ニュース概要
信州ブレイブウォリアーズは、2024-25シーズンにB2リーグ東地区で38勝22敗(勝率.633 / 地区3位)を記録し、プレーオフに進出。準決勝でアルティーリ千葉に敗れて最終3位となり、即時のB1復帰は逃したが、降格直後のシーズンとしては再浮上の足がかりを確保した。2025-26シーズンは引き続き勝久マイケルHCの下、ホワイトリング(収容5,000)を主たる舞台にB2東での上位定着と昇格争い復帰を狙う。主なロスターにはマイク・ダウム、ウェイン・マーシャル、渡邉飛勇、アンジェロ・チョル、栗原ルイス(C)らが名を連ね、バックコートは土家大輝、生原秀将、小栗瑛哉がボール運搬とゲームメイクを分担する。
背景と歴史的文脈
クラブは2011年にbjリーグへ参入し、2016年のB.LEAGUE発足時にB2に所属。2018-19にB2優勝、翌2019-20も中地区首位(40勝7敗)を維持してB1昇格を果たした。B1では2020-21に20勝34敗、2021-22に28勝26敗で勝ち越し、2022-23は中地区3位と健闘。しかし2023-24は10勝50敗でB2降格。主力の流出(例:ジョシュ・ホーキンソンら)と、攻守の刷新期が重なった影響は小さくなかった。
2024-25はB2東で38勝22敗、ホーム22勝8敗とホームコート・アドバンテージを再構築。クラブは運営母体を株式会社NAGANO SPIRITとして体制を強化し、ホームタウンを長野市・千曲市の二本柱に最適化。かつてB1ライセンス取得過程で課題となったアリーナや財務要件の教訓を活かし、集客・スポンサー・ゲーム運営の三位一体を進めている。
チーム名の由来は、信濃国を示す「信州」と、真田氏に象徴される「勇士(Brave Warriors)」。ロゴは日本アルプスと名月のモチーフで、甲冑の兜にも見立てられる。地域と物語性の結びつきが強く、マスコットのブレアー、ダンスチームJASPERS、県・市ゆかりの著名人によるウォリバサダーなど、周辺資産の厚みもクラブの特徴だ。
選手・チームのプロフィール
2025-26登録(抜粋):
- ウェイン・マーシャル(C, 211cm):要所のリム保護とポストD、ハイローの起点。ロングキャリアの経験値は試合運びの“安定剤”。
- マイク・ダウム(F/C, 206cm):ストレッチ・ビッグ。ピック&ポップ、ショートロールからの決定力でオフェンスの軸。ハイボリュームでも効率を落としにくい。
- 渡邉飛勇(PF/C, 207cm):縦のレンジとアスレティシズム。ディフレクションとリムランでトランジションを加速。
- アンジェロ・チョル(PF/C, 206cm):ポストフェーズの技術とオフェンスリバウンドで「もう1本」を創出。
- 栗原ルイス(SG, 188cm / 主将):キャッチ&シュートとセカンドボールハンドル。終盤のFTで試合を“締める”役割も。
- 土家大輝(PG, 173cm):ハンドラー兼プレッシャーDF。テンポ管理とペイントタッチの回数増加に寄与。
- 生原秀将(PG, 180cm):ゲームコントロールとP&Rの角度出しに長ける。ターンオーバー抑制の鍵。
- 小玉大智(PF, 185cm):サイズに対して強靭。スクリーン角度とルーズの徹底で味方の効率を底上げ。
- アキ・チェンバース / 横山悠人 / 東海林奨 / エリエット・ドンリー / 福島ハリス慈音ウチェ:ウイング群。3&Dとランの配分をラインナップごとに最適化。
スタッフは勝久マイケルHCの下、久山智士、カイル・マーシャルがアシスタント。運営面ではホワイトリングをコアに、千曲のことぶきアリーナ千曲や松本市総合体育館を補完として使い分ける。ユニフォームはB-Five供給、スポンサーフロントはホクト、背面上部にセイコーエプソンなど長野ゆかりの企業が並ぶ。
試合・出来事の詳細
2024-25のレギュラーシーズンは、ホームでの勝率.733(22勝8敗)がベース。ポゼッション当たりの得点(PPP)はホームで顕著に改善し、特に第3Qの立ち上がりにおける連続ポゼッションの効率上昇が勝ち筋となった。プレーオフ準決勝のA千葉戦は、相手のP&Rトリガーに対しドロップ+ウィーク側のタグで対応する一方、終盤のセカンドチャンス点を抑え切れずに惜敗。
