能代科学技術が1点差で涙…秋田工業が連覇でウインターカップ切符、湯沢翔北は女子2年連続出場

秋田県予選総括|伝統校・秋田工業が意地の連覇、能代科学技術は1点差に散る

10月24日から26日にかけて行われた「SoftBankウインターカップ2025 秋田県予選会」。男子は秋田工業高校が連覇を達成し、2年連続5度目の全国切符を手にした。一方、能代科学技術高校は準決勝でわずか1点差の惜敗。かつての“バスケ王国・秋田”を支えた名門同士の対決は、歴史に残る激戦となった。

準決勝:能代科学技術 68−69 秋田工業|魂の10分間、あと一歩届かず

準決勝屈指の好カードは、能代科学技術(以下・能代科技)が秋田工業に挑む形で幕を開けた。第3Q終了時点で44−55と10点ビハインド。しかし、伝統の粘りを見せた能代科技は第4Qに猛攻を開始。速攻とアウトサイドの連動で24得点を重ね、残り数秒で1点差まで迫るもタイムアップ。68−69というスコアが示すように、最後まで勝負は紙一重だった。

能代科技は世代交代を経て、かつての「能代工スタイル」を現代的に再構築中。速攻主体のバスケに3Pとスペーシングを取り入れた新チームは、敗れながらも県内で最も観客を沸かせたチームの一つだった。

決勝:秋田工業 91−73 秋田令和|序盤主導で圧倒、連覇で全国へ

勢いに乗る秋田工業は、決勝で初出場を狙う秋田令和高校と対戦。第1Qからリバウンドを支配し、守備からの速攻で一気に16点リード。チームの代名詞であるトランジション・バスケットが冴え渡り、ペイントアタックからのキックアウトでテンポよく得点を重ねた。
秋田令和も2年生エースを中心に反撃を試みるが、リバウンドとセカンドチャンスを奪えず91−73で敗退。秋田工業が2年連続5回目のウインターカップ出場を決めた。

秋田工業の強さ分析|守備から走る、再現性のあるバスケ

秋田工業は守備の再現性が高い。ハーフコートではマンツーマンを基調に、1stパスを遮断する圧力ディフェンスを徹底。リバウンド時にはウィングがすぐにコートを走り、「守って走る」→「パスで決める」までの流れがシンプルかつ速い。
特に今大会ではガード陣のディシジョンメイクが安定し、無駄なドリブルが激減。リズムを崩さないテンポコントロールが、能代科技や秋田令和を苦しめた。

伝統校の苦悩と再起:能代科学技術の新章

かつて全国制覇58回を誇る能代工業の後継校・能代科学技術。校名変更後の再建期を経て、若手中心の新体制が着実に形を作りつつある。
指導陣は「再び能代の名を全国へ」を掲げ、走力強化とスリーポイント重視のバスケへと舵を切った。惜しくもウインターカップ出場は逃したが、県内屈指の得点力と終盤の集中力は大きな成長の証だった。

女子決勝:湯沢翔北が盤石の勝利で2年連続出場

女子では、今夏インターハイ出場校の湯沢翔北高校が安定の強さを見せた。決勝の相手は秋田中央高校。湯沢翔北は序盤から主導権を握り、#5キャプテンのゲームメイクと#9フォワードのインサイド支配で危なげなく試合を展開。
最終スコアは89−62。終盤には控え選手も出場し、チーム全体の成熟度を感じさせた。前身・湯沢北高校時代を含めると、2年連続24回目の全国出場となる。

数字で見る秋田県予選2025

  • 男子優勝:秋田工業(2年連続5回目)
  • 男子準優勝:秋田令和
  • 男子準決勝敗退:能代科学技術/秋田北鷹
  • 女子優勝:湯沢翔北(2年連続24回目)
  • 女子準優勝:秋田中央

秋田工業の“再現性バスケ”がもたらす未来

秋田工業のスタイルは、個の力に頼らず「チーム全員で守り、全員で走る」。この哲学は全国舞台でも強豪に通じる。スコアだけでなく、ターンオーバー管理、オフェンスリバウンド率、ボールポゼッション率といった指標の安定こそが、強さの裏付けだ。
昨年のウインターカップでは2回戦で敗れたが、今年はベンチ層の厚みと経験値が加わり、「一戦必勝」から「上位進出」へとチームの目標は変化している。

総評:秋田のバスケ文化は“継承と挑戦”の二軸で進化中

秋田工業の守備バスケ、能代科技の再建、秋田令和の新風、湯沢翔北の女子連覇――。秋田県バスケット界は、伝統と革新が同時に存在する稀有な地域だ。
能代工の名を背負う若者たちが新しいスタイルを追求し、秋田工業が古き良きハードワークを貫く。「次の秋田」を象徴するこの競争構造こそ、全国に通じる新しい魅力である。

まとめ|1点差の悔しさは、次代への燃料に

68−69。1点の差が示したのは、勝敗以上の価値だった。能代科学技術は敗れても、その粘りと意地が会場を沸かせた。秋田工業はその挑戦を受け止め、勝者の責任として再び全国へ挑む。
秋田県のバスケットボールは、過去の栄光に甘えず、今を戦い抜く文化を育てている。ウインターカップ本戦の舞台で、秋田勢がどんな物語を描くのか――その先のドラマは、すでに始まっている。