「グレネードDHO」徹底解説|現代NBAを象徴するハンドオフ戦術とその進化

グレネードDHOとは?

「グレネードDHO(Grenade DHO)」とは、現代NBAで急速に広まっているドリブル・ハンドオフ(DHO:Dribble Hand Off)の発展形であり、ハンドオフと同時に即座のスイッチ誘発・連続アクションを狙う戦術である。特にゴールデンステート・ウォリアーズやボストン・セルティックスといったチームが多用し、モーションオフェンスの中核を担う重要なセットとして定着している。

名称の由来である「グレネード(手榴弾)」は、ボールを持ったビッグマンが一瞬でシューターに“投げ渡す”ような素早いハンドオフ動作から来ており、その瞬間にディフェンスを爆発的に揺さぶるイメージを持つ。ピック&ロールよりもスペースが広く、読み合いが速いのが特徴だ。

基本構造と目的

グレネードDHOの基本構造は以下のように整理できる。

  • ① ビッグマン(またはハンドラー役)がトップやエルボー付近でボールを保持。
  • ② シューター(ガードやウイング)がカールするようにカットして接近。
  • ③ ハンドオフと同時にディフェンスがスイッチを強制される。
  • ④ シューターがドリブルを継続し、プルアップ、キックアウト、ロールマンへのパスなど複数の選択肢を展開。

この一連の流れにより、守備側は「スイッチ」か「アンダー」かを瞬時に判断しなければならず、判断が遅れればワイドオープンの3Pやバックドアカットを許す。グレネードDHOはその“判断の遅れ”を狙う非常に効率的な攻撃パターンといえる。

ウォリアーズのモーションシステムにおける活用

ゴールデンステート・ウォリアーズは、ステフィン・カリーとドレイモンド・グリーンのコンビによるグレネードDHOを象徴的に使う。トップでグリーンがボールを持ち、カリーがスクリーンを使いながらハンドオフを受けると同時にシューターへ変化。ディフェンスはスイッチを強制され、少しでも遅れればカリーが即座に3Pを放つ。もしディフェンスが前に出れば、グリーンがショートロールでペイントに侵入し、キックアウトやアリウープを狙う。

このようにウォリアーズのグレネードDHOは、単なるハンドオフではなく“二重脅威”を生み出す。1つのプレー内で、3P・ドライブ・ハイローパスという3つのオプションが連続的に存在する点が最大の特徴である。

セルティックスのシステム的応用

ボストン・セルティックスでは、ジェイソン・テイタムやジェイレン・ブラウンを起点としたグレネードDHOが多用される。特にホーフォードやポルジンギスといったストレッチビッグがハンドオフ役となり、外角でのスペーシングを最大限に活かす構造を取る。

セルティックスのグレネードDHOは「ピック&ポップ」とのハイブリッド形を成しており、ハンドオフ後にビッグマンが外へポップアウトして3Pを狙うか、シューターが中へスリップするかの二択を迫る。守備側はスイッチ後のマッチアップが崩れやすく、特にスモールラインナップ同士では致命的なミスマッチを生みやすい。

グレネードDHOと従来のDHOの違い

従来のドリブル・ハンドオフ(DHO)は、オフェンスのリズムを作るための“つなぎ”として使われることが多かった。一方でグレネードDHOは、最初から得点を狙うアグレッシブなアクションである。プレーヤーの動きが一瞬で連鎖し、ディフェンスが切り替える隙を与えない。

また、従来のDHOが「一方向的」であるのに対し、グレネードDHOは「リード・アンド・リアクト(状況対応)」の概念を内包している。ハンドオフ後のシューターが相手の守り方に応じて即座に判断を変え、味方のスペーシングを維持しながら攻撃を展開する。つまり“即興的戦術”としての柔軟性が非常に高い。

3×3バスケットボールへの応用

3×3のシーンでも、グレネードDHO的な発想は有効だ。3×3ではピック&ロールのスペースが限られるため、ハンドオフによる連続的なアクションがスイッチ対策として重宝される。例えば、トップでハンドオフを行い、同時にウイングがバックドアを狙うと、守備は一瞬で混乱に陥る。

また、3×3では「時間(12秒ショットクロック)」の制約が厳しいため、グレネードDHOのような“即決型戦術”が理にかなっている。ワンアクションで複数の選択肢を生み、即座に得点へ直結できる戦術は、3×3特有のスピード感と相性が良い。

コーチング・練習導入のポイント

グレネードDHOを導入する際のポイントは以下の3点である。

  1. ハンドオフのタイミングを「接触直前」で行うこと。早すぎるとディフェンスが反応できる。
  2. シューター側はハンドオフを受けながら“ショルダー・トゥ・ショルダー”で相手を巻くこと。
  3. ハンドオフ役はボールを渡した直後にリスクを取る(ロール、ポップ、スリップなど)。

この一連の動作を反復練習し、チーム全体でテンポと間合いを共有することが鍵となる。特に育成年代では、ハンドオフを「パス+スクリーン」として理解させることで、チームオフェンスの連動性を高めることができる。

まとめ:現代オフェンスの核心にある「連続アクション」

グレネードDHOは、単なる戦術の一つではなく、“判断と連動”を重視する現代バスケットボールの象徴的アクションである。ウォリアーズやセルティックスのような強豪チームが示すように、シューターとビッグマンが連続的にアクションを起こすことで、ディフェンスは常に対応を迫られ続ける。

ピック&ロールに次ぐ新時代の基本構造として、グレネードDHOは今後も世界中のコーチ・選手に研究され続けるだろう。ハンドオフの一瞬に潜む“爆発力”こそ、現代バスケットボールの進化を象徴するプレーなのだ。