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【Bリーグ/ヴィアティン三重バスケットボール】徹底解説|B3参入から現在までの歩みと2025-26シーズン展望

ニュース概要

ヴィアティン三重バスケットボール(Veertien Mie Basketball、以下「ヴィアティン三重」)は、三重県四日市市・津市・桑名市・東員町をホームタウンとするB3リーグ所属クラブで、2020年の創設からわずか数年でプロカテゴリーに到達した新興勢力だ。2022-23シーズンにB3へ参入して以降、戦績は伸び悩む時期もあったが、地域密着と総合型スポーツクラブの強みを活かした運営で基盤整備を着々と進めている。2025-26シーズンはユニフォームサプライヤーがTRESへ移行し、ロースターも内外の即戦力を織り交ぜた編成に。B3での競争力をどう引き上げるかが焦点となる。本稿では、ヴィアティン三重の背景と経緯、戦力の輪郭、直近シーズンの課題、B3内外の他事例比較を通じて、2025-26に向けた展望を立体的に整理する。

背景と経緯

ヴィアティン三重は、総合型スポーツクラブであるヴィアティンスポーツクラブが2020年3月に立ち上げたバスケットボール部門を起点とする。創設初年度から県内大会や地域チャンピオンシップで実績を重ね、東海・北信越地域リーグに参戦。2022年7月には「ヴィアティン三重ファミリークラブ」内のバスケットボール運営部門が分社化され、株式会社ヴィアティン三重BBが発足した。クラブ運営を専業化することで、意思決定の迅速化・スポンサー獲得・ホームアリーナ運用の最適化など、プロ基準の体制整備を加速させたのが特徴だ。

B3参入は2022-23シーズン。B3は昇降格・参入審査の観点で持続可能性が問われるリーグであり、若いクラブにとっては「競技力の段階的向上」と「経営基盤の拡充」を同時並行で進める舵取りが不可欠となる。ヴィアティン三重は三重県内の複数アリーナ(四日市、津市、東員町、サンアリーナなど)を使い分け、県全域での露出と地域連携を広げてきた。これは単に試合開催の利便性に留まらず、ファンベースの拡大や自治体との共創、スポンサー協業の接点を増やす戦略的選択と言える。

サプライヤーは2022年からB-Fiveが担ってきたが、2025年からTRESに変更。新サプライヤーの導入は、デザイン刷新によるブランド浸透やマーチャンダイジングの強化、選手のパフォーマンスに直結するウェア品質の最適化など、クラブ価値を高めるレバーとしても注目だ。また、ユニフォームスポンサーに地場企業・自治体が並ぶ構図は、地域密着型の資金循環を体現している。

選手・チームのプロフィール

2025-26ロースターは、国内の経験豊富なガードとサイズのある外国籍/アジア枠を組み合わせた「バランス型」。司令塔層にはPGの萩原奨太(170cm)、新本風河(171cm)、高松勇介(168cm)らが名を連ね、小柄ながらもボールプレッシャーとゲームコントロールで試合を動かす。キャプテンの宮﨑恭行(SG、170cm)はベテランとしてロッカールームの規律とシュートの安定感で存在感を示す。

ウイングは佐脇孝哉(SF、183cm)、木村貴郎(SF、186cm)、渡邊翔豪(SG、183cm)ら、機動力と外角での脅威を兼備した顔ぶれ。フォワード/ビッグマンにはフィリップ・アブ(PF、198cm、専修大経由)、ダモンテ・ドッド(C、211cm、メリーランド大)、ヤシン・コロ(C、208cm)、マティス・クラチョフスキー(PF、203cm、ラトビア出身)と、ペイントアタックとサイズでアドバンテージを作れる布陣が揃う。特にドッドは高さとリムプロテクト、クラチョフスキーはストレッチ性のあるスキルセットが魅力で、B3での「サイズ×走力」の相乗効果を引き出す鍵となる。

