欧州を渡り歩いたスコアラー、デビン・オリバーの軌跡
デビン・ミカエル・オリバー(Devin Michael Oliver、1992年7月2日生)は、アメリカ・ミシガン州カラマズー出身のプロバスケットボール選手。203cm・102kgのサイズを誇り、フォワードとしてインサイドでもアウトサイドでもプレーできる万能型プレイヤーだ。2025年シーズンからB3リーグ・さいたまブロンコスに加入し、日本バスケット界への“再来日”を果たしている。
デイトン大学時代:堅実さと知性を兼ね備えた学生エース
オリバーはNCAAの名門・デイトン大学(Dayton Flyers)で4年間プレー。2013–14シーズンには平均11.2得点、7.4リバウンド、2.3アシストを記録し、チームの主力として全米トーナメント出場にも貢献した。身体能力だけでなく、状況判断とスペーシングの巧みさが評価され、卒業後はNBAドラフト外ながらも欧州のクラブから高い注目を集めた。
欧州キャリア:スロベニアで開花した“勝者のDNA”
プロ入り後、オリバーはベルギー、イスラエル、フランス、ドイツ、トルコ、スロベニアといった複数の国でキャリアを重ねた。中でもスロベニアの名門クラブKKオリンピア時代(2016–2018)は輝かしい成功を収め、チームを2度のリーグ制覇に導くとともに、2017年・2018年の連続でリーグファイナルMVPを受賞。さらにスロベニアスーパーカップでも優勝・MVPを獲得し、欧州トップレベルでも通用するプレイヤーとして名を上げた。
フランス・トルコでの経験:多様な戦術に適応する柔軟性
2018–19シーズンにはフランスのナンテール92でプレー。国内リーグ25試合で平均9.8得点・5.0リバウンドを記録し、ユーロカップでも10試合に出場した。翌年のトルコ・ビュユクチェクメジェ(Büyükçekmece Basketbol)では、平均12.7得点・7.0リバウンド・スリーポイント成功率37.9%という安定した数字を残し、欧州中堅クラブの主力として確固たる地位を築いた。
日本初上陸:仙台89ERSと横浜ビー・コルセアーズでの挑戦
2021年6月、オリバーはB.LEAGUEの仙台89ERSと契約し、日本でのキャリアをスタート。チームの得点源として活躍し、翌2022年には横浜ビー・コルセアーズに移籍。B1昇格後の横浜で背番号15を背負い、若手中心のチームに安定感と経験をもたらした。特にディフェンスリバウンドからの速攻展開や、3Pライン外でのストレッチ能力はチーム戦術に不可欠な要素となった。
台湾リーグ挑戦:グローバルプレイヤーとしての新境地
2024年には台湾T1リーグの「台北戦神(Taipei Mars)」と契約。東アジア圏でのプレー経験を広げ、アジアのファン層を拡大させた。台湾でのプレーではフィジカルに加え、チームメイトとの連携力・リーダーシップが評価され、リーグを代表する外国籍選手の一人として存在感を示した。
再来日:さいたまブロンコスが獲得した“大人のフォワード”
2025年6月、B3リーグのさいたまブロンコスがデビン・オリバーの加入を正式発表。クラブは「経験・実績・人格を兼ね備えたリーダー」として高く評価しており、若手育成とチーム再建の軸として期待を寄せている。
オリバー自身も「日本は第2のホーム。ブロンコスの未来をともに築きたい」とコメント。仙台・横浜での経験を経て、再び日本バスケット界に帰ってきた。
プレースタイル:多機能フォワードの真骨頂
オリバーの最大の特徴は、アウトサイドシュートとリバウンドの両立だ。3Pライン外からの正確なジャンプショットに加え、フィジカルを生かしたポストプレーや、速攻時のトレーラーとしての走力にも定評がある。また、ポジション4(PF)と3(SF)の両方をこなす柔軟性があり、相手チームにとってミスマッチを作る存在として重宝される。
守備面ではリバウンド後のトランジション対応が早く、チームディフェンス全体を整える“つなぎ役”としても機能。試合中の判断力が高く、コーチの戦術意図を理解して体現するタイプの選手である。
ブロンコスでの期待:若手育成と勝利文化の再構築
ブロンコスは2025–26シーズンからの新体制で、クラブ全体の再建を目指している。オリバーはスコアラーとしての役割だけでなく、若手へのメンタリング、チームカルチャーの醸成にも関与すると見られている。
B3リーグは年々競争が激化しており、昇格を狙うクラブにとって「安定して勝てる外国籍選手」は欠かせない存在。オリバーの加入は、まさにその課題を埋めるピースとなる。
人物像:冷静沈着なリーダータイプ
オリバーはプレー中も感情を大きく表に出さないタイプで、試合を通じて安定したパフォーマンスを発揮する。大学時代からチームメイトやコーチからの信頼が厚く、異国のリーグでも周囲と良好な関係を築く適応力を持つ。
またSNSではファンとの交流も積極的で、家族やチームメイトを大切にする姿勢が多くの支持を集めている。
数字で見るデビン・オリバーのキャリア
- プロキャリア開始:2014年(ベルギー・リンブルフ・ユナイテッド)
- 通算プレー国:8か国(ベルギー・イスラエル・フランス・ドイツ・スロベニア・トルコ・台湾・日本)
- スロベニアリーグ優勝:2回(2017・2018)
- スロベニアリーグMVP:2回(2017・2018)
- 日本リーグ所属クラブ:仙台89ERS、横浜ビー・コルセアーズ、さいたまブロンコス
まとめ:欧州仕込みの万能戦士が日本の舞台に再上陸
デビン・オリバーは、得点力・経験・人格の三拍子が揃ったフォワードとして、さいたまブロンコスの中心選手になる可能性を秘めている。欧州で培った勝者のメンタリティ、アジア各国で磨いた適応力、そして日本バスケットへの深い理解。それらすべてを兼ね備えた彼の存在は、ブロンコスの未来にとって欠かせないピースだ。
B3リーグの頂点を目指すチームにとって、オリバーの再来日は“戦力補強”であると同時に、“カルチャーアップデート”の象徴でもある。