欧州最高峰リーグでの報酬戦争──ミチッチが年俸約8億4000万円で首位に
欧州バスケットボール界の最高峰「ユーロリーグ」で、2025シーズンの高額年俸選手ランキングが話題となっている。
欧州メディア『EUROHOOPS.NET』が報じた最新データによると、ハポエル・テル・アビブ所属のバシリエ・ミチッチが560万ドル(約8億4000万円)で1位に輝いた。
手取りベース(税引後)でこの数字という点からも、ユーロリーグの経済規模が近年急速に拡大していることがわかる。
2位はケンドリック・ナン(パナシナイコス)で530万ドル(約7億9000万円)、3位には元NBAのサシャ・ベゼンコフ(オリンピアコス)が410万ドル(約6億1000万円)で続く。
さらに、アナドル・エフェスのシェイン・ラーキン(375万ドル/約5億6000万円)、モナコのマイク・ジェームズ(300万ドル/約4億5000万円)など、
上位10選手はいずれも年俸4億円超えという超エリート層を形成している。
クラブ別に見る 資金力マップ ──ギリシャとイスラエルが欧州市場を支配
ランキングをチーム別に見ると、ギリシャの強豪パナシナイコスが3名、同国のオリンピアコスとイスラエルのハポエル・テル・アビブが2名ずつランクイン。
スペインの名門レアル・マドリードやトルコのアナドル・エフェス、フランスのモナコも上位に名を連ね、
ヨーロッパ全土で「クラブの財力がバスケの競争構造を変えつつある」現実が浮かび上がる。
昨年のトップ10では、300万ドル以上の年俸を得ていたのはわずか3選手(ベゼンコフ、ラーキン、ジェームズ)のみだった。
それが今年は10位の選手ですら270万ドル(約4億円)に到達。
わずか1年でトップ10の年俸総額が約30%増加しており、ユーロリーグ全体が 高騰フェーズ に突入している。
「税引後8億円」のリアル──NBA以外でも成功できる時代
注目すべきは、報道された金額が税引後の 手取り 額である点だ。
ヨーロッパでは多くのクラブが、税負担をチーム側が肩代わりする「ネット契約方式(net salary)」を採用しており、
選手は提示された額をそのまま受け取る。
つまり、ミチッチの8億4000万円は、実質的にはNBA中堅スター級の待遇に匹敵する。
NBAの平均年俸が約9億円(gross:税引前)であることを考えると、
ユーロリーグのトップ選手が 世界2位のバスケ市場 を担うポテンシャルを持つことが分かる。
かつては「NBAをクビになった選手の第二のキャリア」と見られていたユーロリーグだが、
いまや もう一つの頂点 として選手が自ら選択する舞台へと変貌している。
年俸中央値は1億5000万円超──中堅選手にも夢がある欧州市場
『EUROHOOPS.NET』はリーグ全体の推定中央値についても触れており、
正確な数値こそ非公開ながら、100万ドル(約1億5000万円)以上である可能性が高いと報じている。
これは10年前のユーロリーグ中央値(約50万ドル)と比較して、実に2倍以上の上昇。
欧州全体でスポーツ産業が拡大するなか、放映権料・スポンサーシップ・デジタル配信の三本柱が
クラブ財政を押し上げている構造が見て取れる。
特にイスラエルのハポエル・テル・アビブは、近年ユダヤ系財団による出資強化で資金力を急拡大。
国内リーグの優勝だけでなく、欧州タイトルを視野に入れた メガクラブ化 が進んでいる。
Bリーグとの比較:サラリーキャップ制が生む 構造的な壁
一方、日本のBリーグは、2026シーズンから導入予定の新サラリーキャップ制度で
チーム総年俸上限を約8億円に設定。
これは選手1人あたりの最高年俸ではなくチーム全体の枠であり、
ユーロリーグのトップ選手1人分にも満たない。
Bリーグは将来的に「NBAに次ぐ世界2位のビジネスリーグ」を掲げているが、
現状の選手報酬水準では欧州との差が拡大しているのが実情だ。
仮に平均的なユーロリーグ主力が1億5000万円を稼ぐとすれば、
Bリーグの平均年俸(約2500万〜3000万円)との差は依然として大きい。
このギャップは、単に財政規模の問題だけでなく、
「スター選手が欧州を選ぶ」流れを加速させる要因にもなりかねない。
過去10年の変化:経済拡大とリーグ改革がもたらした恩恵
ユーロリーグは2016年のリーグ再編以降、完全な レギュラーシーズン制 を導入し、
試合数・視聴機会・国際露出が増加。これが放映権収入を押し上げ、クラブ経営を安定させた。
さらに近年はデジタル配信「EuroLeague TV」やYouTube戦略によって
海外ファン層を拡大し、英語圏視聴者の比率は2018年比で約2.3倍に上昇。
その結果、クラブ単位でのスポンサー契約総額が平均20%増加し、
プレミアリーグ化 と呼ばれる経営モデルの転換が進んでいる。
トップ10選手一覧(税引後年俸換算)
| 順位 | 選手名 | 所属クラブ | 年俸(ドル) | 年俸(円換算・約) |
|——|———-|————–|—————-|—————-|
| 1 | バシリエ・ミチッチ | ハポエル・テル・アビブ | 5.6M | 8億4000万円 |
| 2 | ケンドリック・ナン | パナシナイコス | 5.3M | 7億9000万円 |
| 3 | サシャ・ベゼンコフ | オリンピアコス | 4.1M | 6億1000万円 |
| 4 | シェイン・ラーキン | アナドル・エフェス | 3.75M | 5億6000万円 |
| 5 | マイク・ジェームズ | モナコ | 3.0M | 4億5000万円 |
| 6 | ウォルター・タバレス | レアル・マドリード | 2.7M | 4億円 |
| 7 | イライジャ・ブライアント | ハポエル・テル・アビブ | 2.7M | 4億円 |
| 8 | ニコラ・ミロティッチ | パルチザン | 2.6M | 3億9000万円 |
| 9 | ケビン・パンター | バルセロナ | 2.5M | 3億8000万円 |
| 10 | ジョーダン・ロイド | ツルヴェナ・ズヴェズダ | 2.3M | 3億4000万円 |
※為替換算レート:1ドル=150円換算(2025年9月時点)
未来予測:ユーロリーグが NBA以外のグローバル頂点 を目指す時代へ
欧州クラブが年俸を上げられる背景には、
アメリカ資本や中東投資ファンドの参入がある。
ハポエル・テル・アビブを筆頭に、アブダビやドバイ系企業が
ユーロリーグの新スポンサーとして名乗りを上げており、
この構造はサッカー・チャンピオンズリーグと酷似している。
NBAが「独占的な頂点」であり続ける一方で、
ユーロリーグはその下に 独立した経済エコシステム を築きつつある。
そしてその波は、アジア──つまりBリーグや中国CBAにも
確実に影響を及ぼしていくだろう。
まとめ:バスケの経済地図が変わる
バシリエ・ミチッチの8億円プレーヤー入りは、
単なる個人の成功ではなく、欧州バスケがNBAに次ぐ「第2の経済大陸」になった象徴だ。
Bリーグが世界市場で存在感を高めるためには、
スターの待遇、国際放映戦略、ファンマーケティングを含む
総合的なリーグ経営力の強化が求められる。
いま、世界のバスケマネーは確実に 欧州に流れている 。
そしてその中心にいるのが、ハポエルの赤いユニフォームを纏うバシリエ・ミチッチだ。
彼が象徴するのは、NBAの外でも夢が叶う新時代の到来である。