇格する際、同曦は重慶翺龍(現・北京ロイヤルファイターズ)とともに昇格枠を獲得。CBA参入が正式決定した。

同年、ホームタウンを江蘇省常州市に再び移転し、常州オリンピックスポーツセンターと南京江寧スポーツセンターの2施設を併用してホームゲームを開催する体制を構築した。

チーム名称と“Monkey King”の象徴性

チーム名「大聖(モンキーキング)」は、中国文学『西遊記』の英雄・孫悟空(斉天大聖)に由来する。強靭な精神力、型破りな発想、そしてどんな困難にも立ち向かう姿勢を体現する象徴として採用された。ロゴには躍動する猿のシルエットが描かれ、スピードと闘志を表現している。

CBAでの戦いと特徴

昇格以降、江蘇同曦は「スピードバスケット」を代名詞とし、ガード陣を中心としたトランジションオフェンスを展開。大型クラブに比べて選手層は厚くないが、攻撃テンポと3ポイント精度の高さで勝負するスタイルを確立している。

CBA全体の中でも、外国籍選手の活躍がチーム力を支える傾向が強い。特に2015年シーズン以降、アメリカ出身のフォン・ウェイファーやジャマイカ出身のジェローム・ジョーダンといった実力者を補強し、チームの攻撃力を一段引き上げた。

主な所属選手

  • フォン・ウェイファー(Von Wafer) — 元NBA選手。爆発的な得点力を誇るスコアラーとしてCBAでも存在感を示した。
  • ジェローム・ジョーダン(Jerome Jordan) — ジャマイカ代表センター。高さとフィジカルを活かしリバウンドとブロックで貢献。

ホームアリーナと地域連携

現在のホームアリーナは、南京青奥体育公園(Nanjing Youth Olympic Sports Park)。この施設は最新の照明・映像演出設備を備え、CBAの中でもトップクラスの観戦環境を誇る。地域の学生バスケ大会やジュニア育成プログラムも同施設で開催され、地域スポーツ振興の中心として機能している。

運営とクラブ哲学

運営母体である南京同曦投資発展は、教育・不動産・スポーツ事業を多角的に展開する企業グループであり、クラブ経営にもビジネス的視点を導入している。その哲学は「バスケットボールを通じて地域の誇りを育む」というもの。クラブは江蘇省の地域振興とスポーツ文化形成に貢献しており、南京・常州を中心に根強いファンベースを築いている。

現在と今後の展望

江蘇同曦モンキーキングは現在、CBA南地区で中堅クラスの位置を占める。若手選手の台頭が著しく、ローカル育成出身のプレイヤーがスタートローテーションに食い込むケースも増えている。今後の課題は守備の安定性とリバウンド確保であり、フィジカル強化プログラムの導入が進行中である。

一方で、CBAの中で最も象徴的なチーム名を持つクラブとして、ブランディング面の強みを活かしたファン拡大にも注力している。中国国内だけでなく、アジア市場向けのマーケティング展開も視野に入れており、“孫悟空スピリット”を世界に発信するクラブを目指している。

まとめ

江蘇同曦モンキーキングは、比較的新しいクラブでありながら、独自の文化と哲学を築いてきた。昇格から10年を経て、CBA内での地位を確立しつつある同クラブは、“挑戦者の象徴”として今後も注目される存在だ。孫悟空のように、逆境を力に変える戦いを続けるその姿は、中国バスケットボールの成長を象徴している。

【CBA/北京ロイヤルファイターズ】マーブリー率いる“紫と金”の挑戦:創設から現在までの軌跡

ニュース概要

北京紫禁勇士籃球倶楽部(英: Beijing Royal Fighters Basketball Club)は、中国・北京市を本拠地とするプロバスケットボールクラブで、中国バスケットボール協会(CBA)に所属している。チームカラーは紫と金。ヘッドコーチは元NBAスターのステフォン・マーブリー。近年では“ロイヤルファイターズ”の名で知られ、首都・北京を象徴するチームとして注目を集めている。

創設と初期の歩み

このチームの起源は2009年、広州で設立された「広州自由人籃球倶楽部(Guangzhou Free Man Basketball Club)」にさかのぼる。設立当初はNBL(中国2部リーグ)に所属していたが、CBA昇格を果たせず2012年に一度解散。その後、同組織を基に2013年に「重慶翺龍男子籃球倶楽部(Chongqing Fly Dragons)」として再建された。

