島根スサノオマジックがB.LEAGUE PREMIER参入へ本格始動|松江市総合体育館33億円改修と経営強化の全貌
島根スサノオマジック(B1西地区)は、2026–27に始動するB.LEAGUE PREMIERへの参入決定に合わせ、ホームの松江市総合体育館を大規模改修へ。総事業費は33億円を想定し、このうち30億円は親会社のバンダイナムコエンターテインメントが企業版ふるさと納税を通じて松江市に寄付する計画だ。2025–26は出雲のカミアリーナを主会場に移し、ハードとソフト両面の移行期間に入る。本稿ではニュースの要点に加え、歴史・経営・競技の三層を横断し、PREMIER基準に向けた実装計画を分析する。
ニュース概要
島根スサノオマジックはB1西地区の有力クラブとして、2026–27のB.LEAGUE PREMIER(新トップティア)参加に必要なアリーナ要件を満たすべく、松江市総合体育館の全面リニューアルを進める。改修期間は2025年8月からおよそ1年間を想定。2025–26は島根県立浜山体育館(カミアリーナ)を中心にホームゲームを開催し、30試合の主催枠は維持する計画だ。運営法人は株式会社バンダイナムコ島根スサノオマジック。資本面では、親会社の強力な支援を背景にアセット整備とブランド投資を同時進行させるフェーズに入る。
- 参入レイヤー:B.LEAGUE PREMIER(2026–27〜)
- ホーム:松江市総合体育館(改修中はカミアリーナをメイン利用)
- 事業規模:33億円改修(うち30億円寄付は企業版ふるさと納税)
- 観客動員の伸長:2023–24年は年間126,896人(30試合、クラブ最多)
- 記録:B2で21連勝(2016–17)、B1で最多動員5,215人(2024/1/20・武蔵野の森)
競技面では、2021–22以降にCS常連クラブの地位を確立し、得点王(ペリン・ビュフォード)や3P成功率賞(ニック・ケイ)など個人タイトルも輩出。2024–25は西地区2位でCSに進み、安定した上位力を確認した。2025–26はペータル・ボジッチHCの下、新旧コアの再編を進める。
背景と経緯
島根スサノオマジックは2010年にbjリーグへ参入。B.LEAGUE移行後の2016–17にはB2西地区を51勝9敗(.850)で制し、プレーオフ準優勝でB1昇格を達成した。一方、初のB1シーズン(2017–18)は環境・ロスターの過渡期に苦しみ11勝49敗でB2降格。昇降格を通じての学習が、その後の組織づくりに反映される。
経営面の分岐点は2019年の資本参加だ。バンダイナムコエンターテインメントが56.5%の株式を取得し、社名を株式会社バンダイナムコ島根スサノオマジックへ変更。IP企業との連携は、ユニフォームのパックマン露出やグループ横断の販促動線を生み、コンテンツ企業×地域クラブという新しいガバナンス像を提示した。2025年3月期には純利益1億5,800万円、純資産4億5,200万円と健全性を高め、PREMIER要件に向けた投資余力を確保している。
地域との関係性は、松江市総合体育館を核に山陰広域へ広がる。米子産業体育館や鳥取県民体育館での開催実績は、エリア跨ぎのファンベース形成に寄与。「スサノオ」×「マジック」という名称や、「すさたまくん」の設計に見られる神話モチーフは、土地の物語をスポーツ体験へ翻訳するブランディングの中核を担ってきた。
選手・チームのプロフィール
クラブカラーはブルー/シルバー/ブラック。ホームは松江市総合体育館(収容4,550人)。運営は株式会社バンダイナムコ島根スサノオマジック、代表は榎本幸司。ユニフォームサプライはEGOZARU。ダンスチームは「アクア☆マジック」、マスコットはすさたまくんだ。
- HC:ペータル・ボジッチ — セット間の整合とディフェンス・ルールの明確化に長ける。
- キャプテン:ニック・ケイ — 高いBball IQとスクリナー適性でハーフコートの質を底上げ。
- 主力:コティ・クラーク(サイズ×技術のハイブリッド)、J.M.マカドゥー(リムプロテクトと縦走力)、横地聖真(サイズのあるウイング)、納見悠仁/岡本飛竜(ハンドラーの厚み)、岡田侑大/中村太地(スコアリングと2メンゲーム)。
- 運営・資本:バンダイナムコエンターテインメント主導の投資とIP連携。
競技のKPIは守備リバウンド回収率、トランジション効率(取・被)、3Pの質(コーナー供給比率)、クラッチTO%。過去の島根はB2で21連勝を記録し、B1でも2023–24の年間動員126,896人、最多入場5,215人(2024/1/20・武蔵野の森)と、競技×興行の相乗を作っている。
試合・出来事の詳細