指揮官は玖田将夫ヘッドコーチ。参入初年度からチームを率い、カテゴリーを横断して培った指導経験を基に、守備の土台作りとトランジションのスピードアップを志向している。アソシエイトコーチに高松勇介、アドバイザリーコーチに宮﨑恭行が入り、現場と選手の距離が近いサポート体制も特徴だ。クラブ運営は代表取締役社長・後藤大介、GM・中西康介の下で、地元企業や自治体と連動した「地域で勝つ」モデルを掲げる。

試合・出来事の詳細

直近3季のレギュラーシーズン成績を俯瞰すると、2022-23(19勝33敗、勝率.365、10位)、2023-24(16勝36敗、.308、15位)、2024-25(9勝43敗、.173、17位)と推移し、特に2024-25は序盤の15連敗が重くのしかかった。ホーム4勝22敗、アウェイ5勝21敗という数字は、ホームコートアドバンテージの活用に課題を残す一方、会場分散運用という戦略の中で「どの会場でも勝ち筋を再現する」ゲームモデルの確立が急務であることを示した。失点面では2024-25の総失点が4,223点と増加し、点差-657は守備とリバウンド・ターンオーバー管理の改善余地を物語る。

ホームアリーナ運用は四日市市総合体育館を軸に、安濃中央総合公園内体育館、津市久居体育館、日硝ハイウエーアリーナ(サオリーナ)サブ、東員町総合体育館、三重県営サンアリーナ、四日市市中央第2体育館、AGF鈴鹿体育館など、多拠点を回遊するスタイルを継続。2024-25のホーム開催は「四日市4試合+その他会場多数」という配分で、県内全域のファン接点を最大化している。運営側の狙いは明確で、地域の子どもたちにプロバスケを「見せる/触れさせる」機会を増やし、長期的な観戦人口と競技人口を創出することにある。

ユニフォーム関連では、2023-24までのB-Fiveから、2025年以降はTRESに。スポンサー構成は背面にヤマモリ・日本生命、パンツに四日市市ほか地元企業が並び、クラブが地域のPR媒体として機能している実態が見て取れる。これは単なる広告枠の売買ではなく、ホストゲームの演出・自治体イベント連動・学校訪問といった“共創型アクティベーション”を前提にしたパートナーシップの形だ。

他事例との比較・分析

B3は拡大と新陳代謝の両輪で推移しており、近隣クラブや同世代参入クラブでも「立ち上げ数年の壁」をどう越えるかが共通課題になっている。参入初期は、①試合運営/人材/練習環境の整備、②スポンサー・チケット販売の基礎体力の構築、③プレースタイルの確立と育成ルートの接続、の3点を同時に回す必要がある。ヴィアティン三重は総合型クラブのネットワークにより、①②の進捗が相対的に速い一方、③の「結果に直結するゲームモデル」の確立と「勝ちに直結するスキル開発」の両立で苦戦してきた印象だ。

競技面の指標で見ると、守備効率(失点/ポゼッション)とリバウンド率(特にDREB%)の改善は優先度が高い。B3では連戦・遠征・移動の負荷が高く、ハーフコートでのミスの少なさとセカンドチャンス抑制が勝率に直結するからだ。オフェンスでは、3Pアテンプト比率(3PA/FGA)の上積みとペイントタッチの増加を両立し、ターンオーバー率(TOV%)をリーグ平均以下に抑える設計が理想となる。現有戦力の特性を踏まえると、以下のような方針が現実的だ。

  • ディフェンス:ドロップ主体のPnR守備でリムを死守し、コーナー3の被弾を抑えるローテーション規律を徹底。サイズを生かしてDREB%を底上げし、失点の“連鎖”を断つ。
  • オフェンス:クラチョフスキーのピック&ポップや、ドッド/コロのダイブを軸にハイ/サイドPnRを多用。弱サイドは45度のシェイクとコーナーのステイを使い分け、3Pの質(オープン比率)を高める。
  • トランジション:ボールセキュア第一で、ショットクオリティが悪いときは早期にセーフティへ移行。失点後のクイックエントリーをルール化し、テンポの主導権を握る。