重慶時代はホームを重慶大田湾全民健身センターに置き、2014年にCBAへの昇格が正式決定。江蘇同曦大聖とともに新たなCBAクラブとして加わった。

北京移転とクラブ再編

2016年、北京控股グループがチームを買収し、名称を「北京控股翺龍籃球倶楽部(Beijing Fly Dragons)」へ改称。これにより、ホームを北京市の国家オリンピックスポーツセンター体育館へ移転した。企業資本の支援を受け、経営体制は大幅に強化された。

2019年にはクラブブランディングを刷新し、「北京紫禁勇士籃球倶楽部(Beijing Royal Fighters)」として再出発。名称の“紫禁”は北京の象徴である「紫禁城(故宮)」に由来し、首都チームとしての誇りを示す。

ステフォン・マーブリーの就任

2019年、元NBAオールスターのステフォン・マーブリーがヘッドコーチに就任。現役時代、CBA・北京ダックスを3度の優勝に導いた実績を持ち、北京では“伝説的英雄”として知られる。彼の就任は、クラブの戦略的転換を象徴する出来事だった。

マーブリーは攻守の切り替えを重視したアップテンポ・スタイルを導入し、若手育成とスター選手の融合を推進。チームのプレースタイルは「速い展開と高強度の守備」を軸とし、NBA的な戦術アプローチを採り入れている。

クラブの特徴とスタイル

北京ロイヤルファイターズの戦術哲学は、マーブリーのNBA経験を色濃く反映している。特にトランジション・オフェンス、スペーシングを重視した3ポイント戦略、ピック&ロールのバリエーション構築などが顕著だ。守備面では個々の身体能力とアジリティを活かし、ハーフコートでのプレッシャーディフェンスを徹底する。

また、北京控股グループの経営支援のもと、チームは地域貢献活動やジュニア育成にも注力。北京市内でのバスケットボール教室や地域イベントを通じて、ファン層拡大と若手発掘を進めている。

主な歴代所属選手

  • ジョシュ・ハレルソン(Josh Harrellson) – 元NBAプレイヤー。リバウンドとアウトサイドシュートに強み。
  • エステバン・バティスタ(Esteban Batista) – ウルグアイ代表センター。CBA屈指のフィジカル。
  • メディ・カムラニ(Mehdi Kamrani) – イラン代表PG。国際大会での経験を活かし司令塔を務めた。

チームの再ブランド化と文化的意義

“ロイヤルファイターズ”という名称は、北京の王朝文化と現代的スピリットを結びつける象徴として設計された。紫と金のチームカラーは「高貴と栄光」を意味し、ロゴの剣とバスケットボールは「戦う誇り」と「競技の純粋さ」を表現している。

このブランド刷新は、CBA全体における“首都クラブの存在感”を再構築する試みでもあり、北京首鋼(ダックス)との首都ダービーはリーグ屈指の注目カードとして定着した。

近年のリーグ成績と課題

近年の北京ロイヤルファイターズは、プレーオフ進出圏内で安定した成績を残す一方で、強豪・広東宏遠や遼寧本鋼との差は依然として大きい。課題はリバウンド面とセカンドチャンスの防止。マーブリーは2024-25シーズンに向け、チームの再構築と若手中心のローテーション改革を進めている。

今後の展望

2025年以降の北京紫禁勇士は、「育成 × 国際化」をキーワードに据えたクラブ運営を進めている。外国籍選手のスカウティング強化と、北京ローカルの有望株育成を並行し、将来的にはCBA上位常連を目指す。チームの象徴マーブリーは「北京の子どもたちに夢を与えるクラブをつくる」と語っており、CBAの新時代を切り拓くリーダーシップが期待される。

まとめ

北京ロイヤルファイターズは、2009年の誕生から幾度もの変革を経て、現在は首都・北京を代表するプロクラブへと進化した。かつての“フライドラゴンズ”が、“紫禁の戦士”として羽ばたく今、チームは勝利だけでなく文化的アイデンティティの象徴でもある。マーブリー率いる紫と金の戦士たちが、CBAの頂点に立つ日も遠くないだろう。