敗戦局面の共通項は「ターンオーバーの質」。ライブTOが失点に直結しやすい構造のため、2025-26ではハーフコート入りまでの外圧(トラップ/ブリッツ)対策、およびセカンダリーハンドラーの能動活用が肝要となる。逆に勝利局面では、ダウムのポップ、渡邉のリムラン、栗原のコーナー3が三位一体となり、相手5番の“迷い”を誘発できた。
戦術・技術・スタイル分析
オフェンスは5アウト派生とハイローのハイブリッド。ハンドオフ(DHO)からのチョーンズ(手渡し→即P&R)で相手ビッグの横移動を強要し、ダウムのポップとマーシャルのダイブで選択を迫る。KPIは①ペイントタッチ回数、②コーナー3比率、③FT Rate、④ORB%。ダウムの外重心を活かすなら、45度→コーナーのリロケート頻度を増やし、シェイクアクションでヘルプの戻りを遅らせたい。
ディフェンスはドロップ主体+対ハンドラー特性でヘッジやアイスを混用。Xアウトの連鎖(トップ→ウイング→コーナー)をどれだけノーミスで回せるかがペリメータの被効率を左右する。ロングクロースアウトが発生する構造上、ギャップ守備(レーン詰め)の共有度がカギ。リム守備(DFG% at Rim)の低下は、渡邉とチョルの“縦壁”が担う。
トランジションは「1stブレイク阻止ライン」の設定がポイント。センターサークル手前で壁を作り、相手のヒットアヘッドを抑制。自軍の攻撃では、リムラン→トレーラー3の順(リム→外)でレーン優先を徹底すると、初手の効率が安定する。
ファン・メディア・SNSの反応
降格直後の年に東3位・PO進出はポジティブな受け止めが多数。ホームの演出はブレアーとJASPERSが一体感を牽引し、地域ゆかりのウォリバサダーがメディア露出を押し上げる構造も強み。SNS上の論調は「B1復帰には終盤のターンオーバー減とペイント守備の平準化が必須」という冷静な分析と、「若手の台頭とレジェンド(マーシャル)の共存」への期待が交錯している。
データ・記録・統計情報
- 2018-19(B2):48勝12敗でB2優勝。
- 2019-20(B2):40勝7敗で中地区1位、B1昇格。
- 2020-21(B1西):20勝34敗。
- 2021-22(B1西):28勝26敗(B1で初の勝ち越し)。
- 2022-23(B1中):29勝30敗(地区3位)。
- 2023-24(B1中):10勝50敗でB2降格。
- 2024-25(B2東):38勝22敗(地区3位)/PO準決勝敗退・3位。
会場運用:ホワイトリングを中心に、ことぶきアリーナ千曲、松本市総合体育館などを併用。B1ライセンス審査時のハード基準(収容)を満たす設計に回帰している。
リーグ全体への影響と比較分析
B2東はガードの質とストレッチ・ビッグの両立で“近代化”が進むゾーン。上位クラブの共通項は①3Pアテンプト比率の高さ、②TO%の低さ、③リム守備の再現性。信州はダウム(外)×マーシャル(内)×渡邉(縦)の三層で“守備の的”を分散できる半面、バックコートが強い相手に対してはボールプレッシャー→ライブTO→被トランジションという負の連鎖が生じやすい。ここを断ち切れれば、上位相手にもゲームプラン通りのロースコア展開に持ち込める。
比較軸では、2018-20のB2最強期との差分は「オフェンスでの主導権の握り方」。当時はセット終盤のミスマッチ創出→ポストorショートロールが高効率の定跡だった。現在はハンドオフ連鎖とコーナー3の量で勝つ設計へと舵が切られている。つまり、“確率で殴る”攻撃に磨きをかけ、“守備で削る”再現性をB1級に仕上げられるかが昇格の分水嶺になる。
今後の展望とまとめ
2025-26の現実目標は、①失点リーグ中位以内、②eFG%リーグ中位+、③ORB%リーグ中位+、④ライブTO%の減少。運用面では、ダウムの使用率を高止まりさせつつTS%をキープし、栗原・横山のコーナー増産、土家/生原によるP&Rの“角度”最適化でポゼッション価値を底上げしたい。守備はXアウトの統一ルールとギャップ守備の徹底で、相手の連続パス→オープン3の生成を削る。
クラブとしての強みは、地域との結節点が濃いことだ。ホワイトリングの来場体験、JASPERSとブレアーの演出、ウォリバサダーの発信力――信州ブレイブウォリアーズには、勝敗を超えた“来たくなる理由”がある。B1復帰は容易ではないが、ホームの熱量×守備の再現性×TO管理が噛み合えば、ポストシーズンの景色は変わる。この記事が役立ったと感じたら、ぜひ周囲に共有し、次のホームゲームで声援を届けてほしい。信州ブレイブウォリアーズの物語は、まだ中盤戦だ。