経営・ブランドの面では、複数会場運用がチケット販売の分散リスクを下げる一方、コアファンの「ホーム体験の一貫性」を担保する工夫(演出・売店・ファン交流導線の標準化)が重要になる。他クラブで成果が出ているのは、キッズエスコートや部活動・学校とのタイアップ、地域祭事との連動で、1試合ごとの「来場理由」を多層化する設計だ。ヴィアティン三重もスポンサー/自治体との共創が進んでいるため、試合以外の接点(アカデミー、健康・福祉、観光)に横展開する余白は大きい。

今後の展望とまとめ

2025-26シーズンに向け、ヴィアティン三重が勝率を押し上げるための現実的なKPIは次の通りだ。①守備効率のリーグ中位グループ入り(失点/100ポゼッションの改善)、②DREB%の上昇と速攻失点の抑制、③3Pのオープン創出率とPAINT内決定率の両立、④TOV%の縮小、⑤ホーム勝率の底上げで観客体験と成績の正循環を作る。コート内では、ガード陣のハンドラープレイの安定化と、ビッグのスクリーン角度/ロールの質向上、ウイングのショットセレクション最適化が成否を分ける。

ロースターにはベテランの経験値とサイズの武器が揃い、サプライヤー刷新を含むブランド強化のタイミングも重なる。あとは「負けパターンの連鎖を断つ守備の原則」と「勝ちパターンを再現する攻撃の型」をどれだけ早く日常化できるか。序盤戦での拙攻やローテのほつれを最小化できれば、春先の追い上げに頼らない勝点設計が見えてくるはずだ。

ヴィアティン三重バスケットボールは、B3という荒波の中で「地域から勝つ」モデルを磨く段階にある。創設からの歩み、B3参入後の試行錯誤、ユニフォームサプライヤー移行やスポンサー連携の深化は、競技と経営の両輪が噛み合い始めているサインでもある。2025-26は、戦術的な一貫性と選手の役割明確化、ホーム体験の標準化が結実するかを測るシーズンだ。次の試合やリリースが出たら、ぜひ公式サイトやSNSをフォローして最新動向を追ってほしい。この記事が、ヴィアティン三重バスケットボールの全体像を更新し、チームへの関心や来場のきっかけになれば幸いだ。

最後に、読者への提案。地域のクラブが強くなる最短距離は「知る→観る→関わる」の三段階だ。まずはホームゲームの日程を確認し、家族や仲間を誘ってアリーナへ。SNSでの感想シェアや、次に観たい選手・プレーの投稿は、クラブの可視性を確実に押し上げる。ヴィアティン三重の挑戦は続く。あなたの一歩がクラブの未来を後押しする。

ディップ社がB3「さいたまブロンコス」のオーナーに就任|2030年Bプレミア参入を目指す戦略とは

ディップ株式会社、さいたまブロンコスの経営権を取得

2025年6月25日、埼玉県さいたま市にてディップ株式会社が記者会見を行い、B3リーグ所属「さいたまブロンコス」を運営する株式会社ブロンコス20の子会社化、ならびに同クラブの新オーナーに就任することを正式に発表しました。

これにより、ディップ株式会社はBリーグのクラブ運営に本格参入。人材業界で躍進を遂げてきた同社が、今後はプロバスケットボールチームをどのように育成・発展させていくのか、注目が集まります。

ディップ社とは?スポーツ界との結びつきも強い注目企業

ディップ株式会社は、「バイトル」「はたらこねっと」「ナースではたらこ」など多様な求人・転職支援サービスを展開する人材サービスのリーディングカンパニー。特に近年は、スポーツマーケティング分野にも力を入れており、大谷翔平選手をブランドアンバサダーとして起用しているほか、ダンスプロリーグ「D.LEAGUE」では「dip BATTLES」のオーナーとして活動中。また、2026年に開催される野球の国際大会「World Baseball Classic Tokyo Pool」ではメインスポンサーも務めます。