2016–17のB2西地区優勝(51勝9敗)は島根史の基準点だ。プレーの規律とメンバー固定化により連敗の芽を摘み、失点をリーグ下位レンジに抑制。プレーオフでは西宮に決勝で敗れ準優勝ながら、B1自動昇格を勝ち取った。対照的に2017–18のB1ワースト21連敗は、強度の連続性とヘルス管理の難しさを可視化。翌年以降、補強とルールの再定義が進む。
2021–22以降は上位定着期。西地区2位から初のCSベスト4に到達し、安藤誓哉のベストファイブ、ニック・ケイの3P成功率賞など、コアの完成度が増した。2022–23も西2位でQF最終戦までもつれる接戦を演じられるだけの分岐点を手に入れている。2023–24はけが人の影響で終盤に失速し4位、CS逃すも年間最多動員を更新して興行面の土台を拡大した。
2024–25は西2位(37勝23敗)でCS復帰。補強のクオリティは高く、ウイングとビッグのミスマッチ創出に成功。2025–26は岡田侑大、中村太地、岡本飛竜、飯尾文哉らが加入し、ハンドラー層の刷新でギアを上げ直す。一方で長期在籍の主力が抜けた影響もあり、「守備の共通規範」をどこまで早期に浸透させられるかが序盤戦の焦点だ。
興行では、IPコラボ(PAC-MAN等)を活かした来場体験の設計が特徴的。スポンサー露出はユニフォーム正面・背面・パンツまで連動し、見える支援としてブランドの認知・好感度に寄与している。PREMIER期は、動線最適化・音圧と照明の同期・キッズ導線など「勝つ空気」を標準化できるかがカギとなる。
他事例との比較・分析
アリーナ整備×資本注入×競技KPIを同時に回すモデルは、国内でも前例が限られる。島根の特異点は、コンテンツ企業を親会社に持つという構造だ。IPの力でファミリー層とライト層へのアプローチを強めつつ、B1上位クラブと伍するには、ハーフコートの効率化とトランジション被効率の平準化が必須になる。
| 評価軸 | 島根の現況 | PREMIERの要求水準(目安) | ギャップ/打ち手 |
|---|---|---|---|
| 守備リバウンド回収率 | ウイングのタグが機能、終盤に上振れ傾向 | 上位10%維持 | ビッグのボックスアウト技術共有/ガードの早戻りルール固定 |
| トランジション被効率 | 連戦終盤で悪化しがち | 40分間の分散抑制 | ATO後の初手シュート選択基準の厳格化/交代のプリセット化 |
| 3Pの質(コーナー供給比率) | ケイのスペーシングで改善 | ペイント優先→コーナーが理想 | ベースラインスラム&スティールフレアの併用セット増 |
| クラッチTO% | ボールプレッシャー下で変動 | 5分間で1つ以下 | サイドトラップ回避のアライメント統一/セーフティ逆サイド徹底 |
| ホームアドバンテージ | 動員は右肩上がり(2023–24:126,896) | 演出×勝率の連動 | 照明・音響・ビジョン演出の攻守スイッチ同期/待ち時間UX短縮 |
B2からの短期再浮上を果たした例と比しても、島根はブランド資源の厚みとローカル密着の両立が進む。PREMIER環境では、競技水準のフラット化が進むため、マージナルゲイン(細部の最適化)の積み上げが直接勝敗に反映される。とりわけ第3Qの2分間のマイクロマネジメント(TOタイミング、ATO初手の期待値、交代パターン)は、上位と中位の分水嶺になりやすい。
今後の展望とまとめ
島根スサノオマジックの次の論点は三つある。第一に、松江市総合体育館の改修を、競技KPIと直結する設計に落とし込むこと(視認性、床反発、ベンチ位置、ベースライン幅、ビジョンの情報設計)。第二に、ハンドラー層の再編をディフェンス基準と同時進行で完了させ、クラッチのTO%を安定レンジへ。第三に、IP連携の体験価値を「来場→再来場→ファミリー化」へ接続することだ。
補強の方向性としては、リムプロテクトとDHO(ハンドオフ)を兼務できるビッグ、セカンドユニットのショットクリエイター、コーナー3の純度が高い3&Dがハマる。これにより、走るゲームと削るゲームの二面運用が可能となる。ボジッチHC体制下でルールの再定義を急ぎ、第3Qの失点分散を抑え込めれば、PREMIER初年度でのPOレンジ到達は現実的目標だ。
結語として、B.LEAGUE PREMIERは単なる名称変更ではない。島根スサノオマジックは松江市総合体育館の33億円改修とバンダイナムコエンターテインメントの支援をテコに、「地域の物語×IP×ハイパフォーマンス」の交点に立つ。ホームが改修を終える2026–27、ブルー/シルバー/ブラックが描く新景色は、山陰からプレミアの中心へ届くはずだ。この記事が観戦計画や議論の起点になれば嬉しい。気になった方は本稿をシェアし、次節のチケット情報・アリーナガイドをぜひチェックしてほしい。