ディップ代表・冨田英揮氏「BプレミアでNo.1に」


会見には、ディップ株式会社代表取締役社長 兼 CEOの冨田英揮氏と、株式会社ブロンコス20代表の小竹克幸氏が出席。冨田氏は開口一番、「Bリーグクラブのオーナーになることは長年の夢だった」と述べ、次のように意気込みを語りました。

情熱をもって、さいたまブロンコスを強くする。B.LEAGUE PREMIERに参入し、最終的にはBリーグ全55クラブの中でNo.1になるという夢を持って参入しました。我々が関与するからには、良い選手を獲るための資金を惜しみなく投入します。

また、「埼玉県内に7万5000件の求人情報があることからも、地域の顧客や従業員を巻き込んでファンを増やし、最も愛されるチームにしていきたい」と、企業としての戦略と地域密着の方針を強調しました。

さいたまを選んだ理由とB3クラブへの思い

なぜ「さいたまブロンコス」だったのか。その問いに対して冨田氏は、「さいたま市は大きなマーケットであり、関東圏で社員も観戦しやすい立地。自身も試合観戦がしやすいのが大きな決め手」と説明。ビジネスとファン目線の双方から、クラブ運営への想いを語りました。

さらに、現在B3リーグに所属していることについては「非常に魅力的」と評価。「我々も人材業界に参入した頃は業界の下位に位置していましたが、そこから成長してトップに立った。その経験をスポーツクラブ運営にも生かしたい」と、挑戦者としての視点を示しました。

B1経験者を中心に積極補強を実施


さいたまブロンコスは、この夏の移籍市場において積極的な補強を展開しています。レバンガ北海道から松下裕汰、仙台89ERSから多嶋朝飛、京都ハンナリーズから小西聖也、横浜BCに在籍していたデビン・オリバー、さらに新潟アルビレックスBBの大矢孝太朗といった、B1経験を持つ選手が次々に加入。

これについて、ブロンコス代表の小竹克幸氏は、「ディップさんの資金支援が補強を後押ししてくれた」とコメントし、「今季がB3最終年となるため、有終の美を飾りたい」と語気を強めました。

2030-31シーズンのBプレミア参入を明言

Bリーグは2026-27シーズンから新たに「Bプレミア」という最上位リーグを設置予定で、入会基準として財務状況やアリーナ要件、観客動員など厳格な条件が課されています。

冨田氏はこの点にも触れ、「我々は2030-31シーズンまでにBプレミア参入を果たすことを目標にしている」と明言。長期的な育成方針を打ち出し、戦力・組織・施設すべてにおいてリーグ基準を満たす構想を進めていると説明しました。

新オーナー就任で変わる未来のビジョン

ディップ社のオーナー就任によって、さいたまブロンコスはこれまで以上に資金力と事業展開の幅を広げられる体制となります。人材業界での成長実績と、マーケティング・ブランディングの知見を活かし、Bリーグ内での存在感を強めていくことが予想されます。

また、冨田氏は「バスケットボールが単なる競技にとどまらず、地域経済やコミュニティの活性化につながるものにしたい」と語っており、今後はスポーツビジネスとしての側面にも力を入れていく方針です。

まとめ|B3から始まる「下剋上」の挑戦

さいたまブロンコスは、ディップ株式会社という強力なパートナーを迎え、新たなステージへと踏み出しました。2030年のBプレミア参入、そして将来的なリーグ制覇を目標に掲げるクラブの今後は、まさに「下剋上」の物語そのものです。

ファンを巻き込み、地域とともに成長していくその歩みが、Bリーグにどのような新風を巻き起こすのか――注目は尽きません。